第53話 憎々
「救世主様! あの、その、大丈夫でしたか……」
「ああ。何も問題は無い」
おねーさんの異次元バッグから出した毛布モドキで女の子を包みながら、
抱っこをして拷問部屋らしき場所から外へと出ると、付いてきていた街の人らの半分ぐらいがそこに待機していた。
多分、他は探索にでも行っているのだろう。
しかし、《救世主》か……
元の村ではつまはじき者で────
エクスピでは冒険者で────
そしてここでは救世主と────
随分まあ、コロコロと場所と立場が変わるもんだ……
これから先の展開もあっちへこっちへと、色々行ったりきたりする必要がありそうだし。
やれやれ……すごく……面倒です……
昔むかしに主人公が右往左往する小説を面白く読んでいた時期がありましたが。
そんな過去の俺をプチ殴ってやりたい気分ですよ。
「それよりも他に何か無かったか?」
「はい、ひとつは不審な人物らを見つけました」
「不審な人物? どこに居るんだ?」
「手足を縛って牢に入れています。一緒に元次席もぶちこんであります」
「まあ、いつまでも人手がかかっても仕方ないし適切な処置ではあるな……」
「それでもうひとつですが、こちらは重要です」
「ふむ。何だ?」
「それは見てもらった方が早いかと。ご案内いたします」
「わかった」
俺は時折抱っこしている少女の顔を見ながら、ゆっくりと先を歩く纏め役に付いていく。
ひたすらマイナーヒールをかけ続けたせいか、もう既に少女の顔色はピンクにちかく。
身体中の傷は大体が、元に比べて目立たない程度にまでは回復している。
ただそれでも、当然、古傷のように痕は残っているし、
折れた骨が処置されずに、曲がったままくっついてしまった指たちも痛々しい。
失った部分も戻ってなんてきやしない。
しかしそんな姿であっても────彼女の顔は明るく輝くことが出来る。
踏まれても復活するタンポポのように、である。
おそらく心の狭い小人にはそれが許せなかったのだろう。
自分の下と思っている者が──
────踏まれても、踏み躙られても、眩く輝き続けるのが────
──よほど憎々しかったのだろう。
しばし先導を受けて歩くと、
前の方に、ここに来たときの金属製の扉と素材は違うが、こちらから閉められる同タイプの扉が更に設置されてあるのが見えた。
この牢が並ぶ刑務所のようなところでも、更に厳重にする必要がある区域。
つまりは、そういう事。
既にかんぬきが外されているその扉を開けて、ゆっくりと奥へと進む。
ここに近づいた時点で薄々感じていた、魔力の違和感。
この先に何が居るのか。
予想はとっくについている。
「ここです」
「…………なるほど……」




