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第46話 海苔

 

 

 


「ふうううーっ…………」


大げさに、皆に聞こえるように、注目を浴びるように、大きな溜息を吐く。



「ああっ!」


「大変だ……治癒師さまが嘆いてらっしゃる!」


「誰だ! ご機嫌を損ねたのはっ」


「お、俺じゃないぞ……」


「わたしでもないわっ」


「破滅だ……もうこの街は終わりだ……」


「皆、すぐに謝るんだ!」


「平伏だ! 平伏するんだっ」


「そうだっ 皆、頭が高いぞ!」


「俺の華麗なる土下座を見せてやるっ!」



「へへーーーっ!」


「ははーーーーっ!」



(おいおい、あんたらどれだけテンプレ好きやねん……)





「やれやれ、今日はお忍びの視察だったのですが、仕方ありませんね……」



いかにも大物ぶった口調で、俺は周りにも聞こえるように少し強めに呟く。


(ここはノってやろうではないですか……お前ら後悔するなよ……)





そして俺は────



細工師の技を駆使して作っておいた、コスプレ衣装────


────ミ○トバーンさんの純白にさりげなく金が輝く法衣を────



──わざわざしなくてもいいのに──大回転しながら──舞うように大げさに羽織った。



「うおおおおおっ」


「ああっ!」


「な、なんと、神々しいっ!」


「聖者が、聖者が街に……」


「救われる、俺たちは救われるぞ!」


「あうあう……」



(……随分ノリがいいな、ここの人ら。一瞬売れない芸人の群れという言葉が浮かんだわ……どれ、更にもうひとつサービスを追加してやろう。これで俺の印象を刻み込んでやる!)





「あまねく神の僕たちよ。試練の時はここに過ぎ、百万の天使が舞い降りて天の光が今、汝らを照らすだろう。〈エクステントヒール〉!」



この治癒系魔法呪文は、MMORPGなどではおなじみ、


範囲系の体力回復魔法だ。


昨日エクスピの街の本屋で、店主のおっさんにジロジロ見られる視線を軽く受け流しながら、主に子供向けの御伽噺を立ち読みしまくって発掘した呪文だ。


まあ呪文自体は補助程度なのだが、呪文に引っ張られて成功するという利点もあり、


はたして出来るのか?と思いながら試してみたが、問題なく出来た。


多分だが日本人として子供の頃から魔法そのものの概念にはゲームやアニメなどで慣れ親しんでいるから、最初の発動には常識的に戸惑うが、こういう大きい魔法と言うか大げさな魔法に対しては苦手な意識が少ないのが、多少成功要因としてあるのではないだろうか。


逆にこの世界の人間は魔法発動は楽に出来るようだが大きな魔法に関しては苦手な意識が強いみたい。


まあしかし、威力とか効果に関しては使ってる人を見たこともないから比較することもままならず、うまく出来ているかはわからないのだけれど。


それでこの魔法だが、マイナーヒールとは違って光る対象が利き手ではなく、オーラのごとくその全身に及ぶ。


当然のように視覚的効果も非常に高く、


その輝くような、後光を纏ったかのような姿は、


善良な一般市民たちの感情を高揚させる。


その効果は抜群だ。



「美しい……」


「凄い……まるで天使だ……」


「なんという……おお、神よ……」


「暖かい……赤子になって母に抱かれているようだ……」


「あれは御伽噺の……本当だったのか……」



俺を除いたその場の誰もが。


堪えきれない歓喜や安堵の表情を浮かべ──


現人神あらびとがみの出現に地に膝をつけて祈り、


涙を浮かべて心を震わせている。





さて、これで俺の存在を強く、強く印象付けた。


実際には服にだがね。


そう。この服を着ている人間の言葉を無視できない程度には。


少々強引でも、あまり考えずに従ってしまう程度にはだ。


流石ミスト○ーンさんの服、格が違う。





────この街に来て思っていたのは、


ここまで酷いと、この人たちはいったい何に向かって────


どのように不満や欲求を解消していたのか?ということ。



人は窮すると、心が弱い者から先に人間性を捨てていくようになる。


俺の予想ではおそらく……それは更に弱いものへと向けられているだろう。


では、また見たくもないモノを見せて貰おうか…………


この服の権威を使って、強引にね────


まあ、出来れば予想が外れて、そんなもの居ない方がいいんだが……





 


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