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草剣物語〜精霊と少年の旅路〜  作者: 璃月 曽良
第二章
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魂と肉体の器  『ひーらりあ』

 大きな鳥居を抜け、一行は国へと戻ってきました。ウォーズリーはニネのお母さんの元へ向かうため一人抜けました。


「私の娘になってだもんね、いいね!」


 かぜの言葉にみんな微笑みました。皆が家に帰ろうとすると、さっき光の速さでニネのお母さんの元へ向かったはずのウォーズリーがトボトボと後ろを歩いていました。


「どうしたの? ウォーズリー??」

かぜの言葉に


「ムスメ、カエッテキタ、ワタクシ、ヨウズミ」


「え? どうゆうこと? ……!?」


 かぜは一目散にニネのお母さんのところへ向い、あまりの速さに置いていかれた一行は急いで後を追いました。


~ニネ宅~


「ニネ? いま大丈夫? お母さ怪我しちゃっていつもの、えーと、ひーらりあ?? お願いできる?」


少女は椅子に座ったまま漫画本を読んでいて聞いていませんでした。ニネの母はまるで独り言のように話していました。


「ニネ、ニネがいない間にね、お姉ちゃんができたわよ! ウォーズリーさんって言って精霊さんよ! 今度会いに行きましょうね……」


 独り言とは時に残酷。やっと帰ってきた娘はまるで別人でした。ガタガタガタっと、突然窓が小刻みに揺れたかと思うと、優しくノックする音が聞こえました。


「はーい、ウォーズリーさん? 今話していたところでしたって……風さん?」


「良かった、元気そう」


 かぜはふぅーっと一息入れると直ぐにニネの方を見て、見た目はニネそのものでしたが、どこか違う素振りでした。

 ゲラゲラわらいながら本を読んで、偉そうにお菓子を食べて、何より人相が違いすぎる。それにニネはあの日……風は思うところが色々ありました。あんな傷だらけでなんか変。


じーっと、見つめるかぜ。必死で目をそらす少女。


 この少女に染み付いてる匂いが最もブチのめしたい、ミライの匂いというのが何より気に入りませんでした。


「ミライ……」


 試しに名前を出してみると、少女はガタガタガタっと椅子から倒れ落ちました。そして逃げようとしたところをあとから追いかけてきた一行にふさがれるのでした。


 かぜは冷徹に、ただただ煮えたぎる思いを抑え、両手から出した蔦のロープを逃げようとする少女に巻きつけてとらえました。


「んで、ミライはどこだ?ぶっ殺してやる」


「ひっひぃっ、リナチノ知らない!!」


「……くそっ! もうやだっ何でニネばっか苦しいばっか

うっ、ぐずんっ、もういいよ苦しいはいいよ。ねぇ? こんな小さい子もうイジメないでよ? ね? 僕の一生分の涙くれてやるから……」


 その時、かぜの小袋が光りました。中には十字架と一緒にニネの灰が入っていたはずなのにありませんでした。


「まさかこれって……!? サク! サク来てくれ!」


 ガーネット石で作られた十字架は命を奪いもするし与えもするという。一説によると奪うのではなく、一旦預かるのではないかとも言われています。さらに草剣を、持つものが十字架を貫くと、十字架内の魂を別の器に移すこともあると。


 かぜは文献を思い出し、すぐに少女をベットにくくりつけた。そして少女の首から十字架を、ぶら下げた。


「風様……これは……娘はやはり悪魔に乗っ取られているのでしょうか……」


「お母さんには刺激的だから少しウォーズリーのとこで待ってて」

そうゆうとウォーズリーはニネの母を外へと案内した。


「行くよ? サク、僕が合図したら一気に草剣で十字架ごとあの子を貫いて!」


そう言うと風は体を気体化し、草剣に溶込み一体化した


「今だ!」


 サクは合図と共に一気に少女の胸めがけて勢いよく駆けました。剣は十字架を貫通し、十字架は砂のようにサラサラと体にとけていきました。 

 かぜは剣と分離し、子供の姿に戻ると、そっと胸の音を確かめました。小さいながらもコトン、コトンと音を鳴らしています。


「よかった……よかった……ほんとに。おつかれさま、ニネ」


そしてかぜはニネの体に寄り添って静かに目を閉じた。


 一方城の方ではリナチノが、目を覚ましていた。ミライに隠れて部屋に帰る途中、みつかり…抵抗も虚しく、腕と脇腹を殴られました。






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