第52話 光塵
とりあえずこの子の体力を回復させよう。
酷い痛みがあるようであれば取り除くようにしよう。
その後は……欠損部位の再生を促す魔法を編み出して、治療してあげたいな。
これは俺にとっても今後必要になるかもしれない技術だし。
ヒールではあくまで自然回復する分の治癒の早回ししか出来ないから。
その前に出来るなら義足や義手でも開発しとくかな。
うーん、動かない義手義足とかよりも、まずは車椅子の方がいいか。
少女は今は、缶入りのオレンジジュースをこくこくと飲んでいる。
こちらも祈りでダンボール単位で出てきたものである。
最近は一度に出る食料の量が更に多くなった……
もう亜空間倉庫が無いと扱いに困るほどだ。
缶ジュースは俺がプルトップを開けてやったのだが、
少女はアノ音に大げさにビクッと反応した。
確かに俺でもあれをはじめて聞いたなら戸惑う。
しかし……音に怯えたという面もあるんだろう……
「さてと、ちょっとこの邪魔なの外す……」
「え……」
少女を縛る首輪へと手をかける。
「〈錬金〉!」
先ほどの扉と同じように非常に細い線状に水銀へと錬金をしていく。
当然のように、ほどなくして首輪はポロっと剥がれ落ちる。
(この技、結構使えるもんだな……攻撃にも応用できないかな?)
「あっ、あっ……あ……」
狼狽をしている女の子。
まあ急展開だからわからないでもないが。
「邪魔なものが無くなってよかったろ?」
「でも、こんなことしちゃ……」
「お兄ちゃんはここで一番偉い!」
「……?」
「ほら、同じように言ってみて? お兄ちゃんはここで一番偉い!」
「おにいちゃんは……ここで一番えらい?」
「お兄ちゃんはここで一番偉~い!」
「おにいちゃんはここで一番えらい!」
「よーっし、良く出来た。良い子だ~」
どさくさで頭を撫でてもよかったのではあるが。
まだちょっと馴れ馴れしすぎかと思われたので、
殆ど音が出ない、形だけの軽い拍手を笑顔でしてあげる。
「……えへ」
「良い子には、お兄ちゃんが一番偉~い証拠を見せてあげよう!」
「しょーこ?」
「うん────あまねく神の僕たちよ。試練の時はここに過ぎ、百万の天使が舞い降りて天の光が今、汝らを照らすだろう。〈エクステントヒール〉!」
〈マイナーヒール〉でも良いのだが。
最初はやはり、この全身がド派手に光る治癒術で「偉~い」をアピールしようかと。
俺の全身が聖なる光に包まれ、溢れた光が更に外へと流れていく。
視覚効果が抜群のこの魔法で、俺の印象を徹底的に良い方へつけるのだ。
「てんしさま……」
呆けた顔で見つめる彼女の身体を────
まるで家族に対するがごとく、ゆっくりと優しく抱きしめる。
俺の身体を纏う光が彼女へと、光の塵となって移行していく。
この光のひとつひとつが────
どうか────彼女の何もかもを癒してくれと願いながら────
まあでも、流石に何度もこの魔法をしつづけるのもなんだし、
後の回復は、やっぱアレでしよう…………
「百の神の慈悲と千の眷属の業が我が手に宿る。〈マイナーヒール〉」
「百の神の慈悲と千の眷属の業が我が手に宿る。〈マイナーヒール〉」
「百の神の慈悲と千の眷属の業が我が手に宿る。〈マイナーヒール〉」
いわずと知れた小ヒール連打である。




