裏野ドリームランド
早速、私と先輩は裏野ドリームランドへ調査に出向いた。
いつものことながら、室長は「大事な仕事があるから」とヘラヘラしながら、留守番することを選んだ。
相変わらず面倒事から逃げる室長は頼りにならないなと、溜息が出る。
“謎の生き物”の目撃情報は夕方から早朝までの間、平たく言えば夜が多かったから、調査は夜に行われることとなった。
通常なら夜の廃遊園地なんて、それも様々な噂がある場所なんて「怖い」と感じるのだろう。
だが、今まで数多くの“超常現象”に遭遇し、そのどれもが偽りであることを見てきた私にとっては、恐怖の欠片すらなかった。
私たちはまず、現在の裏野ドリームランドのオーナーにお借りした地図をもとに、園内全体を一通り見て回った。
どう見ても何の変哲もないただの廃遊園地にしか見えない。
園内に人の気配は微塵も感じられず、静寂の中で虫とねずみの動く音が時折響く程度であった。
ここに本当に数々の噂があるのか信じられなかった。
きっとどうせ肝試しに来た大学生共が、ねずみの動く音や老朽化ゆえに軋む柱の音、割れたガラスに映った自分の顔なんかに驚いて、幽霊がいるだのなんだのと騒いでいるだけだろう。
怖いと思うから、何でも怖く見えてくるのだ。
白けた顔の私の隣にいる先輩の額からは、汗がすうっと流れた。
視線を下に落とすと、先輩の懐中電灯を握る手が震えている。
そのせいで、地面に写った私達の影が不気味にゆらゆらと揺らいでいる。
どうやら先輩は怯えているようだった。
でも、こうしたことは今回がはじめてじゃなかった。
こういう仕事をしているのに、先輩はホラーやオカルトが大の苦手だった。
「先輩、手震えてますよ。怖いんですか?」
声に嘲笑を含ませながら、先輩をからかう。
「は?全然、怖くねーよ。
てか、静かにしろよ。今も殺人犯が俺達を付け狙ってるかもしれないんだぞ」
なんて滑稽なんだ。
思わず吹き出してしまった。
「大丈夫ですかぁ?
あんなのただの悪戯ですよ」
仮に誰かが事件に巻き込まれているとしても、それは単なる殺人事件で超常現象なんてものはない。
怯える先輩が面白くて、提案してみた。
「先輩が平気ならですけど、ここからは別々に探索しません?
その方が効率いいですし」
「いやいや、神谷、一人にしちゃ危ないだろ。
ずっと二人で行動しよう」
それっぽいことを言っているが、声の震えを隠しきれていない。
「何言ってるんですか?
私、もうコエタイに入って半年になりますよ。
“私は”大丈夫ですから、別々で探索しましょ」
結局、私の押しの強さに負けて、先輩は渋々別行動に承諾した。