本当に緊張が解れるおまじない?
【……ところで、織部さんは緊張などなさってないですか? 人という字を飲み込まなくても大丈夫ですか?】
「どんだけ信用してるんですか、そのおまじない。生憎ですが、私はそういった眉唾物にはさほど関心がないので」
「……そ、そうですか」
そう尋ねるも、言葉の通り関心がないといった様子で答える織部さん。……うん、僕も言いながらそうタイプかなとは思ったけど。
ただ、それにしても……凄いな、織部さんは。僕なんて、こんなに緊張してるのに彼女は――
「……私も、緊張していますよ」
「……へっ?」
すると、僕の心中を読んだかのようにそう口にする織部さん。そして、そっと僕の手を取り……へっ?
「……なので、手を握っていて頂けませんか? 朝陽先輩の温もりを感じていれば、きっと緊張も解けてくれると思うので」
「……織部さん」
そう、柔らかな微笑で尋ねる織部さん。……正直、僕なんかにそんな素敵な能力が宿っているなんて到底思えない。それでも――
【……分かりました、織部さん。貴女の緊張が解けるまで、決してこの手は離しません】
「……ふふっ、ありがとうございます先輩」
そう伝えつつ、その華奢な手をそっと握る。すると、少し驚いた表情を浮かべた後、花のような笑顔で謝意を告げてくれる織部さん。……うん、こんな僕でも少しでも役に立てるのなら……まあ、僕の緊張はむしろ高まっちゃってるけども。




