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第93話 半端

 

 

 


「おや、何か……随分と転移されたのが早いようですが……」


「む、そうか? 装置の調子の問題ではないだろうか」


「そうですか……」


(あっぶねー、タイムラグは考えてたけど、ちょっと早かったみたいだな。今後はもうちょい余裕をとってから転移を頼むとしよう……)





「さて、すまないが私はあまり大きな商談には慣れていない。よって後の流れは貴方任せになるのだが」


「ええ、そこは承知しております。まずは顔なじみの信用できる商会にでも行って、掘り出し物の情報でも入手してからと考えています」


「なるほど、直接買いに行くのではなく、情報からか……」


「所詮向こうも商売ですからね。無思慮にいってもおすすめされるのは結局のところ、自分らに都合の良い物件ばかりなのですよ。そのようなものをただ素直に買うのはちょっと私のこだわりに反しまして……」


「まあ、特に今から我々が買おうとしているものは値段が値段だからな。直接の価値よりも、販売に関わる者たちが利鞘を稼ごうとする部分が予想以上に大きくなってしまってるのは否めないだろう」


「よくおわかりで。しかし……商談にあまり縁が無いと言っていたわりには、妙に商売に詳しいようですな? 普通はある程度揉まれないと意識できないような知識をこんなにさらっと漏らすことが出来るのはちょっと感心してしまいますね」


「うむ……そ、それは多分、たまたま、だろう」


(そういやエクスピの方でがきんちょどもの世話をしようと考えたときに、幼女神様に商人のクラスも貰ってたっけ。日本での知識も多少は役にはたってるみたいだが)



「ですが、それをここで追求しても特に意味も無いのでやめておきます。これから関わりが多くなれば自然とわかってくると思いますし」


そう言って軽くニヤっと笑って話題をきられる。


が、これは追求をやめたと言うよりも、今後もずっと俺の言動に注意し続けて、おかしなところは見逃さないよ?っという宣言でもあるわけで。


出来る部分を見せても俺に損はないから別にかまわないのだが……


しかし無駄に期待をよせられるのもあまりな……



だいいち商売なんてこういう断片的な理解力よりも、運と、更に重要な総合的駆引きだろうと。


ポーカーでいう手札よりも、相手からどれだけチップをむしりとれるか、どれだけチップを消費しないかの駆引きが重要なのだ。


勿論手札が良いにこしたことはないが。


それでも絶対に勝てるというわけでもなく、ある程度商売はギャンブルに近いことは確実だ。



注意しなければいけないことは、自分の手がほどほどに良くても、


相手の手がもっと良ければ、むしろその一見良くみえる自分の手が、


悪魔が地獄へと引きずり込む為の最悪の手にすらなるということである。


中途半端な才能は、ギャンブルにおいても商売においても不幸の呼び水となるのだ。



事実、日本と言う資本主義の国で育った人間でも商売で下手をうつ場合など大いにある。


例えば、ある地域に店を出したら、その近くに同じ系統の店が出来て互いに潰しあうとか。


値段を下げたら、相手も引けなくて下げてきて、双方共に損をして、得をするのは客だけとか。


傍から見れば馬鹿だなと思うのはたやすいが、


本人らはその場においてはそれ以外の行動は考えられないだろうから、つまらない結果へと流されていく。


それでも片手間で店を出したのなら本人らにとっては大した損害でもないのかもしれないが……


そうでもないことが結構多いんだよね。


それで破産で一家夜逃げとか洒落にもならん。


実際、日本で街中歩いてると、短期間で店が変わってたり、つぶれてる店とかよく見かけたし。



ギャンブルも商売も、きちんといつでも引き下がれる姿勢ぐらいはとれてから行わないと。


いつでも勝てると思って全部のチップを賭けて引き下がれない状況に陥るとか、


ギャンブルではやらないのに商売ではやってしまう人は案外多いんだよな……



ま…………あくまで俺自身が思う心構えだがね。


しかし慎重になり過ぎても動けなくてどうにもならんし。


いろいろ面倒くさいわ。





 


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