精霊の帰る場所 『光の木と女神』
それはサクが生まれる、前のこと。
何もない草原に七色の木が一本ありました。
長い航海の途中幾度もの嵐に合い何人ものクルーを失った船はわずか二人をのせて沈みかけながら進んでいました。
一人の男が遠くの灯りに気づくと、もう一人の男も瀕死の体にムチを打って遠くを指差しました。一人の男の名は、ザー、瀕死の男はジグと言う。
ザーとジグは何とか光る島の岸辺にたどり着きました。ザーは瀕死のジグをおいて人を求め、光の強い方へ向きました。
ザーが向かった先には小高い丘と一際目を引く一本の木がありました。七色に輝く木のそばにはこの世のものとは思えない、美しい女性がいました。
「わたくしは、命の女神。人間、この地へ来たものはそなたが初めてです。お困りのようですね」
ザーは喉もからがらに最後の人絞りで答えました。
「命の女神様、私の友人が死にかけています。助けてはもらえませんか? 必要なら私の命と交換でもかまいません。彼は無理を言って着いてきてもらいました。わたしは……」
といいかけて、ザーはその場に倒れ込みました。
倒れこんだザーに対し女神は、
「人間、面白いわね、いくつの海を渡ったらこの場所にこれると思う? 半端な神でさえもたどり着けないと言うのに」
と微笑んだあとで、七色に輝く木の回りを回り始め、魔法のように次々と優しい声で語りだしました。
【数多の塵と微なる生物達よ大気に混じり呼吸となれ。
大地から生まれる魂よ汚れた魂は、世界樹を伝って浄化され、 美しい言葉は、清らかなこころを作れ。ここに、命の女神の名の元に。フィラル・フィラリア!!!】
しばらくしてザーが目を開けると、大きな声で呼びかける親友の姿がありました。少しふらつく体をお越しながらザーはジグに問いかけました。
「なぁ、ジグよ。私はここで一人であったか? とても美しい女性と話していた気がしたのだが。そう、まるで天使のような人だった。う、うぅ」
苦しそうなザーに対し、ジグもゆっくり話返しました。
「あぁ、ザーよ、お前は確かに一人だった。女神というのは本当に見たのか?だったら私達がここへ来たことを、理由を話したいが」
二人が話し込んでいると、気のそばからその人はスッーっと現れました。
「なんだ、人間、まだいたのか」
その人のなりをした美しき者に、始めはジグもすくんでいましたが、すぐに故郷を思いだし、女神に食いつくように話しました。
「なぁ、あんた七色の木の女神ってあんただろ? 聞いてほしい話があんだ。頼む、耳を傾けてはくれないか?」
それは七色の木の小島から遠く離れた国のこと。
ザーとジグは都環国の騎士として長い間勤めていました。
しかし、都環国では神を信じない者達の軍ができ、やがて反乱を起こすようになりました。都環国の王は反乱軍に洗脳され、今まで潤いや空腹を満たしてくれていた神を裏切る決断を下しました。この国が、間違っていると立ち上がったのがザー率いる誠心軍でした。しかし国の力には敵わず、誠心軍の大半は処刑されザーの軍は壊滅的となりました。
そして、古文に乗っていた七色の木の女神の話を信じ、わずか10人の生きのこりで船を出し、はるばるとこの地へやって来たのでした。
ジグの話を聞いた女神は、不思議に思いました。
「都環国は神の直接的な援助の元成り立っていた国ではないか? なぜ今更王は裏切ったのだ」
それを聞いた、ザーは「ここからは私が話します」と言って、少しうつ向きました。
「都環国の王は、病んでおりました。神の下、禁忌であると言われたにもかかわらず、闇の魔術に手を出し、あろうことか魔王と契約を交わしたのです。魔のものは害を与える薬の作り方を王に教え、王は神を信仰するふりをして裏で神に仕える者達を実験台にしていたのです。ソウエンとうものをご存じでしょうか?
ソウエンのことは都環国の者しか知りません。何でも人に快楽を与え、神に仕える者には害をなすと、聞いております。
ソウエンを吸い出してから人々は変わりました。ソウエンとは煙草とも言われております。この煙草が流行り出してから王は煙草の魅力にとりつかれ、人々も好んで吸い、国の空気はよどみました。
そして、煙草の煙が充満したため、住めなくなった神と仕える者は王に忠告しましたが、王は神々を遮断したのです。この国には、沢山の命の恵みをもたらす契約があるため、神は新たな命を授けなくては行けませんが、産まれた命が死ぬとわかっていて授けたくはなかったのです。女神、あなたも神のお言葉と悲しみが伝わるはずです。」
女神は少し考えて答えました。
「大体は風の神から聞いている。本当に起きていたとはザーよ、お前はどうしたい?」
ザーは迷わず答えました。
「神々、あなた方についていきます。私は平等に生きたいだけなのです。今回は、王に責任があると思っております。必要とあらば、王の首を撃ち取る覚悟です」
ザーの本心にジグも驚きました。
「お、おい、まじかよ!?国を裏切るってのは聞いていたけどまさか、王の首を……ま、お前の覚悟なら仕方ないがな」
こうして人神戦争は幕を開けることとなりました。




