第72話 音響
────なにコレ、もしかして俺がクレイアをたらしこんだ! みたいに、とらえられちゃってるの?
いやいや、俺は幼女神様一直線だから────
恋愛と言う意味ではなく、あくまでお世話と言う意味でだが……
まあそれも色々と考えないといけない立場なんだがね。
幼女神様は考えてなさそうだから、俺が必死に考えないと。
そもそものウチの村じゃあ、幼女神様とおおっぴらに生活は無理そうで、だからと言って村を捨てるにも倉庫の地下にある神殿が気にかかるのだ。
あそこを捨てると確実に神殿が荒らされそうだし、かといって入り口を埋めてしまうのもちょっと考え物。
エクスピ辺りで、冒険者として基盤を築いて、家でも買って住む……のもいいかもだが、これも当然神殿を放っておく形になる。
幼女神様も猫バージョンの姿でしか安心して暮らせないのもいまいちだわ。
猫の姿でも可愛いから誘拐にあう可能性もあるもんな。
そしてこのエムイー。そもそも街として機能が滞っている。
しかしその分、好きなように出来るうえ、いずれ俺の意のままに動かせる人員が多くなれば────
その閉鎖した共同体の中でなら、幼女神様も人間バージョンで好きなように動いても問題は無い。
それがエルフ達なら、例え俺が寿命や怪我とかで死んだ後でもずっと幼女神様の相手をしてくれるだろうし、寂しがらせはしないですみそうだ。
人間だけで構成すると、最初の世代はいいが、次の世代からは信用が出来ない……それは後を継いだだけで何の能力も無い子孫が偉そうにしてる貴族どもを見りゃわかるってもんだ……
まあそれはあくまで長期的な展望で。
今は何か事故でもあって、俺と幼女神様の縁が突然切れることも考えられるから、
職業クラスだけでは発揮できない実力を育成するためにダンジョンに通ってレベルあげにも精を出してる。
自分の実力さえつけておけば、何はともあれ、それなりに安心も出来るってものだし……
「だからね! こういうときはブチュー!っと行っちゃうのよ~」
「やめてください! わたしは別に……そんなんじゃ……」
「おにいちゃんにはだめなの!」
(ちょっと考えてたうちに、場はガールズトークになってるとか……、もう勘弁してくれ……)
俺はこの間作っておいた────蛇腹状打撃音響神罰装置────つまりハリセンを異次元バッグから引き出して、ティーの頭にそれなりの勢いで叩きつける。
バッシーーーン!ではなく、どちらかというとバッチーーーン!という感じの音が、部屋の中に響き渡る。
「いいいったーい。何するのよ、もうっ」
「痛くはないだろ。コイツは大きいのは音だけなんだからな」
「確かに……痛くはないわね……不思議だわ?」
「さて、ハイテンションエルフのティー君。 そろそろ真面目にやって欲しいのだが?」
すこし切れかかった俺は、ハリセンを軽くパンパンともう一方の手のひらに打ちつけて、漫才的なコミカルなノリ混じりで────ティーを威嚇してみた。
「はあ……わかったわ……ハイクオリティなエルフになるよう努力はするわ、多分ね……、しかしその手に持ってるの面白いわね……音は大きいのにダメージが無いとか……ちょっと貸してくれない?」
「もうな、いい加減に治療を済ませようって。後でなら貸してやるからさあ」
「約束よ? さあ皆、早く集まるのよ、気が変わらないうちに!」
エルフ達はすこし嫌そうな顔をしながらもティーの指示に従っている。
その顔がちょっとばかり引きつっているのは、きっとハリセンで自分らが叩かれるところを想像してしまっているんだろう。
「重症な人は出来るだけ自分の周りに来てください、軽微な人ほど後ろの方に下がっていてください────」
ようやく治療の準備が整ってくる。
なんでこんなにこの程度のことで、ここまで引っ張られ続けたのか。
いや、原因はもう明らかにわかってるんだけどさ……
「では、行きますよ!────あまねく神の僕たちよ。試練の時はここに過ぎ、百万の天使が舞い降りて天の光が今、汝らを照らすだろう。〈エクステントヒール〉!」




