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第94話 天罪

 

 

 


「おや、フランツじゃないか。行方不明と聞いていたが……なんだ、元気そうだな?」


「久しぶりですね。もっとビックリするかと思いましたが相変わらずゆったりとした対応ですね」



私の知人がまだ居ればよいのですが、と連れられてきた商会だが。


問題なく、知人はまだ居たようである。というかここ商会か?


随分小さいところだな……



ちなみに目の前に座ってるこの商会の主らしき人物は、


小さな丸メガネをかけた、よく居る不養生な小太りの、


子煩悩そうな笑みを浮かべている、七福神の大黒様みたいな感じの人。


当然のように、頭は側面以外ほとんどハゲあがってる。


なんとなくだが、メガネをはずすと豹変しそうな雰囲気である、と俺は独自の感覚を用いて読んだ。


そう、これは丁度温厚モードのハート様っぽい雰囲気なんだよ。


この男もたぶんハート様のように、普段は『困ったことがあったら何でも言うといい』とか夢見る貧相な童貞少年に甘い蜜を目の前に差し出すようなことをほざきつつ、


ほんのわずかでも隙を見せて厨二臭さをさらけだすと、メガネを外して獣の目つきで『いてえよ~!! いてえよ~!!』とか言い出して突っ込みに来るんだ。


おっさんなんて皆そうさ。


古本屋の親父とかも、最初はHな本とか読みながらニコニコしてるけど、


ちょっと俺が立ち読みとかすると、すぐにハタキで目の前をパタパタやってくるし、


更に読んでると、ハタキの先でつっついてくるんだ。


だが、何度つつかれても俺はひでぶにはならんから!



《ひで……ぶー?》


《そう、ひでぶとは俺の前世の日本で十年連続流行語大賞に選ばれた奇跡の言葉ですね!》


《おお~!》


《非デブとも書きまして、これを唱えるだけで痩せる事を夢見る永遠のダイエット少女に、深夜番組の怪しいダイエット器具を使用するよりも効果があったりなかったり》


《お~》


《あのハート様ですら、ひでぶを叫びながら一瞬にして身体中の体液を垂れ流して激痩せしたという伝説にすらなっていますのよ!?》


《すごいすごい~!!》


《というわけでこのヒデブが今日からお嬢様の名前となります》


《え……》


《さあ、ひでぶお嬢様、なんなりとこの下僕にご命令を》


《ひでぶ、やっ!》


《ひでぶお嬢様……なんという甘美な調べ。これほど上品な名前は天上天下どこにも見当たりませんぞ?》


《や~~~~~~~~!!》


《ああ、ひでぶお嬢様……うっとり……》


《いや~~~~~~~~!》


《別バージョンに『あべしっ』とか『たわばっ』とかもございますが?》


《全部やっ!!!》





「どれ……お前が来たということは……やはり奥へと案内せねばな……」


「ああ、今こそ、あれを作動させる時だ……」



このおっさんズ……結局あんたらも厨二病だったのか……


俺も一応おっさんたちの後ろについていき、


そして商館の一番奥の、と言っても数部屋しかない狭い館なんだが、怪しい扉のついた薄暗い部屋の中へと入っていく。



部屋の中は期待通り、いわゆるネットで流れてた写真によくあったようなPCオタクの部屋のような……


ハン○ーハンターのミルキの部屋とかこんな感じだったっけとかいう……


もっともここにあるのはコンピューターじゃなくて魔道具だが。



「さて、いくぞ! 魔道情報処理装置、『零式天罪』 始動!」





 



うん……最初のあたりのノリだね。


反省はしない。

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