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第5話 魔法

 




「晴れて神の使徒となったわけですが」


「ですが~」


幼女神様はニコニコと笑って相槌をうっています。


なんていうか、イイね。こういうのは。


あまりにも荒んだ生活のせいで忘れてた感情が湧き出てくるようだ。




「私はなにをすればよいのでしょう? 使徒として」


「美味しいものを作って!」



とりあえずよだれは拭きましょう。幼女神様。


後、それ使徒の役目違うから。



「いや、それ料理人というかコックというか」


「ご飯、ご飯!」



幼女神様の背後に、勢いよく振られる小犬の尻尾のようなものが見えような気がするのは錯覚であろうか。


やるせない思いを抱きつつ、まずは溢れかえった食料品をチェックする為に下に降りる。


正直このままでは俺が食われそうでやばい。


手早く食べられてしかも美味しいものを見つけ出さなくては……






「幼女神様、これなるは桃缶でございます」


「桃缶~」



幼女神様は、高級な缶詰によく見られるペナペナのカバーっぽいのをペコペコと押して遊んでおられます。


なんという可愛らしさ!


爺は爺は!



ひとりノリツッコミは空しいからやめるとして、



「食べてみましょうか? しかしこれは冷やすと更においしゅうございます。ですが冷蔵庫などはございませんから難しいところですね」


「冷たくするとおいしいの~?」


「はい。それはもう格別に。爺やに魔法が使えれば冷やしてさしあげるのですが、残念ながら爺のクラスは〈村人F〉だけで御座いますゆえ」


「えい!」


「ああっ、何をなさいます、お嬢様!」



なんだこれ、シビビっとビびれて……


ああ、やっぱお嬢様と爺やごっこはウザったかったのか?


そして俺は意識を手放した……




「でも3秒で回復したわ」


「お兄ちゃん、もう魔法が使えるよ?」


「何ですと!」




そう俺はさっきの痺れでなんと、桃缶の魔法使いになっていた。もとい魔法使いのクラスを得ていた。



「まだいまいち実感が無いのですが、さっそく魔法を使って冷やしてみることにします」


「わーい、パチパチ」



ちなみにこっちの世界、村人でも一応魔法は使える。


3時間ぐらいウンウンうなってると蝋燭の炎ぐらいの火がボーっと0.5秒出るぐらい。


……うん、役立たずだよね。


やっぱ魔法って憧れるから、結構練習はしたんだけど、どうやら詠唱とか技術とかよりもイメージ力とかクラスとか才能がものをいうらしくて、役に立つ程度のレベルにすらならなかった。


しかもこっちの世界では魔法が使えるゆえに、科学文明の発達が遅れているという有様。


まあそうだよね。大体に現象に対して魔力とかで計算しにくい結果が出るのなら、しっかりした検証結果を必要とする科学とか発達しにくいのは当たり前。



とりあえず、氷の魔法……は、カチンコチンになると食えないし、


流水の魔法……冬の川のイメージで……いや、これも水浸しになりそう。


ならば冷凍庫に30分ぐらい入れたときの、缶の表面に軽く霜がつくイメージが丁度いいかな?




「桃缶よ。我が意に応え、冷たくなあれ! BE COOL! 」



おおお、なんか今までに無い感じで魔力が湧き出てくるのがわかる!


これが役に立つレベルの魔法の感覚なのか。


普段はジョボジョボとホースから水が出てるのを、ホースの先を指で潰して、勢いよくビューッっと出させるような感じ。男なら誰でもわかるアレだ。


それが右手に持った桃缶にまとわりついて、世界を変革していくのが手にとるように感じられる。


たちまち、その手のひらには冷凍庫から取り出したばかりのような冷たさがビンビンに伝わってくるようになった。





「やりました。お嬢様、程よい冷え加減でございます。さっそく開けてみますね」


「はやくはやく~」



「ほっ」


プルトップに爪を引っ掛けてパコッと開けると、ほのかに甘い匂いが漂う。



「では、まず爺やが先に味見をしてみます」


「えー」


「おお、これはまったりとしてコクがあって滑らかで……」


「むーーむーー!」


「白桃とシロップの冷たさが共に絶妙。口の中に含むと桃源郷に迷い込んだ気分です」


「むううううう!!!」


「なんという至福。まるで秋山の魔法にかかったかのよう!」


「えい!」


「ああっ、ガガガ、シ、シビビれれれ」


「ふーんだ!」


「こ、これはもしかしてさっきのおおお。まままさかまたもや新しいクラスを手に入れちゃったりしちゃいますかがががが?」


「ううん」



やっぱそうですよね。うん。






 


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