表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

作者: 鯛安善吉
掲載日:2026/07/31

ある日、猫がやってきた。

赤っぽい橙色の毛並みが美しい猫だ。

腹を空かしていたのか、軒先でこっちを覗いていた。

手紙を書く手を止めて、おいでと手を振った。

飯をやったら無心で食っていた。

名は何と言うのだ?と聞くが猫は何も答えない。

まぁいいか。

ここには俺と猫しかいないのだから。

猫は話好きなのか、ペラペラと話し続けている。

どうやら猫は世界中を旅してきたらしい。

どんなところに行ったのだ?

聞くと猫はナンと鳴いた後、思い出話を始めた。


まず語ったのは深い森の中にある動物の王国だ。

多種多様な動物が平等に暮らしているらしい。

得意不得意を補い合って真の平和を感じたそうだ。

中でも芸術が特に発達しているようだ。

猫は事細かに作品の説明を続けていた。

だが芸術に疎い俺にはチンプンカンプンだった。

言葉はどうしているのだ?

聞くと猫はつまらなそうな顔をした。


次に語ったのは雲の上の大地の話だ。

空に向かって真っすぐ昇ると辿り着けるらしい。

しかし大地は戦争によって荒れ果てていた。

少ない土地を巡って争いが絶えないそうだ。

貧富の差が激しく幸せはどこにもないと聞いた。

でも美しいものはあったと言う。

それはいったいなんなのだ?

聞くと猫は空を見上げた。


猫は航海もしていたと言った。

むさくるしい男衆に囲まれて揺られていたんだと。

だが気の良い連中だったようで暇しなかったらしい。

特にクルーの誕生日は盛大に祝っていたそうだ。

晴れの日も、嵐の日も、吹雪の日も船は進んだ。

それでどこに辿り着いたのだ?

聞くと猫は前足で床をトンと鳴らした。


悪魔と友達になったとも猫は語る。

地獄に行ったとき気に入られたそうだ。

取引を持ち掛けられて逆に言い負かしたんだと。

なにやら怪しいホテルに泊まったとも言った。

住人は案外人の良さそうなやつばかりだった。

別れるときはみんな笑っていたらしい。

お前は一度死んだのか?

聞くと猫は悪戯っぽく笑った。


一番のお気に入りは電子の海だと猫は笑った。

そこは誰もが自由で、飾らず、好きが溢れている。

世界中の人と話ができるというのは興味もある。

人ではない存在とも交流ができるんだとか。

たまにとんでもない悪意がいるとも言った。

親友と言える相手にもここで出会えたそうだ。

お前、友達がいたのか?

聞くと猫はプンプン怒りだした。


さらに猫は話す。

想像もしてなかった場所について。

故郷から出たことのない俺は目眩がした。

この猫はいろんな場所を旅してきたのだ。

本当に世界中、もしかしたら世界すら超えて。

もはや嘘か真実かはどうでもよかった

猫の話を聞きながら俺は胸が躍った。

猫よ、俺でもお前のように旅はできるか?

聞くと猫は頷いた。

旅ができるかはお前次第だと。

望めばどこへだって行けると。

一歩踏み出すか、踏み出さないかだけだと。


ひとしきり話すと猫はソッポを向いて歩いて行った。

1つ、気になることがあった。

尻尾は旅中で失ったのか?

後ろ姿に聞くと猫はナンと鳴いた。

どうやら説明する気はないみたいだ。

猫は次にどこへ行くのだろう。

またここに辿り着いたときは美味い猫缶でも出してみるか。

旅先で出会ったときは、俺の話を聞かせよう。


少ないが、俺の始まりの話はここで終わりだ。

つまらないとは言ってくれるなよ。

ここから話は面白くなるのだ。

まず俺が最初に辿り着いたのは海の底の国だ。

そこにあったのは……


おわり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
『次に語ったのは雲の上の大地の話だ。 空に向かって真っすぐ昇ると辿り着けるらしい』 →(ʘᗩʘ’)この猫空飛べるんだ! 『悪魔と友達になったとも猫は語る。 地獄に行ったとき気に入られたそうだ』 →(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ