第33話 勝利への活路
「このノートは真那に見せたのか?」
零が希里弥にそう尋ねるときりやは俯きながら、
「あぁ見せたよ。まさかこのノートにこんなことが書かれているとは思わなかったからね...」
と答えた。希里弥は凍弥が下民として暮らしていることを知っている。だから真那にこのノートを読ませることで下民としての暮らしの現実を知らせるのはあまりにも残酷だと思ったのだろう。
「真那はこのノートを見た後どうしたんだ?」
零は続けざまに質問した。
「真那のことだからすぐに下民の暮らす〝名もなき村″に向かったよ。もちろんそれは私も止めようとした。だけど真那は仲間のこととなるとじっとしていられない性格だろ?だけど真那と下民との接触は禁じられている。だからその時は二乃席の不規に止められた」
やはり真那の言っていることは単なる謙遜ではなく本当のことだった。一のみならず二乃席である不規という人物にも負けているのだから。
「率直に聞くが今から俺たちがここの王様と交渉して真那と凍弥を開放してくれって頼めばしてくれる可能性はあるか?」
零は原点に戻り素朴な疑問を投げかけた。零の考えでは自分たちと最高議会との戦闘になれば少なからず被害は出る。そんなことなら真那を水害が来ると一が予言した日までアトランティス側に預け、その日が過ぎ去り次第自分たちは何もせずにこの世界から出ていく。これならアトランティスの王も提案を呑んでくれるのではないかと考えた。
「その可能性は無いと思ったほうがいい。言ったろ?ここの王が掲げている理想は日本の征服。それも異能主義国家を作ろうとしているんだ。それなのに異能を持った君たちが地上に逃げ出すんじゃ敵として厄介だ。君たちに残された選択肢は三つ。一つは諦めてこの世界の住人になる。もう一つはバレないように地上世界にでる。まぁあこれはいつ追手が来て殺されるか分からないが。そして最後の一つは無理も承知で最高議会に、この国に挑む。この三つだろう」
「いや、三つ目の選択肢は違うな。この後いかに仲間を集めてこの世界と戦うか。だ」
希里弥は驚いた。零はこの期に及んでまだ戦力を増やそうとしているのだ。そもそも希里弥は自分に零がここまで話すことすら驚いている。もし希里弥が裏切り、王に全て話してしまえば計画はすべて破綻し最悪全員殺されてしまうのに。
「仲間を集めると言ったって、まさか下民たち全員を味方につけたりするつもりかい?でも異能を使えない彼らじゃそこまで戦闘能力には期待できないしなによりこの日記によると言葉が...」
すると零はにやりと口角を上げ美咲の方を見ると、
「生憎家には巻き戻せるやつがいるだろ?」
すると希里弥はいきなりテーブルをバンッと両手で叩き起き上がると目を輝かせた。
「まさか美咲君の異能はそこまでできるのかそれなら...」
「なんだ?何かとんでもないことができるのか?できるなら教えてくれ!」
すると希里弥はいったん落ち着き椅子に座るとゆっくりと口を開いた。
「この世界の王の異能は記憶操作なんだ。これは最高議会でも私と一しか知らないはずだ。そしてこの記憶操作は最高議会でも多くの者が受けているし、貴族でも平民でも下民でもたくさんの者が受けている。つまり美咲君の巻き戻しを受け入れてくれさえすれば多くの人がこちらの味方になる可能性がある!」




