第35話 要領
「エルフの髪の毛…………」
寝っころがって子猫様を腹の上、こちびを小脇に魔改造指南の書を読む俺。
少し古臭い文章に戸惑いながらも読み進め、何度も読み返す。
それで──最初にまず必須とあるのが〈エルフの髪の毛〉だ。
だがエルフなんてのはそもそも絶滅したとも言われていて、その髪の毛など入手できるわけもない。
はじめのあたりこそ「ふーん」という感じで読んでいたが。
中ほどまで読んでもあくまでエルフの髪の毛が手元にある状況でこそ成り立つ技術の話ばかりであり、まったく現実的な取っ掛かりが無い。
そういうわけで少しやきもきしている感覚がぬぐえないのだ。
「入手した髪の毛の一端を固定し、それを指でしごくと滑らかに動かせるときと引っかかる時があり、それで魔力の流れる方向を判断することができる、ねえ…………ふむ」
俺は当然のように自分の髪の毛を一本抜いて、一方を爪で摘んで、そこから指の腹でしごいてみる。
「おお、俺のでもわかるわ。確かに引っかかる方向がある……これは面白い!」
(エルフじゃないが、俺の髪の毛でも微小な効果は期待できるかな?──どうせはじめに作る予定の魔道具は一番簡単そうな魔灯だしなあ)
まずはわずかでも成功の事例が欲しい。
例え豆電球ほどの光しか出なくてもだ。
「ふむふむ、耐熱布に髪の毛で魔陣刺繍を施し、魔力を流すことによって望む効果が発動する、っか。光は真円、風は渦巻き、火は三角、水は器、土は四角を基本としっと……」
うーん。
作る予定の魔道具は魔灯だから?
この場合は────魔陣刺繍と言われる髪の毛で真円の刺繍を施した耐熱布を用意すればいいんだよな?
だが耐熱布なんて入手のつてがないんですけど。
どうせ実験で燃えるまですらいかないから普通のでいいかねー。
他にも細かい安全装置やら安定術式の技術が載ってるけど、まいっか。後回しで。
なんていうか、日本に居た頃の科学書みたく、何でもかんでも小難しく書いてあるが────────結局のところ科学技術に例えてみれば、魔陣刺繍がフィラメント、髪の毛が導線、核が電池となる。
そういうことだろ。うん。
いや、なんじゃこりゃ。
髪の毛を爪でビーッてしごいてみると、くるくる巻き毛になったからそこに核をくっつけてみたら、核から魔力が流れて風が起きてるのがわかるんだが。
こんな簡単でいいのか?
しかし、技術なんてこんなもんか。
例えば元の世界の発電だって、単純なモーター逆回しで出来るもんな。
これって毛が水路みたいなもので、そこに水を流すと途中で止まって更に流れるから決壊して、その反応が魔術になるっという感じだな。
そういえばなんか魔法使いになってから魔力が頭皮とかでビンビン感じられてたのはもしかして髪の毛で空気中の魔力を吸収してたから?
いやまてよ、それだと癖毛の人は頭が扇風機に?
んー、それより前に魔力が頭皮に吸収されるか──
じゃあ空気じゃなく核を直接つけてみると……
「うほっ、魔力が来る~」
清浄化機構ってのが無いと効率は悪いらしいが────これはもしかしてMP使い放題フラグ!
更に魔改造の第一歩を確立して、今日の俺は調子にのってるかもしれん。
「みーみぃー」
「くーーん」




