第92話 転移
なんだか、うやむやのうちに俺も元商会代表と一緒に王都にいくことになった。
買い付けにいくのはいいとして、所持者の名義がどうやら俺になる……らしい。
俺としては、あんまり引き返しにくい状況に話しが大きくなっていくようでちょっと……好ましい流れではない。
本音を言えば、今の俺にとっては財産などどうだっていいのだ。
幼女神様のことと、多少の俺のことだけが全てなのだから。
とはいえ、大きな買い物をする現場など、商売を生業にしている者でもない限り人生でそう何度も見れるものではない。
今後の事の為に、一応どういう流れで行うのかぐらいは経験しておきたい気はする。
それに大きな物件の所有者になるということは、俺にとって特に損になるようなことでもないし、無駄に責任が大きくなっていくのを気楽に考えれば、後は引っかかるような部分はない。
そうだよ、王都に別荘を持つ、ぐらいに考えればそれでいい。
むしろ、後で教団本部っということにしてそこで色々怪しい活動をすればいいんじゃないか。
どうせ宗教関係なんてもともと胡散臭いんだから、何やっても許されるだろう。
前世で言う免罪符とかがいい例だ。
権力者などに直接目をつけられなければなんとかなる。
ただ生き馬の目を抜くような都会で大きな建物を所有すると言うことは、それなりのリスクもあるわけで。
周りを信用の出来る人間で固めなくては、何が起こるかわかったものじゃない。
ま、そこはなるようになれ……といったところか。
「どうだろうか?」
「お似合いですよ」
「うーん、この手の服はあまりな……」
流石にあの服のままで王都にいくのも考え物なので、元次席の押収品の中から適当な服を選んで着てみたのだが。
俺のセンスでいうと、どこか野暮ったいと言うか。
なんでこんなところにこんなものがついているんだ?みたいな独特のセンスの貴族服にいまいち納得がいかない。
ただ子猫様がそこに入るには便利そうなのでこれを選んだだけなのだ。
「しかし、服選びなどにいつまでも悩んでいても仕方が無いな。これでいこう」
「では、さっそく参りましょうか」
「ああ」
元次席の館を出て、街に添え付けの転移用ポータルへと向かう。
ここにあるポータルと連結した魔道具を使用するには、固定規格の魔力核を動力とするのが普通なのだが。
実は小さな核をいくつか入れても起動は問題なくすることが出来る。単純に小さい核で魔力が足りなければ安全装置が働いて起動しないだけだ。
まあ今は押収した品の中にどちらも大量にあるので気にすることではない。
気にすると言えばむしろ、これを使っての転移には事故も多少は存在するようで。
慣れないと少し緊張してしまうのだ。
それは元の世界の車や飛行機などと一緒といったところか。
魔力核を装置にセットし、行き先のシジルを設定すると、徐々に魔法陣の中心に光球が浮かび上がり、やがて人間大の大きさに膨らんでいく。
そして膨らむのが一定の大きさで止まり、揺らぐように幻想的な光を放つようになる。
この状態になったらいつでも転移可能というわけだ。
「先に行っていてくれ」
「そうですか、わかりました」
元商会代表が光の渦に流されるように、王都へと向かって転移していく。
そして俺は……
《幼女神様~、王都のポータルまで転移お願いします!》
《うん! えい!》
え? なんで幼女神様に頼むかって?
だって俺、あんまりこの装置信用して無いもん……
運転が下手な人の車とかジェットコースター並みに怖いよね!? あれと同じだよ!
今回はストーリー回でした。
個人的にはもうちょっとネタやギャグを入れたいんだけど、流れ的に無理っぽく。
まあ、後でハメをはずした流れになったらまたはしゃげるでしょ。




