第78話 緑化
「ところでティー、えっと真紅の亡霊団だったか。あいつらが来たときのエルフ側の対処について聞いておきたいんだが」
(口に出すだけで吐血しそうなんですけど、この名前……)
「ん~、それを聞いてどうするの? 普通に戦うだけだし、あまり参考にはならないと思うけど」
「エルフ側の戦い方によっては街の人間達を早めに避難させる必要があるからな」
「なるほどね~、うーん……わたしたちの戦い方は狩人。つまり気配を消して物陰に潜み、遠距離からしとめるのが基本だわ」
「それって、街の建物の影に隠れるっていうこと?」
「そうね。それと建物の上にもね」
「そうか。じゃあ遠距離攻撃主体で戦うんだな。武器はあるのか?」
「弓があれば使う者もいるのだけれど、残念ながら無いから今回は魔法のみよ」
「押収品の中に弓がいくつかあったろ。あれは使えないか?」
「あれば当然助かるけど……借りていいの?」
「ああ。問題ないぞ。他にも必要なものがあるなら使っていいし」
「なら、あなたの許可があったって言って借りとくわ」
(街中が戦場になるのか……なら街の人は早めに避難させるべきだな。どこに……が問題だけど)
「それでね、その戦いに関連するんだけどひとつお願いがあるのよ!」
「ん? 何が?」
「この街を森にしちゃいたいんだけど、いいかしら?」
「……………………は?」
ウネウネ、ウネウネと。
アニメーションとかで、植物が早回しで育つ様子とかは見た覚えはあるのだが、
実際に見てみると、あまり気持ちのいいものではないな……
街の一角のボロ屋の庭で、緑化運動なんて生易しい表現ではすまないレベルの、
植物による街の汚染が進攻していた。
ちなみにティーとクレイア以外のエルフも分散して、同じ作業を各所でしている。
「これはデロングと言って、元々非常に育ちやすく、かつ緑魔法による育成促進効果も高い植物なの」
「あー、うん」
「これをこの街中に植えまくれば、わたしたちに理想の戦場が出来上がるわ!」
(ぶっちゃけて言うと、緑色の触手みたいでキモいんですけど…………しかし怖いぐらいに早く育つな……ん、まてよ?)
「なあ、これって別の植物でも育成を早めることが出来るのか?」
「出来るけど、何か育てて欲しいものでもあるの?」
「ちょっと待ってくれ」
異次元バッグから取り出すのは、おなじみの苺。
品種は〈とちおとめ〉
ももいちごとかのブランドものもあったのだが、この間、幼女神様と一緒に全部食べてしまったのが痛い。
「これなんだが……」
自分的には自信満々で出した苺の果実。
しかし何故かティーとクレイアの目はすこし引き気味だ。
「ねえ? これ毒の実?」
「へ? んな馬鹿な……」
「だって、真っ赤だし……やばいわよ、これは……」
「わたしもこれはちょっと……」
「ええー、いや、これ美味しいんだって……」
「…………」
「…………」
「なんで? なんでそういう反応になるかなあ……」
「でも、すごくボコボコしています」
「これとか凄い不細工だわよ? 表面のブツブツも気持ち悪いし」
(そりゃまあ、こいつは贈答品仕様じゃないから粒が揃ってないけどさ……こんなに突っ込まれるとか思ってもいなかったぜ……)
あ、だめだ、なんかキレそう。
俺の中での日本の農作物に対する誇りは、何故か結構高かったらしい。
どうしてもこいつらに、品種改良を繰り返して作られた日本の果物は────最強────なんだってことを教えてやらねば気がすまない。
そう、魂が叫ぶ、気がするんだ!
「試食会だ、今から試食会を開くぞ! 俺が本当の果物の味ってものを教えてやるぜ!」




