第25話 犯罪者は...
「なんかそのアトランティスっていうのどっかで聞いたことあるなぁ...」
アトランティス。それは真那がさっきからこの世界の名前として呼んでいるものであるが元はギリシャ神話における伝説上の島であり、海中に沈んだとされている。その島は高度な文明を持ち、現代をしのぐ技術すらあったと記載されることもある。でもその島は...
「伝説、神話の世界にて登場する沈んだ島、それがアトランティス。高度な文明を持ちながらも大地震による津波で沈んだとされている。きっとこの世界の名付け親はこの地下世界が異能者によって独自に作り上げた第二のアトランティスであることから名付けたんだろう。そして真那がこの世界において大事に扱われる理由は...」
零がここまで話すと真那はさすがだよとぼそっと呟いてから普段より声のトーンを一つ下げて話し出した。
「この世界には階級制度が存在する。階級は下から下民、平民、貴族、そして最高議会として身分問わず毎年王から実績や実力の認められた12人が貴族の上に属し、その上に王家が存在する」
階級制度、12人。どれも聞き覚えのあるものばかりだ。しかし真那はさっき言ったどの階級に属するのだろうと考えていると答えは真那からではなく、零から発せられた。
「真那はその中の最高議会。三乃席として活動している訳だな?」
「そこまで今俺の話とこの世界を見ただけで分かったのか、やっぱり伊達にガキのリーダーやってきた訳じゃねーんだな」
真那は一つ間を置いてから、
「そうだ。俺は最高議会三乃席、水龍真那だ」
最高議会?!それは真那の発言から考えるにこの世界で王家を除けば最高位に位置する。そんなところに簡単に入れるのか?
「真那ちゃん凄い、やっぱり真那ちゃんは喧嘩が強いから実力で入ったの?」
美咲に続き亮太や甲斐もすごい、すごいと称賛の声をあげているが当の本人は喜ぶどころかどこか少し嫌がっているようにも見えた。それも零は見抜いていた。
「いや、真那はどちらでもないだろう。きっとその異能が故に、違うか?」
真那は下を俯き赤い髪をかき上げると、
「そうだ、実力とか実績なんかじゃねぇ。あそこに居てわかる。俺はあの中じゃ最弱かもしれない。居る理由は王家に代々仕える一乃席のやつの異能、未来予知でこの世界がアトランティスと同じ結末。つまり水害によって消えるという結果が出たからだ。そしてちょうど施設から出たところを助けられた俺がアトランティス唯一の水が使える異能者だったってわけだ。当然最初はこの女がこの世界を滅ぼすんじゃないかって疑われたよ。でも幸運なことにこの世界には嘘を見抜ける奴が最高議会にいた。そいつのおかげで俺は助かったってわけ」
真那はすべて打ち明け、施設からここに来た理由もなんとなく分かった。
だがこの話にすかさず質問を投げかけた者がいた。
「凍弥は?凍弥はここにいるの?」
そう、美咲のもう一人の弟であるの凍弥は真那と同じ日に施設を出たのだ。すると凍弥もここに居るのかもしれないと思った美咲はいつもは見せない食い気味のテンションで聞いてきた。
「美咲悪い、凍弥、あいつは...」
真那の顔は会ってから今までに見せたことがないほどに曇っていた。
「俺の為に戦って今は下民として...」
刹那。美咲は立ち上がり目の前に居た真那の頬目掛けて手を振りかざしたがその手を美花見は反射的に止めた。その時美咲の目からはすーっと涙が頬伝いその感情を美花見は抱擁し、全身で受け止めた。
「悪い、全部俺が弱いのがいけねぇんだ...」
真那の表情からは今までずっと施設に残した仲間や自分の為に戦い下民となった仲間に申し訳ないと常に負い目を感じていたことが分かる。その目からは美咲同様熱く光る何かがあった。
「凍弥の事は今の真那の権限でどうにかできないのか?」
そう聞かれると真那は涙を拭い去り、首を横に振り、
「無理だ。下民っていうのはこの国において最悪の存在であってここに居させてもらうだけでも王の寛大な心に感謝すべき人間たちと定義されてる。そんな下民に手を貸すような動きを見せたものは即刻下民落ちなんだ」
「だけど聞いてくれ、方法はあるんだ。この国に危機が訪れる2月18日その日俺がこの国を救えば凍弥を平民に戻すって王は約束した。だから俺は...」
「やっぱりな」
零はやっとわかったと言ってみんなを近寄せると小声で、
「この国を滅ぼす犯人は俺たちだ」
と、言葉とは裏腹のいつも僕達を馬鹿にする時と同じ笑顔を見せながら言った。




