第57話 一対
「ちょっと聞き辛いんですけど……その身体中の凄い傷跡は大丈夫なんですか?」
「これは見た目よりは酷くはありません。むしろわざと残してあるようなものでもありますから」
「わざと?」
「私は攻撃魔術を専門としますが、治癒も非常に効率の悪い強引なものであれば自分の身体に使用は出来ます。ですが、人間に囚われていて肉体表面を整えても何も良いことはないのですよ。せいぜい……」
「あー、ストップ。言わずともわかります」
「そうですか……」
「うーん、じゃあもう治しても問題は無いって事ですね?」
「それは確かにそうですが……」
「んじゃ、パパッと治療しちゃいましょうか────あまねく神の僕たちよ。試練の時はここに過ぎ、百万の天使が舞い降りて天の光が今、汝らを照らすだろう。〈エクステントヒール〉!」
またもやド派手派手の治癒術を先手で披露してるのだが。
考え無しに、単に目立とうとしてやっている訳では無いのである。
色々と、微妙にヘタレなところとチョットだけ意地悪なところを見せてしまったから。
一応これで、彼女の中での俺の株を上げておかないと!────と思ってね。
「なっ────!」
むふふ……驚いていますな。
表情はちょっとわからないぐらいのホラー顔なんだけど。
更におなじみ、俺の十八番といくよ~
「百の神の慈悲と千の眷属の業が我が手に宿る。〈マイナーヒール〉」
「百の神の慈悲と千の眷属の業が我が手に宿る。〈マイナーヒール〉」
「百の神の慈悲と千の眷属の業が我が手に宿る。〈マイナーヒール〉」
小ヒール連打で────はいいんだけど、そろそろベ○マクラスの単体回復力の魔法が欲しいよな……
(あれ? 何かこのエルフさんの傷は治るのが早くないか?)
普通の人の深い傷は、治癒術を施しても古傷のように跡が確実に残るんだが……
このエルフの女性の全身の傷は、もうあまりそのような深い篭るような跡が見受けられない。
なんだろうな、この差は。
それはともかく、元は傷しかないような状態だったから気にならなかったが。
このエルフ、半裸じゃねえか!
「……いったん、この辺で治療はやめておきましょうか……」
「あら、何故です?」
(こっち見ないで! 下手に治ってる分、表情が怖いから!)
「出来れば、ちゃんとした服を着てもらってからと思いまして」
「まあ! …………確かにその通りかもですわ」
↓
「えーと、この俺の着ている服と〈ペア〉の服ならあるんですけどね……」
↑
「その服とペアですか、そう言えばそれはかなり立派な素晴らしい服ですよね」
「ええ。この服は俺の超お気に入りなんです!(なんとお手製ですよ~!)」
「ペアというならそちらも素晴らしい服のようですし、貸していただくのも心苦しい気がしますけれど……」
「えーっと。うーん、その……なんだ……そこまで気にしなくても……」
「?」
(グロな貴方にピッタリ! 真っ黒な悪のピエロ服、可愛くないぬいぐるみ付きバージョンです! とか言えるかよ────)




