表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/112

第10話 逃亡

 

 

 

きつい。ちょっと考えればわかると思うが、スライム相手に刃物を使わずに素手で格闘とかなんて無理ゲー。


こいつら動いているときは、髭剃り用ジェルみたいな柔らかい雰囲気がするのに、攻撃あてた感触はまるで自動車のゴムタイヤだ。


敵の背が低いので主に蹴りで攻撃するのだが、レベルの低い俺では攻撃が通りにくい。


魔法でやればいいのだが、MP温存を意識して最初は格闘で挑んでみた。


で、何故効率の悪い格闘での攻撃を続けているのかというと────気持ちいいのだ、身体がスムーズに動くところとか、でかい打撃音とかが。



「格闘家のクラスすっげえ」


蹴りを一度放つごとに、身体が新しい動きを見せてくれる。


軽く力を入れる度に、身体のあちこちの筋肉が喜びで悲鳴をあげる。


動作の一瞬一瞬に、最も適した姿勢と力の入れ具合が自然と理解できてしまい、その通りに身体を動かすと、まるで体中で筋肉の喜びが乱反射しているような感覚に浸れる。


最初はただ足裏で蹴るだけだったのが、段々と踵や足刀、つま先などでの攻撃が巧みに入り乱れ、決定打は得られないものの、何度も手数、いや足数を稼いでいるうちに慣れたせいか蹴りの威力が徐々にあがってきている気がする。


そして攻撃をしている中でわずかに手ごたえが違う部分があるのを見切り、その部分を集中的に蹴ることにする。



「うおおおおおっ、パクリ拳っ、東斗百裂脚」


脚が百本もあるようにすら見えると思いたい速度で足技を連続で繰り出す。


踵で大きく抉り、足刀でかき分け、つま先で深く抉る。何度もそのコンボを繰り出しているうちにスライムの弾力に負けずに周りの邪魔な部分が押しのけられて、核が浮き出てくる。


最後につま先で大きく抉り、核の下にまで達した右足の親指をデコピンのような感じで跳ね上げて核を弾き出し、すかさずキャッチする。



「ふう……いっちょあがりっと」


ちょっと大きめのビー玉みたいな核を確認するように眺め回し、


そして一息ついた後に俺はようやく後ろが騒がしいことに気付く。




「すんげー、なんだよあの技」


「スライムを蹴りで倒してる……」


「百裂脚だってよ。かっけー」


「でも俺らと効率変わらないな」


「だね」




…………かっ、悲しい…………


あの広場から近い場所で、少々?五月蝿くし過ぎたようだ。


短慮だった自分の行動を少し反省して、先を急ぐことにする。


幸いまわりのスライムは鈍足なので、踏み抜いたりしなければ通行の邪魔はされない。


不自然にならない程度の速度でがきんちょらから逃げるように奥へと移動する。


男ってこういう時はバレバレであっても格好を取り繕おうとするもんだよね。どうでもいいことだけど。


移動中も適当に1匹で居るスライムを見繕いながら戦い、1階の端っこ、階段のある小さな部屋にたどり着く頃には、核の数は大体30個程になった。



「で、なんでふたつ階段があるんだ?」


ひとつは緩やかな階段。


もうひとつは底が見えないほど深い階段。


多分だがこの深い階段は熟練者用の階層のショートカットではないかとあたりをつける。


俺が選択するとすれば緩やかな階段の方なのだろうが、そもそもいく必要があるのかということも考えるべきなのだが。


以前に聞いたことがある話からすると、今の所持核は大体1個が100ルトぐらいだと考えて3000ルト程度である。


これだと数回食事をするのは余裕だが、宿代にはかなり辛い。


このままここでスライム虐めを繰り返すのもありだが、目標として余裕の出来る金額、1万ルト以上を目指すとすると、倒すのも探すのも時間がかかるスライムだと難しい。



「うむ、行こう!」



俺はいそいそと下へと続く階段に脚を踏み入れた。





 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ