やりたいこと
異世界転生してみたいと思うのは誰でもあると思うけど
もちろん俺も異世界転生してみたいと思っていたし、した時はそりゃ喜んだよ?
「やったぜふぅぅううううううううう」とか言ってたよ?
1 ヶ 月 前 ま で は
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面接官「君ねぇ… 今までろくに肉体も鍛えず、魔術の研鑽もせずに一体何してたの?それでほんとに勇者になれると思ったの?レベル0って」
主人公「はぁ…すみません」
面接に落ちたのはこれで何度目だ?
この世界では防具、武器の類はとても値段が高くて、個人で買える値段じゃなかった。
商会が貴族や王族から金銭を受け、まとめて買い、優秀な人材に貸し出すというのが一般的な流れみたいだ。
勇者になるべく1ヶ月奮闘した俺だけど、ほかの勇者たちは生まれた時から鍛えられている
それでも勇者になろうとしたのには理由がある
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転生2日目 この世界を知る為、街を散策していた時のこと
平民「おぉ!!勇者様がいらっしゃったぞ!!」
8人いるらしい現最強の勇者と呼ばれる人達の、その内の一人が現れたようだ
人々が次々に集まり、街は一気に活気づく
主人公「は………」
息を飲まざるを得ない光景がそこには写っていた
観衆の中にいる勇者……の後ろに100人以上の修道女と思われる"美女軍団"がさながら兵隊のように規則正しく歩いていた。 大名行列かと思った。
後から聞いた話だが優秀な勇者にはサポーターと呼ばれる修道女や僧侶が付くようだ
この世界では経験値がパーティー全体に分配される。だから1番経験値が貰える最強の勇者達のサポーターは他の修道女よりもレベルが一回り上になるそうだ。
きっと熾烈な、もとい卑劣なヒロイン戦争の末、あの形に落ち着いたのだろう。
エルフや人の美少女にお近付きになるには、勇者しか道がなかった。
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面接が終わって外に出た俺は大の字になって天に叫んだ
主人公「クソじゃねーかああああああああああああああああああああ」 「どこ行った?俺TUEEEEのパワーどこ行った?」「俺のヒロインは?」「というかなんで俺こんな地獄みたいなところに異世界転生したの??死ぬの??」
まぁ、ほんとにもう死ぬけど
働きもせず、勇者になろうとし続けて、飯もろくに食べられない生活の中で
俺のライフは3を切っていた。 初期値が200なのでもう虫の息だ。
この世界で助けてくれる人はいなかった。世知辛い
主人公(まぁ、死んだら元に戻れるかもだしいいか…)
目を閉じてその時を待つ
…
……!?
突然、何がが心臓に向かってスッと身体の中に入ってくるのを感じた
主人公(踏まれた?いや、これは…)
刹那、感じる、とてつもない魔力の塊、体は内側から大きな"圧"に押し出され、粉々になりそうだ。
いや、実際に大量の魔力が身体から吹き出ていた。 禍々しいオーラが街全体を包んでいき、俺の身体は黒く変質し龍の皮膚のように硬くなっていく。
心の内側から野太い声が聞こえる
???「フーーーーーーッハッハッハッハー!!お前が欲しがってた力だぞ?私の!!魔王の力だ!!」
俺は溢れ出る力に身を任せながら心の中で叫んだ
主人公(ま?ま?ま??きたきたきたきたきたきたーーーーー!!!!!これでこそ異世界!!俺の時代がきたーーーーーーーーーーー!!!)
待ち望んでいた俺TUEEEEの力が身体を、街を、そして自分のレベルを変えていく。
主人公(100…200…300…365!レベル365!!HP25,812,863!!)
主人公(レベル100で上級騎士レベルってクソ面接官が言ってたよなぁ…いやぁ強いっ!!ありがとう!!魔王さん!!いや、魔王様!!)
魔王「うむ。しかして喜んでる場合でもあるまい。すぐに勇者と戦う準備をだな」 主人公(えっ?)
街を覆い尽くすオーラのその先、遠方からさらに大きなオーラを感じる……!?
オーラを感じる方角を見た時、上空には、迫り来る勇者のレベルが表示されていた
主人公(レベル532!?) (待って待って、全然勝てないじゃん?やばない?えっえっえっ??)
この間にも勇者がものすごいスピードで近付いてくるのを感じる
魔王「まぁ、普通に戦ったら勝てないであろうな。しかし私と混じった時にお主固有の能力が開花したはずだ。発動してみ「発動!!」」
なんの能力かわからないがすぐ発動させた
その瞬間、体、街、レベルを変えたオーラはまるで何もなかったかのように無くなっていた…
主人公(というかレベル0になってる…) (HP…3に戻ってる…) (時が戻った?)
時が戻ったわけではなかった。 目の前に勇者が降り立つ。
死にかけている俺に勇者が語りかける
勇者「君、ここで悪そうなやつを見なかったかい?」
どうやら自分の中に魔王が宿っているのが見えないらしい これは全力でとぼけるしかない
主人公「………はい。見てないですけど…」
勇者「そうか…」
そう言って勇者はその場を立ち去った。
HPが3しかない、死にかけの人が目の前にいながら、その場を立ち去った
…
……
しばらくして勇者の後を追うように修道女達が魔法で飛んでいくのが見えた
100人以上もいるのだから。もし1人でもヒールをかけてくれたら俺助かるじゃん…
…
……
結局俺はいつまでも死ぬことはなかった。
膨大な魔力は今も体内を循環していた
見上げた空は既に夜
街の僅かな灯りに遮られながらも 光り輝く星空の光を眺めながら
この1ヶ月、それに転生前に見てきた人生を振り返る
俺は何を見て、何がしたかったのか……
主人公(なぁ、魔王様…)
魔王「魔王でよい」
主人公(……この世界は…人が人として持つべき温かみを無くしている気がする)
魔王「……ではどうする?」
主人公(…最初から決まってますよ)
そう、異世界転生したらやることなんて最初から決まっている
主人公「俺TUEEEEして、可愛いヒロインと恋して…"異"世界を救う」
こうして、"魔王"の力で"勇者"を倒そうとする少年の旅が始まった