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第65話 黄昏

 

 

 

日は既に落ちて、街の人間の多くは数日分の食料をあげて家に帰している。


この地下室は広いので、それ以外の幾人か泊まる事を希望した持ち家が無い者には部屋をそれぞれに与えてみることにした。


食料もここには在庫がたんまりあるし、俺の持ってる異次元バッグにもかなりの量が入っていて当分困らない。


実際、相当酷い生活をしていた人も多いようで、希望を見出した表情で食事をしている子供連れの家族などを見ると、俺のささくれだった心でも少しは癒される。


街に来てはじめに関わったあの母娘の楽しそうな姿も見られる。


この施設は悪の象徴のようなものではあるが、こういう様子を見ていると馬鹿とナイフはなんとやらで、今後の使い方によっては有効利用できそうだ。



さて……今日は結果的にはうまく行動は出来た部類と思ってはいるのだが。


が、それはむしろ、いままでが駄目すぎたとも言い換えられるし、


何かをしなければ変わらない状態だったとも言えてしまう。


何もしなくても最良の方向に動いてくれていればそれが俺にとっての理想なのだが────結局は悪い部分を見すぎて、それの対応に追われただけの一日だったのだ。


胸のポケットで寝てる子猫様のぬくもりに支えられながら、


俺一人が積極的に動かなければ、依然として悪人ばかりが良いめにあいつづけて、そのまま滅びるままでいたであろう、この街のことを思う。


そうして気付かなくてもいいことに気付き、自分の心を抉っていく。





それで、迎撃を決めてから今までの人々の動きだが────



まず纏め役や補佐や元商会代表らには、財宝の目録のようなものを作って貰っている。


とにかく量が無駄にハンパないので、これには相当な時間がかかるようだ。


俺は今の戦闘スタイル、格闘ではダメージを与えにくい敵がいずれ出てくると思っているので、この中のアイスソードにちょっと惹かれてはいた。


ただ治癒師に大剣は似合わなさそうで。


大きくて邪魔でもあるし。


そこで元商会代表がアイスソードと同じレベルの武器だと目利きした琥珀色の透明な鈍器系の、アンバーのハンマーとでも言おうか、これを一時的に借りることにした。


ゲームでも僧侶系と言えば鈍器系、鈍器系といえば僧侶だしな。


杖を使えって?


俺、殴りプリしかやったことないから。


それに鍛冶師のクラスも持っているから、最初から鈍器には適正があるのもいい。



エルフ達は当然のように元次席らを拷問。


拷問の仕方は一部のエルフが手慣れているようで、俺も多少参加したり、整合性を高めるためのアドバイスをしたり。


出来れば早めに必要な情報を全て手に入れておきたい。



今は俺は、纏め役のところとエルフのところとを行ったり来たりしている。



拷問で今までにわかったことといえば、


まずは館で雇われている人間は、ほぼ裏の事柄に関与していないらしい。


多くは元次席の行動に薄々おかしいと思いながらも、無理に関わろうとせず、


唯一関与している家令、つまり執事は現在別件で屋敷を離れている。


つまり、まだ真紅の亡霊団には連絡がいっていない可能性が高いわけで。


予想と違ってこれには助かった、とも言えるだろう。



それで結局やつらがいつ襲って来るかに関してだけれど、


真紅の亡霊団は、元次席のところに定期的に盗品を持ち込み、それの対価として中毒性の高い薬を渡して貰っていたらしい。


その次の予定日は6日後。


つまり勝負はおそらく6日後以降。


だからと言ってそれまでも油断は出来ないのだけれども。


俺としては街の皆には財宝を狙ってくると言っていたが、


この中毒性の高い薬というのがやつらの行動の鍵になると思っている。


だからやつらの行動の予測を事前にその辺りからしておくべきなのだ。





そろそろ腹になんか入れたいなあと思っていたときに、胸のポケットから子猫様が顔を出してくる。



《お兄ちゃん、ご飯まだ~ぁ?》


「く~ん」


《子猫のままで首傾げないでください! 凶悪的に可愛すぎです!》


《ごっはっんっ! ごっは~んっ!》


「くんくん」


《じゃあいったんウチの神殿に帰りましょうか、転移お願いしますね》


《えいっ!》





 


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