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アクアツアーの怪物  作者: とーま06
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裏野ドリームランド

早速、私と先輩は裏野ドリームランドへ調査に出向いた。


いつものことながら、室長は「大事な仕事があるから」とヘラヘラしながら、留守番することを選んだ。

相変わらず面倒事から逃げる室長は頼りにならないなと、溜息が出る。


“謎の生き物”の目撃情報は夕方から早朝までの間、平たく言えば夜が多かったから、調査は夜に行われることとなった。

通常なら夜の廃遊園地なんて、それも様々な噂がある場所なんて「怖い」と感じるのだろう。

だが、今まで数多くの“超常現象”に遭遇し、そのどれもが偽りであることを見てきた私にとっては、恐怖の欠片すらなかった。


私たちはまず、現在の裏野ドリームランドのオーナーにお借りした地図をもとに、園内全体を一通り見て回った。


どう見ても何の変哲もないただの廃遊園地にしか見えない。

園内に人の気配は微塵も感じられず、静寂の中で虫とねずみの動く音が時折響く程度であった。


ここに本当に数々の噂があるのか信じられなかった。

きっとどうせ肝試しに来た大学生共が、ねずみの動く音や老朽化ゆえに軋む柱の音、割れたガラスに映った自分の顔なんかに驚いて、幽霊がいるだのなんだのと騒いでいるだけだろう。


怖いと思うから、何でも怖く見えてくるのだ。


白けた顔の私の隣にいる先輩の額からは、汗がすうっと流れた。

視線を下に落とすと、先輩の懐中電灯を握る手が震えている。

そのせいで、地面に写った私達の影が不気味にゆらゆらと揺らいでいる。


どうやら先輩は怯えているようだった。

でも、こうしたことは今回がはじめてじゃなかった。

こういう仕事をしているのに、先輩はホラーやオカルトが大の苦手だった。


「先輩、手震えてますよ。怖いんですか?」


声に嘲笑を含ませながら、先輩をからかう。


「は?全然、怖くねーよ。

 てか、静かにしろよ。今も殺人犯が俺達を付け狙ってるかもしれないんだぞ」


なんて滑稽なんだ。

思わず吹き出してしまった。


「大丈夫ですかぁ?

あんなのただの悪戯ですよ」


仮に誰かが事件に巻き込まれているとしても、それは単なる殺人事件で超常現象なんてものはない。


怯える先輩が面白くて、提案してみた。


「先輩が平気ならですけど、ここからは別々に探索しません?

 その方が効率いいですし」


「いやいや、神谷、一人にしちゃ危ないだろ。

 ずっと二人で行動しよう」


それっぽいことを言っているが、声の震えを隠しきれていない。


「何言ってるんですか?

 私、もうコエタイに入って半年になりますよ。

“私は”大丈夫ですから、別々で探索しましょ」


結局、私の押しの強さに負けて、先輩は渋々別行動に承諾した。

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