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草剣物語〜精霊と少年の旅路〜  作者: 璃月 曽良
第三章
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精霊自然VS人間科学  『勾玉と心臓』

 その女性、七尾の表情は絶望から凍りついた怒りへとかわり、七尾は右手でミライの左頬を思っきり叩きました。ミライは用意周到にセッティングして七尾にはバレないように城を出たつもりでした。


「ミライ、貴方が何をしたいのかもわかりません。ですが、神聖な森をこんなにまで痛めつけて、何がしたいのですか?」  


 七尾はカクバン丘の学校にいた日々がとても楽しかったので、かぜ、サク、ユーリ、イロハ、ケイが悲しみに包まれていることが何より辛かったのです。


 七尾が来ると、それまで重かったサクの左手は不思議と軽くなりサクもユーリとケイが戦っている中に飛び込んでいきました。ミライはビクビクしながら口を開きました。


「な……七尾様お聞きください。真実を知る八咫鏡(やたのかがみ)、ソウエンを浄化出来る草薙の剣(くさなぎのつるぎ)、永遠の命を得られる八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、これが揃えば貴女を守れる強さになる。私はこの世界において人間という非力な生き物です。命の女神の死後、世界中で亜人と化したものが多い中、私はその恩恵を受けませんでした。ならば神の残した宝に頼るしかないのです。

 私は三つの秘宝の場所を突き止めました。八咫鏡はフィーリル王の寝室にあります。草薙の剣はサクの左手にそして八尺瓊勾玉は……」


 ミライはかぜの胸ぐらをつかみ、あばれるかぜを知り目に、右手を思いっきりかぜの左の心臓めがけて突きました。そして、心臓として命を吹き込んでいた八尺瓊勾玉を奪い取りました。


「きゃぁ! なんて酷いことを」


 力がなくなり生命力が消えてゆくかぜを七尾は優しく受け止めました。かぜが消えていきそうなのを感じた七尾は、


「だめだわ、私じゃどうにも出来ない。サク、そうよサクを呼ばなきゃ」


 七尾は力尽きてゆくかぜを抱えて戦闘中のサクのところまで行きました。七尾に気づいたサクは戦うのを止め、七尾のもとに向かいました。


「どうしようサク、かぜが心臓取られて、死んじゃいそうなの……ミライが、心臓になってた勾玉を奪ったの。ミライから取り返さなきゃ……えっ居ない、ミライが居ないわ!」


 七尾が目を離すとミライは姿を消していました。と同時に、ロボットの源動力となっていたリナチノが意識を失いロボットは土くずのように粉々になりました。


 ケイが崩れるロボットからリナチノを受け止め、呼吸があるのを確認すると、地面に寝かせました。


「かぜ、しっかりしてかぜ!」


かぜの体は砂のようにゆっくりと消えてゆくと同時に、一枚の四葉に姿を変えました。泣きじゃくる七尾の手から四葉となった風を預かったサクは、急いで森の奥へと行きました。


「そっか、おじいちゃんなら! さすが俺様の親友だぜ」


ユーリ達もおじいちゃんのもとへいきました。


「戦の匂いは止んだようじゃな」

 

森の奥ではイロハ達が心配そうにみんなの帰りを待っていました。サクはおじいちゃんのもとへくると、四葉となったかぜを見せました。何とか助かって欲しい。みんなの願いは一つでした。


「これは……何とも小さきものとなったものよ。私には命を与えることは出来ない。枯れないようにこの四葉を保存することはできる。わしは動けぬ、皆で協力してかぜの心臓を取り返してほしい」


「大樹様、私は桜生国の姫、七尾ともうします。ミライは何処に隠れたのかもわかりません。私の落ち度です。一番身近にいながらミライの悪意に気づいていませんでした」


「姫よ、皆も聞いてほしい。ユグドラシルを目指しなさい。そこにレイギルと呼ばれる、全知全能の神がおる。合うことができれば命を吹き込む事も出来るはずじゃ。風はもともとユグドラシルの葉に八尺瓊勾玉が命を吹き込んだ生き物。ゆけばなにかわかるやもしれぬ」


「大樹様、ミライは鏡と勾玉を手にしました。残る一つ、草薙の剣も絶対に奪いに来るはずです。私はミライが、許せません。絶対に取り返します。私はユグドラシルを目指します」


七尾の覚悟に、


「俺様も行くぜ! 風っち可哀そうだからな! みんなもそうだよな!」


ユーリ同様、みんな風を助けたい一心でした。


何も知らないニネは


「かぜおにいちゃんどこ? ニネ、かぜおにいちゃんとあそびたい」


健気な心を抱きしめるのは七尾でした。


「ニネちゃん、ほんの少しだけ我慢しててね。かぜお兄ちゃん迷子だからお姉ちゃんたち探しに行ってくるね」


 七尾の言葉ににニネだけではなく周りも安心するのでした。


「サクよコレを主に託す」


 おじいちゃんから貰ったものは四葉となったかぜを水晶で丸く固めたものでした。


「サクの騎士よ、実感はないかもしれぬが確かに風の命はその四葉に眠っておる。道中、勾玉を取り返すことがあれば必ずその水晶が反応するじゃろう。闇雲に旅をしても途方も無いじゃろうから、四属性のフルートを探すのじゃ。フルートを奏でた先にユグドラシルの入り口があるという。わしはここから皆の健闘を祈っておる。ニネと母親のことは安心するのじゃ、ワシがついておる」


「カゼサマ イナイ ワレワレ ドウスレバ」


 フィーラ、サンディッシュ、ウォーズリー、ファイヤードはかぜという主を失い困っていました。


「四属性よ、主らも風に言われた通り、ユーリ、イロハ、ケイ、サクについていなさい。神器、フルートを使うときにも主らの力が必要となるだろう」


「ギョイッ」 


 こうして、四葉となった風を助け出すため、サク、七尾、ユーリ、イロハ、ケイは、世界を巡ることとなります。


 サクとイロハは孤児院に、七尾はフィーリル王に、ユーリは家族に、ケイは本屋の店主に、


 それぞれ挨拶を済ませて、荷物をまとめると、ナナシズカ前の大きな赤い鳥居に集まり、それぞれ片手を出して陣を組みました。


「サクの代わりにリーダーを務めさせていただきます、ユーリ様から一言……」


 誰がリーダー制なんか決めたよ……と、皆が、内心突っ込む中、


「この旅が終わったら、イロハちゃんと結婚しまーす! エイエイオー!!」


おいおいおいおい


 馬鹿な発言に少し気持ちが楽になった一行は、桜生国をあとに旅にでるのでした。

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