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第73話 慣習

 

 

 


「あまねく神の僕たちよ。試練の時はここに過ぎ、百万の天使が舞い降りて天の光が今、汝らを照らすだろう。〈エクステントヒール〉!」


「あまねく神の僕たちよ。試練の時はここに過ぎ、百万の天使が舞い降りて天の光が今、汝らを照らすだろう。〈エクステントヒール〉!」



既に範囲回復連打を続けて、10回ほど。


ようやく自分の中のMPが減ったのが実感できるようになった。


しかしこれを限界まで続けても、よくある漫画や小説の設定のように、気絶するとか行動不能になるようなものには感じられない。


それはまあ当然で、MPがゼロになったら行動に支障が出るのであれば、そもそもゲーム内でMPゼロの状態で通常攻撃を延々と続けるようなことは出来やしないのだから。


これを例えるなら、漫才師がネタを思いつかなくなったとか、漫画家がアイデアが思い浮かばないとか、料理人が新しい料理のインスピレーションが湧かないとか、丁度そんな感じの〈スランプ〉に近い感覚だと思える。


そう、ちょっと下品なんだが、一番ピッタリくるのは「立て、立つんだ!ジョーーーッ!」みたいな感じの時におなじみの感覚。


つまりこれはあくまで魔力操作においてのみの限定的種類のテンションの問題であって、それ以外には特別には影響は及ぼさないと思われる。



あと……これは推測だが、俺のMPが予想よりも多いのは魔法系統に分類される〈魔法使い〉〈治癒師〉〈錬金術師〉の三つの職業クラスを同時に持っているからだ。


この場合、魔法使いがレベル1あがってMPが5あがるとして、同時に治癒師や錬金術師もレベルアップすればこちらも当然ボーナスがつく。


結局、MP上昇量はクラスの数だけ倍になる。


俺の場合だと約3倍というところ。


例えばゲームなどでラスボス近くで魔法使いのMPが256あるとしたら、俺は750近くなるわけだ。


これが格差社会、ニートの上級職のチートの味か……うん……ごめん……





で、だ……


〈エクステントヒール〉をかけている間のエルフたちの反応なんだが。


どうやら感じからすると俺以外の治癒師にコレ、つまりこの範囲回復魔法の〈エクステントヒール〉をかけてもらった経験があるようで。



「これはメリアサーラ様の魔法と同じでは……」とか「いや、この癒しの輝きは明らかに上の……」とかの呟きが聞こえてくる。


エルフの治癒師かー、そんな存在が居るんならば、


色んな種類の治癒術とか教えて貰いたいが……なんか無理そうだな……なんとなく。


この場に居ないことは明白だし。


別の場所にってのも希望は薄そう。


ならエルフたちが捕らえられた時に犠牲になった……あたりか。


エルフたちの殆どが驚愕と安らぎの表情に包まれている中、


クレイアひとりが感極まったような……泣き顔に近い不自然な感じの表情なのは、


もしかしたらこの娘の本当の親に値するエルフがその治癒師だったのかな……それで俺にその姿を重ねて思い出してしまったってとこかなあ……まあ推測だが。





「さて、どうだろう、まだ回復が必要な人は居るか? ……クレイア、様子が変だぞ? 大丈夫か?」


「あっ、はい、大丈夫……です…… 申し訳ありません……」


「いや、謝られてもなあ」


「ごめんね~、この子もちょっと色々あるのよ~」


「あ~、まあなんとなくだが察した……」


「ご……めん……なさい……」


(あっちゃー、泣き出しちゃったし、やぶ蛇だったか)



自然な感じでティーがクレイアの近くに寄って行って、優しく優しく抱きしめる。


そのまま、ゆっくりと手馴れた感じで彼女をなだめるその仕草は────


ティーが彼女の親代わりだという事実を裏付けるには充分で……



周りに居るエルフたちの美形度が高いのもあってか、


まさしくそれは、神話の中の名シーンの1ページを切り取ったかのようで────





────ただな、クレイアが美少女エルフ娘なのはいい、それはいいんだ。



だが、もう一方の姿はキルバ○ンのコスプレ衣装なんだぜ……



なんだこのカオス…………っといっても、いつも通りか。


今更だな、そう……いつも通りなんだよ。



そして俺は悟りの境地へ────





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