超常現象対策室
幽霊やポルターガイスト、未確認生物や呪いなど現在の科学では証明できないものを人々は超常現象と呼ぶ。
だが、そのほとんどは単なる錯覚や病気であったり、集団ヒステリーであったり、悪戯や嫌がらせに過ぎない。
それでも、人々は「呪い殺された」だの「幽霊の仕業」だのと口走るのだ。
殊更、殺人や自殺、奇異な事故が起きた時、人は“超常現象”のせいにしたがるのである。
そのため、発足されたのが超常現象対策室、通称コエタイであった。
コエタイは、警察組織に付随した民間組織の一つであり、超常現象の関係した事件の解決を超常現象解明の面から手助けする機関である。
そして、私、神谷凛子は超常現象対策室の臨時職員であった。
元々オカルトやら超常現象やらなんてものには懐疑的だった私だが、昔世話になった先輩に頼み込まれて、この超常現象対策室の仕事を手伝うこととなったのだった。
超常現象対策室といっても、実際に幽霊を証明するわけでも呪いによる殺人を立証するためでもない。
そのほとんどの仕事が、幽霊と見間違えられた真犯人を見つけ出したり、呪いでなくヒーターの故障による業務上過失致死を証明したり、肝試しのために不法侵入した馬鹿大学生を捕まえたりするものであった。
だから、私のオカルトへの懐疑心と人への不信感は膨れ上がる一方であった。
そうしながらも、コエタイの仕事に大分慣れてきた頃、裏野ドリームランドでの仕事の依頼が来た。
裏野ドリームランドと言えば、数々の曰く付きの噂が絶えないことで有名な廃遊園地であった。
その中でも今回の依頼に関わるのは、アクアツアーの不気味な生き物に纏わる噂だった。
遊園地が営業をしていた頃から「謎の生き物の影を見た」なんて話が何度もあった。
そして、廃園となった今でも見えるらしい。
今回の依頼はアクアツアーの“謎の生き物”の正体解明であった。
なんでもその“謎の生き物“の目撃情報があるアクアツアーの付近にある公衆電話から、警察に通報があったという。
「奴に、奴に殺される!助けてくれ!
来るな、おい。
やめてくれぇー」
電話の主はその声だけを残して、現場から消えたらしい。
公衆電話を使っていたため誰が通報してきたかも特定することができず、付近一帯を捜索したが怪しい人物を見つけることはできなかった。
そこで、超常現象対策室に声がかかったというわけだ。
どうせタチの悪い悪戯だろうが、念のため調査してほしいという依頼だった。