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第21話 強欲

 

 

 

──ザ・土下座。


それは日本人の魂。



浮気をしたときに誤魔化したり、結婚記念日を忘れてたのを謝ったり、お小遣いの前借を頼んだりと、万能包丁のように色々と使える便利な業である。


それ故に──いにしえから男親から男の子へと、家伝として脈々と受け継がれる。


そしてその集大成が今ここに。



「幼女神様、どうか俺に治癒師と錬金術師と鍛冶師と細工師と商人と料理人と教師のクラスをお与えください!」


「えい!」


「ががががガガガガがががががががはっ!」



(ちょっ、これ今までで一番キツイんですけど。一気になんか頼むんじゃなかったわ、もう遅いけど……)





あの後、500個にも及ぶ核が散らばったさまに呆然とする奴らを尻目に、



「こいつは手付けだ。次が欲しければ俺の泊まってるファンシーな宿屋に連絡をよこせ。仕事をくれてやる!」


と言ってダンジョン奥へと去っていった。


まあ連絡は来るだろうな、例え俺のあの態度に好感を抱いてないとしても。


なにしろ昔の俺自身と同じ立場なんだから、俺がそれを一番良く知っている。



昨日は、いや今日の朝になる前の夜だったが、やつらを見たときの苛立ちのままに芝居染みた行動をとってしまったが、結果的には良い流れになったと思っている。


あの場は強気な態度で接した方がよかった。


俺の中の苛立ちを、やつらがやつら自身への苛立ちと勘違いしてくれる。


それが俺にはもの凄く都合がよかった。



普段の俺のままで相対したら、


日本人の無駄に優しくヘタレな態度でいったら、


おそらくは俺はあの子供らにですら、便利な道具扱いの、生物として下にランクづけされてしまうから。



何しろ俺は知ってるからな。


多くの日本のお父さんが娘に「お父さんの後のお風呂は嫌!」とか「お父さんの服と一緒に洗っちゃったからもう着れない」とか言われても、反抗も出来ない姿を。


で、嫁さんには「ウチのATMがオンボロな件について説明を求む」とか言われちゃうんだ。


これがギャグとして笑えないお父さんにはすまないが。





結局なところ、俺が欲しいのは矛盾だ。



物質的に豊かになれば心が貧しくなる。


慣れたものでは満足できなくなるからだ。


物質的に貧しくなれば心が豊かになる。


空腹は最高の調味料というわけだ。


優しくすればいずれつけあがるし、


厳しくし続ければいずれ素直になる。



矛盾する存在が欲しい。



少々の光に塗りつぶされない闇を持っている者。


多くの優しい男がそれを奴隷という闇に求める。


そして優しくしすぎて闇を忘れられ裏切られる。



ほしいほしいほしい。



苦しくなれば助けを求め、楽になれば手のひら返す、


流されるだけの石ころにやさしくしても意味が無い。


独り立ちできたら途端に疎遠になるような、


人間である努力をし続けない奴はいらないんだ。



ほしい。



信頼し過ぎても裏切らない友人が欲しい。


権力を与え過ぎても裏切らない部下が欲しい。


優しくし過ぎても裏切らない女性が欲しい。



欲しい。



幸せになれない人間が欲しい。


幸せに慣れない人間が。





俺は、


俺のように、


ココロに薄れない闇の釘が刺さってる、


人に裏切られまくって、それでも人であることをやめない奴が欲しいんだよ。





 


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