第20話 暗闇
この場には本来居ないはずの、ひとつの異分子を見つめる多くの視線。
その見つめられている対象である、
俺は今たぶん、
傍から見ると非常に険しい顔をしてしまっているだろう。
何時から何時までかは知らないが、
おそらくあの昼間の子供、いや餓鬼どもらの居ない時間帯のみここを利用してる弱者の群れ。
「ムカツク……」
苛立ってるのは、
昼間にいた餓鬼どもにか。
反抗も出来ないこの子供らにか。
それともなにもしないこの街の人間にか。
それとも、あの村での無力な自分を思い出すからか。
いつのまにか広間に居る子供たちはスライムに群がることを中断して────
全員が俺をおびえた眼でみつめていた。
(酷いもんだな……ろくな武器すら持ってる奴もいない)
俺は苛立ったその心のままに、たまたま眼が合った小さな子供の前に無造作に歩み出る。
「亜人……」
服の端からのぞくその毛深い四肢はおそらく獣人系の種の証。
俺が遠慮もせずにゆっくりと前に出て、手を伸ばしその身体に触れようとしたその時──
「下がって!」
その子を奪うようにひったくり、間に入ってかばう1人の姿。
他よりは少し年上らしいが、まだ子供らしい中性的な顔立ちに凛々しい目付きと流れるような眉。
ちっ、イケメンだな。
なるほど、──いるだろう──とは思ってたが、コイツがこの群れのまとめ役か。
そのイケメンガキが険しくこちらを睨んだまま、おもむろに懐から安物そうなボロいナイフを取り出してこちらに向ける。
「ジルっち!!!!!!!」
「ジルねぇ…………」
「だめっ!」
(なっ!…………ジルっちだとおおおおおお)
傍らの巨乳っぽい少女がイケメンガキにすがりついてよりにもよって〈ジルっち〉と叫びやがった!
〈ジルっち〉だぜ、〈ジルっち〉!
あまりのインパクトについカッとなって、その後一瞬何も見えない聞こえない状態になったぜ。
(俺だって、俺だってええーーーっ────────────
────女の子から○○っちとか、そんな嬉し恥ずかしな呼び方して貰いたいわあっ!)
決めた。こいつは殺す!
イメージの中でビシッと指を立ててそう宣言する。
《え~、殺すの~?》
《いやいや、ノリで殺しちゃいけませんって。言葉のアヤってものです》
決めといた筋書き通りに上書きしようか。
軌道修正、軌道修正。シリアスモードに戻りまあす~。
「こいつらの…………アタマはお前か?」
「ああ。格闘やろうが何の用だ……」
「ふん、ヤッパ知ってたか」
だろうな。非力でツマハジキもので社会的な力を持たないガキには
────情報だけが命綱だしな────
俺は核用の袋に手を突っ込んでひとつを掴み出して、すっと目の前に掲げ────そして落とす。
それはコロコロとガキの足元にまで転がっていった。
「なんのつもりだよ……」
「やるよ、拾え」
一瞬、驚いたような表情を見せて足元の核に眼を移したが、すぐに元の警戒した顔つきに戻り、俺を睨むイケメン。
当たり前だ。こんな小さなモノひとつじゃ、皆どころか自分ひとりも救えやしない。
こんな程度で喜ぶような薄い闇しか背負ってないなら、俺が手を差し伸べる資格も甲斐もない。
陽の光の元に戻った途端、他人事には眼もくれないアイツラ────この街の大勢の愚物と同じになったんじゃ、俺が手をかけてやる価値すらも無いんだ。
俺はまたひとつ、核を取り出し放り投げる。
「お前らに────仕事をやろう」
今度はふたつを放り投げる。
「お前らの傷を治してやろう────」
今度はみっつを放り投げる。
「お前らに武器を作ってやろう────」
手掴みで持てるだけの核を放り投げる。
「お前らに戦い方を教えてやろう────
「お前らに腹いっぱい食わせてやろう────」
次々、次々と俺は袋から核を掴み出しては放り投げる。
「だから────」
「俺に────」
「────俺にっ! ────この街の全ての情報をよこせっっっ!」
「みー、みぃー」
俺がこの街の全てを手に入れるために。
今日も2話更新。
そしてこの後、新しい小説も投稿します。
定番のVRMMOモノ。
こちらとは毛色も書き方も違いますが読んでくれると嬉しいです。




