第43話 貧弱
「治癒師さま!」
「治癒師様! 私にも祝福を!」
「お願いします! 治癒師さま!」
(また面倒くさいことに……殆ど本能的に反射で治療したのがまずかった。ホントに典型的な例のテンプレルート、寂れた村の救世主ルートに入っちまってる────ここはトンズラして、なんとか別ルートに分岐しないと……)
《だんじょんいこ?》
《そうです! 幼女神様、ナイスアイデア!》
(無理やり熱血バトルルートに入るんだ! 多分出てくるまでにはこの騒ぎも収まっているはず……うん、そう思おう……)
騒いでる人たちを振り切り、街の中心へと急ぐ。
ちなみに咳をしていた親子には特製廉価ポーションを10本ほど押し付けてある────「様子が悪くなったら使ってください」と告げて。
あれは検証データは取っていないのだが安全には充分注意しつつ作ってあり、身体に悪くなるような成分はまったく入れてないので、少なくとも悪い結果にはならないと思う。
(むっ、あれがここのダンジョン入り口か。四角くて真っ白で、秘文字が赤、青、黄色で書かれている、どことなく郷愁を感じさせるデザインだ。傾けると何か漏れてはいけないものが〈だばあ〉と漏れるような)
「スライムが俺を待っている!」
そうして勢いよく飛び込んだダンジョンの中には、
ありえないほどザコそうな魔物がいた……
短い蛇に頼りないひょろ長い手足が生えて、地面から体躯を浮かしている感じ。
イメージとしては、子猫の背丈で、肉や細かいあばら骨をとっぱらい、背骨と手足のみになった立ち姿をさらに蛇っぽい身体で構成したような。
わかりやすく言うと〈異様にヒョロくてキモくて小さくて弱そうで素早そうなトカゲ〉
それが数も少なくまばらに歩いてる。
「えーと……これ魔物……だよな……」
ゆっくりと捕らえようとするとカサコソと逃げようとする蜥蜴。
(まあまあ素早いな。よっと)
(ふっ、レベルアップした俺から逃げられるわけもない……────思わず捕まえちまったが、手元でキーキーと鳴くトカゲはちょっとイヤだわーーー)
(核はまさかコレ?)
後頭部にある非常に小さな突起。
当然中身も小さくて……
(スライムの……100分の1の大きさか、換金で1ルトってとこ……いやこれじゃ買い取りも拒否されるだろ)
「1階は狩るだけ無駄みたいだな……」
「くんくん」
「こちび、そんなの腹壊すから食べちゃダメ!」
無駄に広い1階を歩き回って、隠されるように岩陰にあった階段へと足を運んでいく。
(さて、2階はどうだろうか。さっさと熱血バトルルートに入らないと嫌な予感がビンビンするんですけど)
そして降りた2階には、
巨大な広間に大きな岩山がいくつも。
あちこちに人間大の猿っぽい魔物がわんさかと群がっている。
丁度、動物園のサル山を大きくしていくつも配置したような形。
その群れている猿らの殆どがふてぶてしい感じか、やる気のなさそうな感じでだらけているが、身体的には筋肉が発達しているようで────
「おお、なんか思ってたより普通の敵だ。ひさしぶりにまともなバトルになりそうな予感!」
(あれ?──俺まともにバトルしたことありましたっけ?)




