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結真はそのまま座って長い間に動かなかった。

「大丈夫か?」

隣の先輩が、心配そうに声をかけてきた。

「大丈夫です。ただ、わかったような、わからないような……」

先輩たちは苦笑して、「わかる」と言いながら結真の肩を叩いた。

先生が去っていった方を見つめ、

生き生きしていた龍もその「龍の心臓」も、先生が描いた光景が頭から離れなかった。

その感覚は、なんだろう……「感動した」というより、暗闇の中を彷徨って、やっと帰ってきたようだった。

結真はそのまま講堂を出た。

「……白栖先生があの『七件の脱核事例』ってリアルすぎない?」

「俺も思う。一件一件、どれくらいかかるのか、白栖先生がちょっと詳しすぎるよな……」

「それな。自分のことを話してたんじゃないか?」

結真の胸の奥が、どくんと鳴った。

結真はいつも宿舎に帰ってから日記を書くが、今日はその自分の決まりを破るつもりだった。

彼は図書室の一室を借りて、こっそりと『白栖観察日記』を書き始めたのだ。

――『白栖先生は龍が心をうっかり失くす』ことを説明する時にはまるでうっかり家に置いていたようにほんとに軽かった』

▪ 今日一番のよくわからないことは先生の「宿題」

なぜ直接教えてくれない?

先生はその過程がしているのか?核を失ったことがあるのか?

それとも、先生は今まさに「心」がない状態なのか?

そう書き留めると結真は背中に寒さを感じた。

宿舎へ帰った夜道は、いつも光石ひかりいしの灯りが道を照らしてくれる。

光石の一つ一つが明るく、いつも空に浮いていたから、結真と彼の友だちはその光景は『星空』と呼んでいた。

しかし、これは『星空』と呼べるようなきれいなものではなかった。

それは列島のすべての魔法学院が使っている魔法安定システムの一つだ。

元々気にしないものですが、結真はその夜、初めて空を見上げて、一つのぞっとすることに気づいた。

動くはずのない『星』が、動いた。ただ“動いた”だけではない──そう見た瞬間、結真は思った。

光石は魔法安定システムの一部で、すべてが繋がっているはずだった。だが今、その一番上の光石と他の光石との繋がりが途切れ、ゆっくりと回転していた。

「誰か実験している?」

「実験室の申請はないよ……」

その人は実験室の管理を任された学生の一人らしく、

結真に早く宿舎に帰るといいよと、恐れ恐れでそう言った。

「確か、昨夜、西塔の上空に走ったあの裂けるような閃光はニュースに載ってたな……」

早く宿舎に帰るとその先輩は早足てそこに去った。

「これはただの悪い天気、それでも……」

何か起きているのか、なぜそうなったのか結真もよくわからながった。

逃げるべき状況なのに、結真は動けなかった。

そのとき、結真は一つの影を見つけた……白栖先生だ。

長い髪が夕風にかすかに揺れ、白いコートが風にふわりと広がっていた。

その人は廊下の奥に立っていて、動きもせず、まるで絵の中の人のようだった。

「ほんとに幽霊みたいだな……」


結真が自分の失言に気づいたかどうかのうちに、白栖は静かに振り返り、彼を見た。

白栖は今、間違いなく、優しい先生だった。

彼の声は静かに廊下に響いた。

「こんばんは」

「……こんばんは。白栖先生」

「早くお休みになるといいですよ、神原くん」

「……はい。先生もおやすみなさい」

白栖は優しく笑って、軽くうなずき、結真のそばを通り、去っていった。

「あ、あの、先生!」

「なんでしょう?」

「僕のこと、『結真』って呼んでください!」

「そうですか。わかりました。では、結真くん。おやすみなさい」

「はい!」

彼は白栖が見つめていた先を追った。

そこには、途切れた『星』があった。

その『星』は、まだ止まることなく回転している。

「……なにか、やばいことが起きそう」


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