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四月末、白栖先生の休暇通知は突然だった。

『学生の皆さん、今学期はありがとうございました。

これから1か月ほど、この地を離れ、北の大地へ向かいます。

ご連絡はメール、もしくは手紙でお願いします。

——白栖

この通知は本当に簡潔で、どこか神秘的だった。

この通知が出されたのは、白栖先生のすべての授業が終わったあとだった。

直接聞く隙すら与えないところが、いかにも先生らしいと結真は思った。

そしてブログでは、学生たちのリプライが止まらなかった。

『龍は山に帰るのか?』

『先生の龍の姿、写真撮ってもいいですか?!』

『先生はどうやって山に帰る?雲?馬車?それとも飛ぶ?情報求む!』

ブログだけではなく、数人の学生がもっと馬鹿げたことを企んでいた。

黒木はざわつく友人たちの前で、叫びたい気持ちをぐっとこらえ、顔を真っ青にして、結真たちを見た。

自分と結真、そして他の友人を含めた六人で、『白栖先生尾行計画』をずっと前から立てていた。

そして先生が北の大地へ帰る姿を見たいという理由で、『第一回・白栖先生尾行』を実行することになった。

黒木は無理やり巻き込まれた、ただ一人の人間だった。

「お前たち!正気!?」

「もちろん!俺たちはただ、先生に角があるのかないのか確認したいだけ!」

「もし角が隠せるなら、尻尾も隠せるだろう!いや……龍の尻尾、見てみたいかも!」

黒木は興味がないわけじゃない。ただ、やらかしたら怖い。

こんな大きな声で計画を話していて、先生に知られないほうがおかしい。

……もしかして、先生はもう知ってる、とか?

黒木がそう思った矢先に、もう一人の学生が走ってきた。

「やっと聞けた!先生は明日、朝7時に図書館の裏門から出る!」

「よし!神原!カメラ頼む!今度こそ写真撮る!」

――もちろん、何も撮れなかったが。

一夜明け、白栖先生は確かに朝7時、図書館の裏門に現れた。

灰色のコートを着て、古いスーツケースを持ち、くしゃみをした。

帽子もしっかりかぶった。

「お!角を隠すか?!」

黒木も含め、結真たちは花壇の後ろに身を隠すつもりだったが、

この男の大きなつぶやきでバレてしまった。

「……だめだ、バレた!」

最初からバレバレだよ!と黒木がツッコんだ。

結真は一度息を吸って、吐いて、花壇の後ろから立ち上がった。

「白栖先生、おはようございます!」

「皆おはよう」

一瞬の静けさのあと、結真は聞いた。

「……先生は、北へ帰るんですか?」

結真は言葉を選んでいた。

一瞬、『家』や『洞窟』を使えそうになったが、龍は家があるんだろうか?



「そうですね。短期休暇、というものです」

白栖は結真の後ろに立っていた他の生徒を見て、いつものように優しく笑った。

「心配しないでください。逃げたりはしません」

「……『逃げない』ではなく、『飛べない』じゃない?」

「うん?」

「……なんでもないです」

空気はまた、静かになった。

白栖は生徒の質問を待つように、しばらく何も言わずにいた。

いつもと同じく穏やかな白栖を見て、学生たちは少し申し訳なく思った。

彼たちが知りたかったのは、先生自身が何度も「人ではない」と言っていたことではないか?

「先生!僕から最後の質問です!」

「……どうぞ」

「先生は、その、僕たちが思ってた……」

「……」

「龍?」やがて結真は、その禁忌の言葉を口にした。

この言葉のあとなぜが風が吹いた。

白栖は風の中に立ち、微かに微笑んで言った。

「結真くんはどう思う?」

「僕、ですか?」

「結真くんは信じるか?……学生は悩むのが仕事ですよ」

白栖はスーツケースを持ち上げ、ゆっくり言った。

「続きは帰ってから聞きますね」

白栖は歩き出した。

風に、彼のコートの裾が揺れた。

その形はまるで巨大な翼のようで、輝く龍の鱗のようにも見えた。

次の瞬間、風は止んだ。

結真が見たものは、幻だったのか。それとも真実だったのか。

結真にはわからなかった。

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