決意100日前 休日③
建設業界というのは、社外の人との付き合いがすごく多い。社外の付き合いが多いと、日曜日の休みにゴルフやらバーベキュー大会やらに参加しなければならない。
私は今日せっかくの日曜日だというのに、取引のあるゼネコン主催のソフトボール大会に参加しなければならない。毎年恒例の行事で付き合いの長い会社からそれぞれ2名以上が来ており、ウチの会社ではそのゼネコンの対応担当である営業社員の中川さんと新入社員である私が行くことになった。
日曜日をごっそり奪われたのはキツかったが、中川さんとの同行であればさほど気にならなかった。お互い読書好きであったり色々な雑学を持ち合わせたり、そして苦手なタイプの人間が一致していたり。何かと共通点が多く、車で会場へ向かう道中はいろんな話で盛り上がった。
「本わりと読むって聞いたけどさ、アレ貸そうか? 最近ドラマ化された自己啓発本が原作の、タイトル何だっけ」
「あー、それ読んでみたいんですよね、友達も勧めてる人いて」
「AIによる人間の操作って既に始まってる可能性ある、みたいな話知ってますか?」
「知ってる知ってる! それニュースかなんかで読んで俺も当て嵌まっててビビったのよね」
「山本くんって、木村さん苦手でしょ」
「はい! 苦手です!」
「俺もなんだよね」
ただ一つ、全く違う部分があった。中川さんは既婚者で、私は未婚。女性関係の部分も先輩だった。
「山本くんって彼女いるの?」
「はい、います。…ただ最近全然連絡取れて無いんですよね」
「そうねー、1年目は何かと不慣れで忙しいし、そうなりがちよ。どのぐらい取れてないの?」
「えっと、あー、かれこれ2ヶ月以上ですね…」
「それ大丈夫? 付き合ってるていえるの? すぐ連絡してみたら?」
「…そうですね、そうします! 今送ります!」
「いや、えらい急だね」
彼女に申し訳ないという想いを抱えつつ、私は連絡をとった。
それから、折り返しが来る事は無かった。




