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第59話 開放

 

 

 


流石にさっきのキメ台詞は誤解され過ぎるし、聞き捨てならないので、スパーンとエルフのおさの後頭部を手のひらで適当にひっぱたいておいた。


いい音がしたが、だからこそあんまり効いてないのは確実だ。


音が鈍い方が大抵はダメージが大きい。これ覚えておくように!


そしたらエルフ達がもうウルサイこと……


でも、「長!」とか「人間がっ!」とかの声はいいけど、「オオオッ!」とか「勇者だっ!」とかが混じってるのはどういうこと?



「痛いです!」


「誤解されまくりだ! ここでキメてどうする!」


「う~~」


多分涙目で訴えているつもりなんだろうが。


残念ながらそのマスクでは目元は見えにくい。


いや、そんなことはどうでもよくて。



「街の皆は落ち着くように。何も問題は無い」


「でっ、ですが!」


「この者の姿は、服が無かったのと傷が痛々しいので、タマタマ、そう偶々持っていた道化師の服を貸しただけだ。恐れることは何も無い!」


「しっ、しかし……」


丁寧に説明したが、まーだ、ざわついてるよ。



「静まれ! 今はこんな事で混乱しているような時ではない!」


もう一度騒ぎをいさめ、そして俺はエルフの長に向き直る。



「さて、色々とやらなくてはいけないことが出来たが……その前にまずは貴方の名前を教えて貰えるかな?」


「あら、貴方は私の名前が知りたいの? ウフフ」


「もうそのノリはいいから!」


「ティティーリアよ。貴方ならティーって呼んでもいいわ」


「ではティー、とりあえずエルフの皆を牢から出したいんだが。出来れば先に、暴れたり、ここの人間に危害を加えないように説得してくれるか?」


「お安い御用よ~。みんな~、聞いてよね!────私達をここの施設に閉じ込めていたこの街の次席らしい奴は、この人がやっつけたわ!」


「しかも皆を無条件で解放してくれるらしいわ。つ・ま・り────」


「わたしたちは自由よ~!」



一部のノリのいい奴は「ウオオオオオッ!」と叫んでるが、まあ大半は喜んでる感じの表情を見せているだけだ。


それでも嬉しそうなのは確実ではあるけどね。



「あ~、それとこの人は恩人なんだから、迷惑かけちゃダメよん。周りの人間にも手出ししないこと────エルフの誇りにかけて!」



途中は何やらブーイングみたいなものまで出ていたが、「誇りにかけて」という単語の後で、急にエルフ達の口数が減って、妙にシリアスな雰囲気になった。



エルフにとっての誇り。


確かエルフって普段はおとなしいが戦闘系民族なんだよな。


そしてその特徴が強く出るのは、



敵を撃退するとき。


子供を守るとき。


恩に報いるとき。





「ではいまからエルフの皆さんを拘束している錠を順々に壊していきます。檻から出た後は全員ティーの指示で動いてください────出来ればこの後の、元次席の処遇や今後の街全体の行動等を決める会議に出席してくださるとありがたいです」



話題に元次席の処遇ってのを混ぜたのが俺のあくどいところだ。


エルフたちは確実に元次席に対して相当な悪感情を持っているはず。


そうとなれば皆が会議に出たがって、そして過激な処遇を提案するだろう。


多少ぬるま湯に浸った街の人らの人道的反論は、当然のごとく淘汰される。





元の世界であった、死刑反対論。


俺は基本的にはこれには反対だ。


勿論、犯罪者は誰でもかれでも死刑というのはおかしい。確実に。


だが、本来、刑罰というものはその罪にふさわしいものではなくてはならないのが原則のはず。



故に、死刑にふさわしい罪であれば、死刑にする。



これは子供でもわかる単純な真理。


もっとも、単純なそれを何故多くの人間の大人がある意味〈まったくわかっていない〉のかは複雑な真理に相当し、俺以外の多くの普通の人間には一生理解出来ないものではあると考えられる。



まあその引っ掛けはともかくも、無駄に死刑に反対するアレは、実際に自分らが決定的な不利益を相手から受けていないからこそ成り立つものだ。


実際に相手に理不尽に殺されてから、もしくは手も足も出ない状態にされてからようやく間違いに気付く、しかし殺されてからでは意識も出来ない。そういう不明から成り立つ。



原始的な感情。


子供のような感情。


ろくに死について考えもせず、死についての理解も薄く。


日々を飽食と金儲けの競争に費やして、


そしてほぼ全ての人間が、決定的に社会や感情というシステムについての理解が足りない。


キーとなる情報を与えられるまでは、それを知る未来の本人が呆れるほどに、ありえないほどの馬鹿さ加減を晒し出す。


現代における天動説信者に等しいほどの。



だからこそ、家族や友人や恋人を害されて殺したいほどの奴が現れても、


「こんな奴は殺す価値も無い」という感情システムの幼稚な流れに誤魔化され、相手に何も罰を加えられないヘタレが本質からの横道にそれていく。


その結果として善人は不幸になって死んでいき、そして、悪人は豊かになって殺されない。


そうやって社会は、大人モドキの稚拙な精神を持った人達によって罪を見過ごされた、物質的に豊かな悪人だらけになっていくのだ。



それはちょうど、部屋に黒光りする小さな素早い虫が現れても、


「こんなのは手を汚す価値も無い」と言って放っておいて────


────どんどんと自分の部屋がGの巣窟と化していくようなレベルのお粗末な話しなのであるのだ。





 


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