第54話 長耳
普通の区域のものよりも、はるかに頑丈そうな構えの牢屋。
使われている素材からして、あちらとは扱いがかけ離れているのがわかる。
そして中に居る者らも、いくつもの錠や鎖に囚われて身動きすら殆ど出来そうも無い。
床面や壁にはいくつもの魔法陣と魔道具。
予想をするならこれらは魔法を抑制する、もしくは邪魔をするタイプのものであろう。
そして当然ここにいるのは────
「長耳……エルフ族か……」
「はい」
一般での常識であれば、既に絶滅しているとなっている種族。
非常に長命で、魔法に長け、それでいて容姿が特に美しいのが特徴の亜人。
そして、その髪の毛が魔道具の重要な材料となる……
「全部で20人ほど居るようです」
「髪の毛が刈られているエルフがいるのは、やはりそういうことだろうな」
「よくご存知で。多分、元次席は魔道具用の材料として売り飛ばしていたのかと……」
「ふむ……」
(それはおそらく王都へ売られていたんだろうな……しかも貴族関連、下手すると王族……)
おいおいおいおいおい……
これはもしかして、めっちゃやばいことに首を突っ込んでる、そういう感覚がビンビンするんですけど……
いんや、もしかしてどころじゃなく、もう死亡フラグがビックンビックン脈打ってるんですね?
えーと、いやさ、俺がじゃなく、この街の皆がだけど。
でも、元々廃墟みたいなものなんだよな、ここは。
お金分配して皆逃がしちゃえばいいんじゃないか?
俺は最終手段として逃げちゃえばいいだけだから気が楽だ。
でもなあ、そこまで薄情なのも少し……
このまま何もしないと、この先どうなるのか。
少し推察してみようか……
まず、俺が敵側だと過程して想定すると────
最も重要視するのは、財宝やらの資産の回収とエルフの身柄をおさえることだな。
次に、目撃者とか関係者やらの始末。
俺とか纏め役とか補佐役はまっさきに狙われそうだ。
街の皆は……あまり関係なさそう……
徹底的なら始末される可能性もないというわけでもないが。
拉致されて事情聴取っというセンも、大体は街の噂になってるから、それをする必要は無い。
元次席の館のメイドとかの中に、ある程度通じているやつらはいそうだし。
もう既に組織とかに連絡は行っているんだろう……まずったな。
しかし今更だ、あの時点では雇われてるものまで拘束は難しかった。
まさかここまで大事になるとは思わなかったしなあ……
とりあえず、財宝は異次元ポケットへ一時退避。
後はエルフと俺と纏め役と補佐役さえ隠れればなんとかなる、と思うんだが。
あ、財宝が奴の個人的な所有っぽいから、来るのは貴族関係の手じゃなく、盗賊団で私軍の可能性が高いんじゃ?
それも利益で結ばれた関係じゃなく、洗脳されまくった忍者軍団っぽいようなのあたりが……
あー、そう言えば……ここを軍隊レベルで占拠しにくる可能性もあるし。
そうなるともう街の皆も危うい……
うげ……ちょっと胃が痛くなってきた。
「くーん」
「こちび? それは何だ……?」
先ほどから姿を見なかったこちびが、目の前で何やら金色の十字架のようなものを咥えて、さかんに尻尾を振っている。
それをしゃがんで受け取ってみると、何やら独特の縞々模様が刻まれているようで。
「…………鍵か?」
「それはもしかして、この先にある頑丈な扉を開ける為のものでは?」
(おいおい、まだ何かあるのか……ハア……)




