「Eyes」
はじめまして、琥西です。
私事ですが、今回初めて小説の執筆に挑戦いたしました。
まだまだ未熟な点も多いかと思いますが、皆さんの日常のひとときに、少しでも笑顔を届けられるような物語になっていれば嬉しいです。
温かい目で見守っていただければ幸いです。よろしくお願いします。
「Eyes」1 琥西 零
第一眼 目 ― 神器
目――それは、人間にとって最も身近で、最も不可解な器官だ。
世界を映し、感情を宿し、ときに言葉以上の真実を語る。
古代神話において、神々は幾つもの目を持ち、
魔を退けるために“目”は描かれ、
一つ目の神は畏怖と力の象徴とされた。
見つめることは、認識すること。
認識することは、力を持つこと。
だから人は、目に意味を与え続けてきた。
それが――神器と呼ばれる理由だ。
そして今、その神話めいた力は、
物語の中ではなく、現実に現れ始めている。
「先日起こった連続放火殺人事件について、新たな続報です」
リビングに設置されたテレビから、淡々としたアナウンサーの声が流れる。
朝のニュース番組。まだコーヒーの香りが残る時間帯だ。
ソファに寝転がりながら画面を眺めている俺――
神谷瞳真(かみや とうま)は、無意識に欠伸を噛み殺した。
高校三年生。今年は受験。
本来なら、もっと焦っていてもおかしくないはずなのに。
(……朝からのんびりぼーっと生きてる幸せもんだよな、俺)
「犯人は現在も逃亡を続けており、目撃証言によりますと、犯人の瞳の色は赤――」
画面が切り替わり、防犯カメラの映像が映し出される。
フードを被った人影。その顔は闇に沈んでいる。
「加えて、瞳孔部分には炎のような文様が目視で確認されています」
一瞬、映像が拡大される。
ノイズ混じりの画面の中で、確かに“赤い目”が光っていた。
「……変な話ねえ」
キッチンに立つ母――神谷樹里(かみや じゅり)が、フライパンを揺らしながら言った。
「まるで神話の世界みたいだわ」
冗談めかした口調。
いつもの、どこにでもある朝の会話。
でも、俺は画面から目を離せなかった。
「……俺はさ」
気づけば、そんな言葉が口をついて出ていた。
「神話、信じちゃうかもな」
樹里は一瞬だけこちらを振り返り、少し驚いたような顔をする。
「あら、珍しい。瞳真がそんなこと言うなんて」
「なんとなく、だけどさ」
理由はうまく説明できなかった。
ただ、胸の奥が微かにざわついている。
画面の中の赤い瞳が、
こちらを“見ている”気がしてならなかった。
ーその日から、俺の日常は、静かに壊れ始めた。
席に座った瞬間だった。
「おーい、瞳真ぁ」
前の席の男子が、わざとらしく長い声を出す。
「……おはよ」
短く返すと、そいつは不満そうに振り返った。
「冷たくね?
おいおい、俺たちずっと神神――カミカミコンビでやってきただろー?」
「その呼び方やめろって言ってるだろ」
「えー? いいじゃん。
神谷に神木。ほら、もう神話感あるし」
そう言いながら、神木冬(かみき ふゆ)は俺の頭を軽くはたいた。
「……朝から元気だな」
「当たり前だろ。
幼稚園から一緒の相棒が、受験生のくせに朝から無気力だったら心配もするっての」
今度は、わざとらしく肩を組んでくる。
「おーい! 聞いてるかー? 瞳真くーん?」
「はいはい、生きてます」
「よし!」
満足そうに笑って、冬は前を向いた。
――本当に、昔から変わらない。
「てかさ」
すぐにまた振り返る。
「朝のニュース見た?」
来たな、と心の中で呟く。
「連続放火のやつ?」
「それそれ。
犯人、目が赤いとか言ってたよな」
冬は冗談半分で言う。
「もう完全に能力バトル物の導入だろ。
次は『実は俺、神に選ばれたんだ』とか言う高校生が出てくるって」
「……笑えねぇよ」
「え?」
自分でも驚くほど、声が低くなっていた。
「いや、なんでもない」
そう誤魔化すと、冬は少し首を傾げてから笑った。
「真面目だなー。
どうせ俺たちには関係ないって」
その言葉を聞いた瞬間、
なぜか胸の奥が、わずかにざわついた。
(……本当に、そうならいいけど)
冬の目は、今はまだ普通だった。
何の色も、文様もないー ただの、日常の中の目。
そのことが、
この時はまだ、救いのように思えた。
放課後の校舎は、昼間の喧騒が嘘みたいに静かだった。
西日が廊下の窓に反射して、床に長い影を落とす。
「なあ瞳真」
校門を出たところで、冬が手を上げた。
「今日さ、ラーメン行かね?」
「またかよ」
「いいだろ。受験生でもラーメンは食う。
むしろ食え」
「意味わかんねえ」
そう言いながらも、俺は断らなかった。
こういう何でもない時間が、嫌いじゃない。
住宅街へと続く道を、並んで歩く。
空はオレンジ色に染まり始めていた。
「そういえばさ」
冬が思い出したように言う。
「朝の放火事件、まだ捕まってないらしいぜ」
「……やめとけって、その話」
「えー、怖がりだな」
笑いながら言った、その直後だった。
前方から、黒いパーカーの人物が歩いてくる。
フードは深く被られ、顔は影に沈んでいる。
すれ違う瞬間――
視線が、合った。
心臓が、跳ねた。
ほんの一瞬。
だが、確かに見えた。
――赤い瞳。
炎のような文様が、瞳孔の奥で揺れていた。
息が詰まる。
体の奥から、何かが引き寄せられる感覚。
嫌悪でも、恐怖でもない。
ただ――抗えない違和感。
(……今の、)
「……なあ、瞳真」
冬が、小さく声を落とした。
「今のやつさ……」
「……ああ」
振り返った時には、
黒いパーカーの姿は、もう人混みに紛れて消えていた。
数分後。
――ドンッ。
遠くで、鈍い音がした。
続いて、焦げた匂いが風に乗って流れてくる。
「……おい」
冬が目を輝かせる。
「まさか、今の音――」
次の瞬間、サイレンが鳴り響いた。
「放火だろ、これ!」
冬は、楽しそうに笑った。
「行ってみようぜ!」
「冬、やめろ」
「だってさ!
もしかしたらニュースがホントかもしれねえぞ?」
その言葉が、妙に現実味を帯びて聞こえた。
俺の胸の奥で、
さっきの視線が、まだ燃えている。
(……行ったら、戻れない)
そんな予感だけが、
はっきりと、そこにあった。
走りながら、頭の中で同じ言葉がぐるぐる回っていた。
(……本当なのか?)
ニュースで見た赤い目。
さっき、確かに見た炎の文様。
(もし、本当だったら……?)
もし、あれが作り話じゃなくて。
もし、この世界に“神話みたいな存在”が本当にいるとしたら。
俺たちは、どこまで安全なんだ。
「ほら見ろ! やっぱ人だかりできてる!」
冬の声が、やけに遠く聞こえる。
現場に近づくにつれ、空気が変わった。
焦げた匂い。
赤く点滅するパトカーのランプ。
規制線の向こう側に集まる人、人、人。
「下がってください!
一般の方はこれ以上近づかないで!」
警察官の怒鳴り声。
それでも、人は集まる。
「やば……マジで放火じゃん」
「これ、撮ったほうがよくね?」
「ニュースの犯人、いるのかな」
俺たちと同じ制服の学生たちが、
スマホを構えながら囁き合っている。
その中心。
建物の前に立つ、黒いパーカーの男。
フードの奥から、
赤い光が、わずかに覗いた気がした。
「……あいつだ」
俺がそう呟いた瞬間だった。
――消えた。
「え?」
次の瞬間、男は警察官のすぐ横にいた。
「なっ――」
男の腕が伸び、
一人の警察官の首元を掴む。
「動くな!」
「武器を捨てろ!」
銃を構える警察官たちの声が重なる。
だが、
黒いパーカーの男は、一言も喋らない。
ただ、じっと周囲を見回している。
「離すんだ!」
一人の警察官が叫び、
銃口を男に向けた。
「さもないと――」
その瞬間。
男の口元が、わずかに歪んだ。
ニヤリ。
「……!」
次の刹那、
掴まれていた警察官の体が、光に包まれた。
「うわあああっ!」
「火――!」
一瞬だった。
叫び声が途中で途切れ、
その場に残ったのは、立ち尽くす人々の沈黙だけ。
誰も、言葉を発せなかった。
赤い瞳が、はっきりと輝く。
炎のような文様が、瞳孔の奥で開く。
(……目、だ)
あれが――
開眼。
神話なんかじゃない。
これは、現実だ。
膝が震える。
呼吸が、うまくできない。
周囲では、悲鳴と混乱が遅れて噴き出した。
「逃げろ!」
「撮ってる場合じゃない!」
「人が……!」
冬が、俺の袖を掴む。
「……瞳真」
その声が、今まで聞いたことのないくらい、震えていた。
俺は、答えられなかった。
ただ、
あの赤い目から、視線を逸らすことができなかった。
沈黙を破ったのは、乾いた音だった。
「撃て!」
誰かの号令と同時に、警察官たちが一斉に発砲する。
だが――
弾丸は、届かなかった。
放火犯の前に、炎が壁のように立ち上がる。
銃声は次々にかき消され、
その先にいた警察官たちは、瞬く間に姿を失っていった。
「……効いてない?」
「そんな、ありえない……!」
混乱する声。
後ずさる足音。
黒いパーカーの男は、ただ歩くだけだった。
一歩、また一歩。
そのたびに、炎が走る。
現実が、壊れていく。
「逃げろ! 早く――!」
叫び声が途中で途切れ、人々は我先にと散り散りになる。
そして――
男の視線が、こちらを向いた。
正確には、
スマホを掲げて立ち尽くしていた学生たちを。
「あ……」
誰かが、声にならない声を漏らす。
赤い瞳が、細く光った。
「危ない!」
叫んだのが誰だったか、覚えていない。
炎が放たれる――
その瞬間。
俺の体は、考えるより先に動いていた。
理由なんて、なかった。
理屈も、覚悟も。
ただ――
そうしなければならないと、体が知っていた。
走る。
手を伸ばす。
視界が、歪む。
――その瞬間、記憶が割り込んできた。
夕暮れの縁側。
少し酒の匂いがする父。
「なあ瞳真」
笑いながら、俺の頭をくしゃっと撫でる。
「神谷家ってさ」
父は空を見上げて、軽い調子で言った。
「どんなに辛くても、どんなに苦しくても、
体が勝手に動いちまうんだよなー」
「なにそれ」
「はは、変だろ?」
でも、その笑顔はどこか誇らしげで。
「だからさ。
守りたいもんがあったら、
迷わなくていいんだ」
その姿が、
ふっと、遠ざかる。
――そうだ。
父は、
一年前に失踪した。
理由も、行き先も分からないまま。
あの日から、
俺の中には、空白ができた。
(……父さん)
「――瞳真!」
名前を呼ばれ、
一気に現実へ引き戻される。
熱。 煙。
視界を覆う赤。
気づけば俺と冬は、
学生たちの前に立っていた。
背後には、崩れ落ちた瓦礫。
周囲は、炎に囲まれている。
「……冬?」
振り返ると、
冬は地面に倒れていた。
「おい、冬! 起きろ!」
返事はない。
意識を失っている。
――その時。
ぱち、ぱち、と
燃える音が近づいてきた。
視線を上げる。
炎の向こうから、
黒いパーカーの男が歩いてくる。
足取りは、ゆっくり。
ふらついているようにも見える。
だが、
フードの奥。
赤い眼光だけが、はっきりとこちらを捉えていた。
口元が、わずかに歪む。
ニヤリ。
(……来る)
逃げ場は、ない。
冬は、動かない。
後ろには、守るべき人たち。
俺の胸の奥で、
何かが――
確かに、目を覚まそうとしていた。
――来る。
そう“分かってしまった”瞬間、
俺の体は、勝手に横へ滑っていた。
爆ぜる炎が、
ほんの数センチ横を通り過ぎる。
「……!」
自分でも、驚いた。
避けた――
意識する前に、そうなっていた。
澄んだ青白い光を放つ俺の瞳が、
正面に立つ放火犯を捉える。
赤く燃える瞳と、
真正面から、視線がぶつかった。
(なぜ、避けれた?)
放火犯の表情が、わずかに歪む。
(あの瞬間、何かが起きた……
瞳孔が変化している)
(俺が見えない“何か”を、
あいつは見ている……?)
「……チッ」
舌打ち。
「一回避けれたくらいで、
調子に乗るなよ、ガキが!」
次の瞬間、
さらに大きな炎が放たれる。
だが――
俺の体は、また動いた。
避ける。
踏み込む。
距離をずらす。
「……っ」
頭の奥が、割れるように痛む。
(見える)
相手の目を見つめた瞬間、
情報が、否応なく流れ込んでくる。
(相手の…… 開眼中のデメリット)
「――っ!」
激痛。
眼球を、
素手で握りつぶされているかのような感覚。
視界が、白く滲む。
(……痛い)
(でも……分かる)
炎は、目から出ているわけじゃない。
能力の発動に、
視覚器官への直接的な負担はない。
代わりに――
(……体の内側)
(能力を使うたびに、
水分が、削られていく……)
喉の渇き。
呼吸の乱れ。
無意識に舌で唇を舐める仕草。
(脱水症状……)
理解した瞬間、
すべてが一本の線で繋がった。
(こいつは、水がなければ――)
(主となる攻撃を、
乱用できない)
(能力を使えば使うほど、
自分を追い詰める)
「……なるほどな」
かすれた声で、俺は呟く。
「いわば――
冷却装置、ってところか」
放火犯が、眉をひそめる。
「……何を、ぶつぶつと」
その隙だった。
俺は炎をかわしながら、
一気に距離を詰める。
「な――」
男の腰元。
ベルトに引っかけられた、
水の入ったボトル。
手が伸びる。
掴む。
そして――
引き剥がした。
「……っ!?」
放火犯の目が、見開かれる。
俺はボトルを握りしめ、
痛みに耐えながら、息を整えた。
(戦えない)
(でも―― 見える。)
それで、今は十分だった。
インサイト・アイ。
それは、神格者の中でも極めて異質な瞳。
直接的な攻撃能力を持たない代わりに、
相対する存在の本質を視ることができる。
相手の瞳と視線を交わした瞬間、
その神格者が――
どのような性質の能力を持ち、
どのような条件で開眼し、
そして、どのような代償を支払っているのか。
隠された情報が、
強制的に視界へと流れ込む。
彼の瞳は、真実を拒まない。
神に選ばれた者であろうと、
選ばれなかった者であろうと。
すべてを、等しく“見通す”。
それが、
未完成の神格者・神谷瞳真が最初に手にした力。
能力の正体を見抜かれたと悟った瞬間、
放火犯の表情が、明らかに変わった。
焦り。 怒り。
そして、恐怖。
「……っ!」
放火犯は、なりふり構わず炎を放つ。
さっきまでの計算された動きは消え、
ただ力を叩きつけるだけの攻撃へと変わっていく。
(――無駄だ)
炎は激しくなるほど、
彼自身を削っていく。
「あの水さえ……
あれさえ取り返せば……!」
放火犯の体から、
大量の汗が噴き出していた。
息は荒く、足取りは重い。
能力の連続使用によって、
体内の水分は限界まで失われている。
俺は、距離を保ったまま、静かに言った。
「……そろそろ、終わりにしよう」
放火犯の視線が、俺を睨みつける。
「お前は今まで、
たくさんの遺族を生んだ」
一歩、前に出る。
「嘆いて、苦しんで、
声が枯れるほど泣く人間をな」
炎の熱が、頬をかすめる。
「それに、民間人も、警察官も……
お前は一瞬で焼き払った」
俺の手には、
水の入ったペットボトル。
「そんなお前は」
視線を逸らさず、言い切る。
「脱水症状で、
枯れていくのがお似合いだ」
放火犯の口が、震えた。
「……違う……
俺は……神だ……」
俺は、首を横に振る。
「お前は、神なんかじゃない」
一瞬の静寂。
そして――
「お前こそが、力に溺れた凡人だ」
その言葉と同時に、
俺は片手で、ペットボトルを握りつぶした。
水が、地面に流れ落ちる。
「……やめろ……!」
放火犯が、必死に手を伸ばす。
「返してくれ……
まだ……俺は――」
言葉は、最後まで続かなかった。
自ら放った炎が、
制御を失い、彼を包み込む。
次の瞬間、
そこにあったのは――
静まり返った現場だけだった。
赤い光は、
もう、どこにも見えない。
放火犯が消え、
炎だけが、ゆっくりと静まっていく。
――その直後だった。
「……っ、ぐ……」
瞳真の視界が、急激に歪んだ。
眼球の奥を、
内側から針でかき回されているような激痛。
いや、違う。
それは針なんかじゃない。
圧だ。
瞳の内側に溜め込まれていた情報、感覚、真実。
それらが一斉に引き剥がされていく。
「ぐ……あ……っ……!」
鋭い痛みが、
脳へ直接流れ込んでくる。
澄んだ青白い光を放っていた瞳が、
徐々に色を失っていく。
空色は薄れ、
光は滲み、
やがて、いつもの黒へと戻っていった。
(……これが、反動……)
情報を一気に流し込み、
見続けた代償。
インサイト・アイは、
まだ“未完成”なのだと、
体が痛みで教えてくる。
膝が、がくりと落ちた。
「……っ、だめだ……」
視界が暗転しかけた、その時。
「……ん、あれ……?」
間の抜けた声が、背後から聞こえた。
倒れていた冬が、
頭を押さえながら起き上がってくる。
「いってぇ……。
なにこれ、転んだ?
……つーか、ここどこだよ」
「冬……!」
「お、瞳真。
なんだよその顔、真っ青じゃん。
保健室案件だぞ、これ。」
いつもと変わらない、
軽い調子の声。
それを聞いた瞬間、
張りつめていた胸の奥が、少しだけ緩んだ。
「……無事か」
「一応な。
なんか変な夢見てた気はするけど」
冬は周囲を見回し、
眉をひそめる。
「なあ、瞳真」
「ん?」
「さっきさ、一瞬だけ――
水色に光ってる目の人、いなかったか?」
心臓が、一拍跳ねた。
「すげー綺麗っていうか、
でもちょっと怖くてさ。
……気のせいか?」
俺は、できるだけ平然を装って肩をすくめる。
「気のせいだろ」
「えー?」
「夢でも見てたんじゃねえか?」
少し笑って、言った。
「神・格・者なんて、
いるわけ無いだろ」
冬は一瞬だけ考え込んでから、
鼻で笑った。
「だよな。
俺も漫画の読みすぎだわ」
その時だった。
――少し離れたビルの屋上。
暗闇の中で、
一人の影が、通信機に指を当てる。
「えー……こちらイルミナティ4や」
低く、軽い関西弁。
「新たな神格者の出現を確認」
視線の先には、
瓦礫の残る放火現場。
「開眼時の特徴は、
瞳孔の変化。
色は青白……いや、澄んだ空色やな」
少し間を置いて、続ける。
「能力は直接攻撃型やあらへん。
相手の性質を把握しとる可能性が高い」
通信機の向こうで、
誰かが息を呑む気配がした。
「それとな」
イルミナティ4は、口角を上げる。
「神格者同士が、
すでに交戦しとる」
「……以上や」
通信を切る。
彼は夜風を受けながら、
静かに笑った。
「――新しい時代が、始まりそうやな」
その瞳には、
期待と、愉悦が宿っていた。
「Eyes」第一眼 完。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
実際に書いてみて、執筆というのはなかなか難しいものだと身に染みて感じました。
自分の頭の中にあるイメージを言葉にする難しさに悩みましたが、
なんとか形にすることができて、今はホッとしています。
今後も皆さんに楽しんでいただけるような物語を書いていきたいと思っていますので、ぜひお楽しみに!
これからも琥西をよろしくお願いします。




