第三話 優雅先輩のクラスのレイナ先輩
この平行世界で初めて出会ったはじまりの世界での親友、レイナは優雅先輩と同じクラスにいた。
これはこれで、何だか変なかんじだと思う。
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とある月曜日、真希はまだベッドの横の床で寝ていた。何故こんなところで寝ているのか、それは全部あの優雅先輩を連れて行こうとするあのマントの男と、その男の召喚した死神達が悪い。夜中からずっと明け方までそいつらと戦っていたのだから。
「学校なんか、行きたくない…」
ちゃんと言葉になったのかは怪しいが、戦闘で疲れている真希の切なる願いだった。
真希は昼休みの時間帯に登校した。遅刻して担任の先生に職員室で怒られるのは何度目になっただろうか。これはけっして、自分のせいではない。あのフード付きのマントの奴が悪い。学校が休みの夜中に現れるあいつがふざけているのだ。
「いいか姫野、無断遅刻が続くようなら家に電話するからな」
そう言う担任の言葉に適当な返事をして、真希は職員室を出た。
本当に、あのマントの奴のせいでいい迷惑をさせられている。この平行世界の優雅先輩を狙って、それに応戦して…あげくの果てに月曜日だけ学校に遅刻するというパターンが出来上がってしまった。
「私のせいじゃないのに…」
自分の教室に向かいながら廊下を歩く真希は嫌そうな顔をして呟いた。すると、妙に目を引かれた女子生徒がいた…女子の友達と話しながら真希の横をすれ違った彼女は真希の記憶でよく知っている。
同じクラスで親友だった天宮レイナだった。
「うそ、本物始めて見た…」
つい心の声が音になったが、すれ違った後のため聞こえてはいないようだ。真希はリボンの色を確認して、彼女も優雅先輩と同じ学年であることに驚いた。
確かに自分と同学年であるなら、今まで見掛けなかった事にも納得がいくが…本当にどうしてこの平行世界は自分だけ年下なのだろうか。そう言えば、はじまりの世界でレイナの彼氏であり優雅の友達だったシンヤも見たことがない。
(レイナがいたんだから、シンヤもいたりするのかな…?)
なんとなく、レイナがどのクラスなのか気になった真希は“レイナ先輩”を目だけじゃなく物理的にも追ってみることにした。いつかの、優雅先輩以来の尾行だ。今度はきっとバレないように…と祈る。
距離をあけて着いていくと、やっぱり学年の違う廊下はよく先輩ににらまれる気がする。真希はそれを気にせずにレイナ先輩が教室に入って行くところまで見た。
「2年2組…」
間違えることはない。優雅先輩のクラスだ。それを確認して真希は来た道を戻ろうと振り返った…その瞬間、目の前に広がった壁があり、そのまま進む気だったため止まること無くぶつかった。
地味に痛い。鼻をぶつけた真希は慌てて後ろに下がって謝ると、何だよと言われた。男子の先輩だ。それに、はじまりの世界でも見たことがないのではないだろうか…誰かも分からない。
「あの、ごめんなさい…」
真希はそう言って早くこの場から離れようと先輩の横を通り抜けようとしたが、“待てよ”と腕を捕まれてそれ以上進めない。地味に捕まれた腕が痛い。どうやってこの先輩から逃げようか…いつの間にか男子の先輩が数人増えていた。
「何やってんだよ、1年」
「お前そんな怖い顔すんなよ、可愛い女の子が怖がってっるだろ?」
「何、かわいいじゃん。その1年の子」
どうやら囲まれているらしい。背の高い先輩達は周りに立たれただけで妙な威圧感がある。でも、夜な夜な優雅先輩を守るために霊力を使ってあいつらと戦っている真希にとっては、ただの人間なんて敵になんてならない。そう思っても、高校で霊力を使って先輩達を攻撃するわけにはいかないと思う。
本当に、この状況をどうやって切り抜けよう…真希は苦笑いしながら、考えていた。
「ちょっと男子!やめなよ、真希ちゃん怖がってるじゃない」
真希を助けに入るこの声、優雅先輩の彼女である千智だ。変なところを見られたと思いながらも、真希は千智の方を見た。先輩達も何だよという感じで見ている。
何故か彼女の後ろには優雅先輩の姿もある…ここは2年の教室前の廊下なのだから、2人がいても何もおかしくはない。それにここは優雅先輩のクラスの前なのだから。
「優雅も見てないで助けてあげなよ、妹ちゃんでしょ」
ーーー妹ちゃんでしょ…?
ふざけないで、私は優雅先輩の“妹”じゃない!
真希がそう思った瞬間、この世界で最も強い霊力が一瞬で、ドス黒い感情と共に跳ね上がる。気が付くと目の前には知らない世界が広がっていた。
この現象が何なのか、まるでファンタジー世界のお姫様の住むお城に迷い込んだような…とても綺麗な、アスターの花が咲き誇る庭が広がっていた。すると目の前にいたらしい男性が驚いた顔をして近づいて来る。妙に“懐かしい”ような気がした。
「・・・・・・」
目の前の男性が何か言っている。だけどその声は真希には聞こえない。
するとまた一瞬で目の前の景色は先程までの状況に戻っていた。夜の戦いよりも、今の現象の方が理解できない。
「おい、真希!」
何故か目の前には優雅先輩の顔が、すごく近くにあった。何故こんなにも近くに優雅先輩がいて、どうして、まるで私を心配するように顔を覗き込まれているのだろうか…優雅先輩の左手は私の肩の上にあって、右手は私の頬に当てられている。
真希はいつもとは“違う”優雅先輩との距離に、いろいろな周りの好奇のような視線にも耐えきれずに彼の手を振り払ってしまった。
「真、希…?」
何なんだろう…優雅先輩のそんな顔を私は知らない。“驚いた”とは少し違う、ちょっと“かなしい”みたいな感情がまざったような、そんな優雅先輩なんて私は知らない!
「っ…ごめんなさい!」
真希はそれだけ言うと、逃げるよに廊下を走って、近くにあった階段を駆け下りた。




