光炎散る空へ『ノーヴィの森の音楽隊』
一行がノーヴィの森にて休息を取っていると、一人いや、二人ほどピクニック気分のものがいました。ユーリとイロハです。イロハはお菓子をむさぼりながら、七尾にちょっかいをかけていました。
「ねねっ、七尾ちゃんっ!なぁに読んでるの?」
正直面倒だなと、思うところもありましたが、心の広ーい七尾は軽くあしらうのでした。
「ま、姫って言ってもお役所仕事だから、こうやって資料集めたりしなきゃなのよ」
「うわっ、分厚い本読んでるー頭痛くなりそ。私むこーでユーリと遊んでるわ」
七尾が熱心読んでいる本は、お城からいくつか時桜計の図書室に移動したものの一つで、ケイもよく知るタイトルだったので、イロハのちょっかいが終わったのを見て、ケイは七尾に声をかけました。
「その森の主は、青いものをこよなく愛した。の冒頭で始まる、ブリル・ブランカの愛しき藍ですよね?その本。懐かしいな、私も以前読みました」
「さすがケイ、詳しいのね」
ブリル・ブランカの話が出ると双子の千年樹、蜜柑と茶葉も、ケイと七尾のそばに駆け寄り、それを見たアレンは自分も混ざりたいとやってきました。
蜜柑と茶葉は声を揃え言います。
「ショ コノチ ウマルルチ ブランカ オトウム
アオキココロ シンナル オトウム シッテイル
ヌシラノ メロディ ココニ」
ケイはじっくり言葉を解読し、通訳しました。
「つまり、以前、私とサクとユーリといろはでバンドを組んだことがありそれをまたここでやってくれと。青い心が芯の音を生むのだと」
「ば、バンド?してたの?」
驚くアレンとまぁ!と、口を抑える七尾。
「しかし楽器などがないと……」
とくちごもるケイが目を閉じて開いた瞬きの瞬間に目の前には楽器が現れていました。ノーヴィの森の精は空気をつたい世界中の音を聴くといいます。いつしか行った精霊バンドの演奏も、深く気に入ったようで、この日のために用意していたのでしょう。
「ちょっとまって、サク!!何その頭!ブハッ」
イロハは口にほおばったお菓子を吹き出しながら、笑いをこらえました。
「ブリル・ブランカの書によると、ノーヴィの森の精はいたずら好きで、音楽好きだそうよ」
七尾も笑いをこらえているので、それに気づき恥ずかしくなったサクは一目散にギターに逃げました。その後を追うように、ケイとユーリもポジションに付き、食べかけのお菓子を一気に詰め込んだイロハも、気合を入れました。
すると、サクは胸のかぜの水晶が熱いので、メッセージかもしれないと近くにいたイロハの手を握りました。
「おっと、サクくーん?俺っちの許可なしにイロハちゃんに手出したらだめじゃない?」
「じゃなくて、サクの水晶光ってるから、もしかしたらかぜの、メッセージかもよ?ほら、ユーリも。手!」
ユーリはイロハに言われるまま手を握って、ケイの手もとり四人で陣を組みました。
サクの胸を通じ、かぜの声が聞こえてきます。
「みんな、ノーヴィの森の精はゆかいな子ばっかりなんだ。きっと明るい曲が好きだと思う。あと、うまく行けばワタバチ島に行けるから、頑張って!甘酸っぱい青いメロディでお願いね!」
4人は位置につき、目を合わせ、呼吸を整えました。静寂な森ににぎやかなメロディが響きました。
音は青く青春のメロディを奏で森の青さと一体化して、時も空気も光も蒼も青もみんな素直になりました。そうやって奏でる先に。光は昇りました。
演奏が終わっても光は消えませんでした。
「これは……真っ直ぐに昇ってる……」
「関心してる場合じゃないわ、ユーリ、イロハに続いて次は貴方が試される番よ」
七尾がユーリの背を押すと、ユーリもフッとわきを締め気合を入れました。
「行きましょう、サンディッシュ様。イロハちゃん、俺っちこんな弱いけど。まだ、イロハちゃんの事守れないけど、がむしゃらにでも、はいつくばってでも、雷のフルート取ってくるから!大好き!!!!」
愛の言葉を放ったあと、ユーリは光の中に消えていきました。あとを追おうとした、サクの方を七尾が止めました。
「あの光は人一人分なの。サク。あなたの番も必ず来るわ。今回はユーリを信じて待ちましょう。」
光の柱ノーヴィの森から遠く離れた時桜計からも見えており、みんなの帰りを待つニネも、「きっとサクおにいちゃんたちが、がんばってるのね」と、光にお祈りしていました。
光の柱を昇るユーリは、自分より先にフルートを手にできたイロハが少しうらやましく、自分にも同じことができるのか不安で一杯でした。でも、心にはいつもいつもイロハの笑顔があって、こんなときでも頭の中はイロハで一杯なのでした。




