第68話 望郷
唐突だが、俺はエルフたちには今後、相当肩入れをするつもり。
何しろエルフたちの精神的な中核、魂の持ちようが俺の好みにピッタリというか、
ちょうど俺が日本にいた時代に失われていってた、古き良き日本の精神を感じるというか。
イメージとして────
日本を守ろうと戦場で散っていってしまった、勇敢な日本人の姿とかぶるのだ。
俺が日本で成人していた時代にはもうそんなものどこにも感じられない国ではあったが。
エルフたちは誇りを持っている。
戦うということをきちんと知ってる
平和な時代に生きている女性達とかは《戦い》なんて野蛮だとかいいだしそうだが。
実際には戦いはどこにでも起きている。
平和があるところには確実にそれを守る為の戦いが展開されている、もしくは展開されていたし、戦っていなければ平和はどんどんと削られていく。
日本という特異なほどの平和は、先人の特異なほどの戦いによって作られた。
これは多少でも気が回る日本人であれば、あの時代にネット等で調べたことはあるだろう。
例をあげれば、枚挙にいとまがないだろうが、
あの世界の少し前の時代。
イギリスは多くの国を植民地化して原住民を奴隷化していたし、アメリカはそもそも原住民を虐殺して作られた国であるし、中国は韓国をひたすら食いつぶし、ほぼ全ての国が弱小な他国に対してモラルというものを持ちえずにいた。
歴史的に見てごく当たり前の無法、それが当たり前にならなくなったきっかけのひとつは、
アジアの小さなたった一国が世界と渡り合うという、当たり前ではない事実から起きる。
日清・日露戦争と大国相手に勝利をし続け、日本を恐れたアメリカはついに原子爆弾という手段にまで頼って日本に勝っている。
そして日本が負けた後にも、玉砕戦法を取られても困る、一応の懐柔をはかった対応により表面上の平和が約束された。
やがてそれはいつのまにか、世界中の国の他国に対する標準となった……、っと……うん、まああくまで俺の知識による私見だけどね。
勿論これには色々と複雑怪奇な裏があり、日本という国がそこまで強かったわけでもなく、負けた国も何故負けたのか、何故全力を出そうとすらしなかったのか、そして何故全てが日本という国にとって微妙に都合の良い流れになっていったのか。
おそらく関わった者の誰一人、本当の理由をわかっている人間は居なかったであろう。
戦いの後によってのみ平和が作られる。
もし自分は戦ってもいないし、自分の周りは平和だというのなら、それは他者の戦いの結果の恵みに寄りかかりすぎた平和ボケと言えるのではないだろうか。
そういう利益ばかりをむさぼって、恩のある相手には何も与えない平和ボケが多くなると、最後は当然平和を食いつぶす結果となってあらわれる。
結局のところ何がいいたいのか、
きっと────俺は、俺の思う人間らしい人間に飢えているのだろう……
そしてそれを今、エルフたちに求めようとしている……
正しいと思えることを、大勢で突き進める、仲間たちと共に────そういう周りの環境に飢えている、そう、それが多分欲しいのだ。
無意識の、思い出せないぐらい遠い前世の記憶の中にある、
多くの心許せる仲間たちと────自分らが正義と決めた戦いを一緒に行った充実感、充足感。
そういったものに対しての郷愁の感情かもしれない。
俺の村での人々たちと、俺がどうしても相容れなかったのは、
そういう記憶の中での理想の仲間たちと比べて────お互いの足を引っぱりあって生きている村の人々はあまりにもツマラナイ人間に見えてきてしまい……
関わりあいたくないが故に、俺のほうから無意識に壁を作ってしまっていたのも原因だろうと思う。
俺にとっての心の故郷。
この場所この時代に、俺はそれを現出させてみたい。
理想的な仲間達を得て、そしてそれは当然ひとつの社会、やがて大きな世界となり、
そうしてその世界樹の枝になる者、その役割をエルフたちに求めている…………
「…………っというわけで、まず私も含めて皆を回復して貰いたいのよ。……? ちょっと貴方! 聞いてるの?」
「あっ、ああ、すまない。すこし君らについて考え事をしてしまっていた……」
「あらまあ、そんなにわたしの魅力にメロメロなのね。もう、イケナイ坊やだわあ~、お姉さん困っちゃう、綺麗なお姉さん困っちゃう~ん~」
「あー、それで、回復だったな?」
「違うわよ────わたしの美しさに対する考察の問題よ?」
今日は伏線回でした。
最後はオチてるけど……
どうも忙しくなってしばらくは二話更新が限度のようです。
その分、ちょっと気が利いたことをやろうかと考え中なのです……




