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第49話 財宝

 

 

 


地下室は予想を超えて、すさまじく大きかった。


その中は魔道具がふんだんに使われており、


各部屋に冷暖房や換気や照明、


調理場には冷蔵庫や調理器具などの家財も充実してる他、


冷蔵庫の中には多種類の食料が過不足無く揃えられている。


更に巨大なワインクーラーのようなものの中には古今東西のお酒類が詰められており、圧巻であった。


またいたるところに高級そうな内装品があり、そのひとつは盗難にあったと有名な品であるらしい。


ならばここにある全部の貴重品が盗品でもおかしくはない。


しかもこれはあくまで生活空間だけであり、倉庫などにある異空間ポケットには、おそらく膨大な高級食料や物資や金品などが蓄えられていると思われる。



俺たちはその中を、なにかもっとジジイの弱みになるような事実が無いかと探し回った。


まず最初に注意すべきと目に付いたのは、大きな鉄の扉である。



「さて、これは何でしょうか。答えていただけますよね?」


「……お前たち貧乏人には知らないでいいことだ。だが特別に教えてやろう。それの先にあるものこそ今まで私が集めた富の象徴だ」



拘束をされていても尚、ふてぶてしい態度を取る次席のジジイ。


このぐらい精神が壊れていないと、こんなレベルの悪趣味な地下室は作らないか。



「まあいいでしょう。この扉を開けてくれと言っても聞きませんよね。だからこうします────〈錬金〉」



小さく呟いた呪文、それは金属等を作り出す〈錬金〉。


俺が今回唱えたのは、目の前の対象である元からの金属を材料にして水銀を作り出す目的のものだ。


細く、少しずつ、カッターで切るように──


扉の鍵の、元の世界でデッドボルトと言われる部分があろうと思われる隙間に〈錬金〉を仕掛けていく。


程なくしてつっかえていた部分が全て水銀へと変質して切れおちる感覚がわかり──


俺は重厚な扉をズズっと引いて、ゆっくり開けていく──



「そ、そんなバカな。キサマいったい何をした!」


「救世主さま! そこは開かなかったはずですが……」



なにやら外野がうるさく言ってるが気にしない。


それにすぐに話題は扉の内側にあったものに変わったから。



「こんな……」


「なんという量の財宝……」


「何をすればこの量が貯められるんだ……」



よくファンタジーな小説などで見られるドラゴンの集めた財宝の山という感じで金貨や金細工、宝石などを無造作に置いてある光景が描かれてるが。


大きな部屋の中には、それに勝るとも劣らない規模の多種類の財宝が山々となって鎮座していた。



「これだけの金品があれば街を救えるぞ!」


「これで家族を腹いっぱい食わせられる……」



随行していた皆が目の前の財宝に触発されて騒ぎ出す。


気持ちはわかる。わかるのだが────


だが、俺はそれを無遠慮にブチ壊す方向にでる。



「静まりなさい!────いいですか。富では人は幸せになりません」


ビシッと次席の爺さんを指して、次の言葉を続けていく。



「この富を持っていたこの人間がいい例です。貴方たちはこれを幸せだと思いますか?」


あの有名な写真、捕らわれた宇宙人のように拘束されている爺さんに────その場の全ての視線が集まる。


と同時に、皆が数瞬前の自分を反省するような顔つきになっていく。



「この富は穢れです。穢れは浄化しなければいけません。このまま使えばこの街に害を及ぼします」


「では……いったいどのようにすればよいのでしょうか……」


「この穢れに負けない心の人間に使い方を指示して貰うのです。例えばここに囚われている筈の人間にです。勿論あなた方にも協力してもらい合議で決める形へと持っていきます」


「おお、それは良い考えです。流石は救世主様!」


「まずはこの街の皆に最低限は人間らしい生活を送れるような環境を作りましょう。この件が一段落したら、纏め役のあなたと補佐のあなたが中心となって進めて貰いますがよろしいですね?」


「お任せください。精一杯努めさせていただきます!」


「僕も頑張ります!」



まあ返事は誰でも威勢良く出来るんだけどさ……凄く不安……



それはともかく、これだけの量ならこんなところに置かずに魔道具の中に詰めておけばいいと一瞬思ったが、異空間の中は万が一があるからここに置いていたのだろう。



しかし、わからないのがこいつはいったいどんな方法でこれらの財宝を集めたのか?ということだ。


盗品が混じっているのはわかるので犯罪的な手法で収集されたのは間違いはないのだろうが。


最初は次席の爺さんはもっと小悪党で、少々の悪事の証拠を掴んで、はいそれまでよの予定だった。


この爺さんは何か大きな組織、盗賊ギルド等の元締め的存在なのか。


だが、それにしては爺さんはなんとなく間抜けすぎではないかとも感じた。


もしかして主犯ではなく、ここの番をしているだけなのか。


結局何が言いたいかというと、思っていたよりも問題は大きかったということだが、


それだけでは済まず、もしかしたら外部に巨大な組織があってそれに対処しなければ────


この後も何らかのトラブルがこの街に起きるかもしれないと、


────危惧を抱いていても損にはならないかもしれない。





「…………!」


「…………!?」



何やら遠くで騒がしい。


騒いでいるのは別行動をしていた捜索組だろう。


どうやら奥の方でまた何か見つかったらしいな。


とんでもないクズがそ知らぬ顔で暮らしている────これだから無駄に人数を多くして管理がおぼつかない人間社会は嫌なんだ。





 


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