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第四話 この世界が生まれた理由。


もし、この世界が生まれたのがあの世界の真希と優雅の想いだったとしたならば...私はこの世界で、どう生きたらいいのだろうか。


 ̄ ̄ ̄ーーー_____

 ̄ ̄ ̄ーーー_____


時間は過ぎて真希は小学校を卒業し、優雅と同じ中学校に入学した。はじまりの世界パラレルワールドでは1人で通い、“あの日”を変えた世界では優雅と一緒に通っていた通学路。この世界でも去年1年間、小学校と中学校とで近くにあるため優雅と途中まで一緒に登校して別々の学校に行くのがほんの少しだけ寂しかった、なんて思ったのは絶対に優雅には内緒だ。


「今日から真希も中学生ねー」


いつものように朝食の準備をしながら真希の母親である満姫は嬉しそうに言った。

優雅はもうお母さんの作った朝食に、牛乳片手にパンにかじりついているし、真希は着なれないはずなのに妙に着なれている中学校の制服を着てリビングに下りてきたところだった。はじまりの世界パラレルワールドとはやはり少し違うこの世界に、真希はとても違和感を感じる時がある。真希おねえさんの記憶の方が強くなっているせいだろうか。


「別に、初めてじゃないでしょ...?」


この状況に真希は誰にも聞こえないように嫌そうに毒ついた。あの世界でのお母さん達も何かまだ隠しているみたいで、もしかしたら真希おねえさんよりも強い霊力ちからを持っていたのではないかと推測できると思う。

もう何もかもが疑わしくて、どうしていいか分からない。


「...いただきます」


真希もそんなことを考えつつも、それを表には出さずに自分の席についていつものようにお母さんの作った朝食を食べる。今日はパンとベーコンエッグ、それにサラダだ。お母さんが冷蔵庫から牛乳のパックを出すとコップについで私に渡してくれた。

真希も優雅みたいにパンにかじりついた。何かと隠し味のあるお母さんの作る料理はとても美味しい...だけど、やっぱりどこか素直に受け止められない自分がいる。


「おい真希!俺が言ったこと聞いてんのかよ!?」


いきなり優雅の大声に現実に戻されると、真希はただ優雅を見詰め返した。いったい目の前の優雅は何を言っていたのだろうか。というか、この世界の優雅なんて…


「真希!?」


「何?」


はじまりの世界(パラレルワールド)の優雅と比べつつ、この世界の優雅に何かと聞けば目の前の優雅は何故かとてつもなく不機嫌そうな顔をしているし、今にも怒り出しそうだ。

いや、もう怒ってる。本当に何なんだろう。


「…何でもない」


少しの時間、間があったと思うと優雅は黙ってしまった。こんな優雅を見るのは久しぶりか…それとも初めてだろうか。記憶が混ざっていて、よく分からない。

何度か聞き直したが、優雅は答えてくれるどころか目も合わせてもくれなかった。ほんの少しだけ、さみしいとか思う。






朝食を終えて真希と優雅は、合わせた訳でもないのに同じタイミングで鞄を持ちリビングを出た。そして優雅が先にドアを開けて玄関を出た所で言った。


「中学の場所なんて分かるだろ?お前1人で行けよ」


先ほどの事もあり、真希も靴を履きながら優雅を見上げて嫌そうな顔をする。

この世界で、初めて優雅と一緒に中学の制服を着て登校する…“真希おねえさん”の記憶にもある同じ通学路の光景は、優雅がいるかいないかだけでまったく違う色をみせていた。


「別に優雅と一緒に学校行くなんて言ってない!」


靴を履き終わると真希はそう言いながら優雅を押し退けて玄関を出た。何でこの世界の優雅はあの世界の優雅と違って優しくないのだろうか。

それに今の優雅は何故か勝手にすごく怒ってるし、さっき話を聞いていなかった自分が悪いのも分かってるつもりなのに…。


「何で、うまくいかないんだろ…」


そのまま早歩きで中学校の通学路を行くと、後ろからすぐ優雅に呼び止められた。でも今の優雅と話したくなくて無視をしたのに、いきなり腕をつかまれると私のスクール鞄を優雅は渡してきた。


「おい、鞄!忘れてんじゃねーよ」


それだけ言って優雅は先に行ってしまった。その場に立ち止まって優雅を目で追えば、少し先を歩いていた男友達と話している。

妙に、真希の中で真希おねえさんの世界の記憶と情景が重なる...はじまりの世界パラレルワールドの記憶に呑み込まれていく。


ーーーただ、お前に“逢いたい”

ーーー「私は、優雅に逢いたい!!!」


ああ、また“はじまりの世界パラレルワールド”の真希おねえさんと優雅の声がする。

離れ離れの世界で一緒にいたいという声がこだまする…だが、記憶に呑み込まれている真希を現実に戻したのはこの世界の優雅。目の前で起こる光景だった。


「ねえ、優雅君。今日の放課後はわたしとデートしてくれるのよね」


気が付けば、優雅の腕に抱きついている女の子がいる。優雅と親しそうに話す、リボンの色が優雅と同じ1つ歳上の先輩。

私の知らない、“先輩の優雅”。


「…う、そ…」


その光景を認めた瞬間、何とも言えない喪失感、そして何処かどす黒くて醜い感情とが荒れ狂うように私の心の中を駆け巡っていた。

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