サクと真実の音色『そして最後のフルート』
命の女神とザーは、握りしめた手も震えながら、か細く声を揃えて言いました。
「最後のフルートは、精霊王、かぜの魂からなる……」
サクは耳を疑って、両親から飛び離れました。
「僕から話すね」
かぜは悲しく微笑んで、サクを見ました。
「まず、いっぱいありがとう、サク。名前もらったときは心臓張り裂けるくらいびっくりして嬉しかったなぁ。かぜ、フィーリル、きれいな言葉だね。お腹好かせて桜餅食べたときは、涙ぐんで、大げさで……あれ?僕、涙……時間……ないのかな……
ニネ……このまま約束果たせないのかな……
ごめんだな……グスッ……グッ……大事なこと何も言えてないのに、体が……気体化してく……ごめん……サク……だいす……」
精霊王・かぜは、すべての体を気体化し、その体は風のフルートとなりました。
「俺から話そう」
切り出したのは勇者ザーでした。
「俺は魂を全知全能の神レイギルに食われ、一体化して全てのものを理解できるようになった。サク、かぜが消えたことを無駄にしてはいけない。そこに残されたフルートの意味を知るんだ。
だが、お前には声もおともない。そこでかぜは何かを探していなかったか?……ボルアだ
一つ目の鍵、水。二つ目の鍵、雷。三つ目の鍵、炎。そして私が今握っている四つ目の鍵、風。そしてサク、お前の後ろにある七色の果実、それを食せ。それこそお前の心に秘められたボルア、声だ。かぜは初めて名前をもらったときから、サク、お前に声を与えたかったのだ」
七色の果実は天井からしずくのように垂れ下がり、ぷるぷると震えていました。サクは、しずくに四ヶ所の鍵穴を見つけるとそれぞれの色の鍵穴に心の鍵を差しました。すると七色の果実のを縛っていたくさりがはずれました。サクは封印の解けた七色の果実をひと思いに飲み込みました。
一瞬、何もない感じがしたのも束の間、サクは身体中が焼かれるように熱くなりました。
そして、その第一声は、野獣のような凶暴な割れた雄叫びでした。喉から血が出て、生鉄臭い味が口の中に広がり気持ち悪く、女神は聖水を一滴サクの口に流し込みました。すると、体は熱を下げ、口の中も血毒が浄化されました。
フーッと一息置くと彼はとても優しい声で初めて言葉を発しました。
「母さん、ありがとう」
「サク、男の子らしいカッコいい声ですね。
私の役目はここまでです。私達はサクの心で生きます。必ずミライを止めてください。」
サクは苔の生えた風のフルートにそっと口を当てると、全神経を集中させ奏でました。すると無の空間に亀裂が生まれ、懐かしい外の光が入ってきました。
光に吸い込まれていくように、サクの体は浮いて、両親から離れていきました。サクは遠のく両親に挨拶をすると亀裂から元の世界に戻っていきました。




