第82話 転機
異世界苺振興会としての試食会を開いた俺の思惑とは裏腹に、どんどんと苺以外の果物の品評が行われていく。
ひとりが恐る恐る一種類を手にとって食べると、皆がそれに釣られて同じものを食べるといった具合にだ。
というか、さっきから俺は苺を一粒づつ、口に入れては「美味いな~、最高だな~」とか言いながら、彼らをちらっ、ちらっと見るようにしてはいるのだが、何故か全員が俺の視線をササッと避けやがる。
どうなってんだよ、この現象は。
ちなみに各員に好評な果物だが────
殆どのものが好評であるのだが、その中でも特に、
まず纏め役は柿がお気に入りだ。渋いな。
補佐役はメロンがお気に入りだ。テメーは贅沢だ!
元商会代表はメロン、桃が気に入ったらしい。
というか高級贈答品路線だろう。なんでも商売に結び付けたがるのか。
母娘の母親は桃を、娘の方はバナナを食べて笑顔を見せている。
サラはみかんとデコポンだ。
犬って柑橘類は大丈夫なんだっけ……
クレイアはぶどうとパイナップルが好きなようだ。
ティーは……こいつはどうでもいいや。
そしていよいよ転機が訪れる。
気遣いスキルMAXのクレイアが苺を手に持って、質問をしてきたのだ。
「あの……この実の種って、表面のつぶつぶ……なんですよね?」
「あー、それか。それは種じゃなくて果実だぞ」
「え……?」
(え?とか言われてもなあ……事実だし。日本人でも誤解してる人多いけどさ)
「では、この赤い膨れている部分はなんなんでしょうか?」
「それ? うーん……なんだっけ……」
(調べたことはあるけど、大分昔だし……忘れちまった……)
そして答えを出せない俺に対し、クレイアは引きつった笑顔を見せている。
なんか段々、苺の立場が悪くなっていく気がする……
しっかしなあ……俺としちゃここで苺の評価を上げて、エルフらに大量に栽培してもらうのが当初の目標だったのだが……
ちなみに、苺はこの表面を赤い部分ごと削り取って、適当に乾かした後、指でいじくれば簡単に表面のつぶつぶが剥がせる。
そしてそれを水分をしっかり保持した土の上に撒いておけば、半月から一ヶ月ぐらいで発芽してくる。
光によって発芽が促されるので、土に埋めてしまうと駄目らしい。
市販のブランドものの苺もそうやって増やすことが出来るが、基本的に苺はランナーという独特の増やし方で栽培し、そうでないと親と同じものにはならないみたいだ。
最も俺はそこまで拘りはしない。
ただ素人が味わう程度ならブランド苺モドキで充分だしな。
それで、これは育てた人じゃないとピンとこないらしいが、まずランナーというツルが出てきて、それが接地するとまたそこから芽が出てくるというような増え方をする。
今回俺はつぶつぶで芽を出させて、それを親株としてランナーを出させ、実らせない捨て株とし、次の第一世代も同じく捨て株。第二世代から以降を実を採るための株とする予定だ。
なんでそんなことをするかと言うと、単純に若い世代の方が元気で大きい実をつけるからだ。
親株は捨てられるとか……せちがらい話しだよなあ……
既に試食会も大詰め。
苺以外の果物は大体は口にされていて、もう残っても居ない。
そして俺はクレイアを見続ける。
ジーーーっと見続ける。
殆ど脅迫的に見続ける。
俺と苺を交互に見ながら、やがて観念したかのようにおずおずと苺の実を口に運ぶクレイア。
(よーし、そこだっ! ガッっといってしまえー!)
あとがき小劇場そのいち。
「あら、何かしら、ソレは?」
「うむ、これはスイカバーと言ってな。その西瓜を模した冷たいお菓子なんだよ」
「まあっ……お、美味しいのかしら?……それって……」
「ああ、こいつは凄いぞ……特に種の部分のチョコチップとか人の心をもてあそぶ様に極悪すぎる美味さだぜ?」
「そ、そうなの……ごくっ……」
「どうだ? ティーはこういうのが大好きなんじゃないか……?」
ふりふりとこれ見よがしに左右に動かして、ティーを挑発してみる。
「あ~、あ~、何か引き寄せられるわっーーー」
「ほれほーれ」
「ティティーリア様!」
…………どんどんカオスになっていくので、このネタは本編には入りませんでした。
(`・ω・´)




