……うわぁ、やっちゃった……
「……うわぁ、やっちゃった……」
自室にて、ベッドに転がり悶えるあたし。……いや、流石にあれはないでしょ。あの後、おそるおそる視線を横に移すと、ポカンと口を開いた彼の表情が……うん、めっちゃ恥ずかしい。
さて、何の話かと言うと……うん、もはや説明不要かとも思うけど、今日の発言――あたしの兄たる郁島氷里に対する、あの痛々しい発言に関してで。
……いや、言い訳させてもらうと、一応理由はあったんですよ。まさかあんなところで遭遇するなんて思わなかったけど、それでもこれはチャンスだと思――
――トゥルルルル。
「…………」
すると、ふと枕元に響く電子音。……うん、そろそろかなと思ったよ。正直、あんまり気は進まないけど……うん、もう覚悟を決めて――
『――どうも、さっき振られたばかりのインテリ美青年で~す』
「……うん、久しぶりだね氷兄」
『うん、さっき会ったよね? よもや、今の流れでこっちがツッコミ側になるとは思わなかったよ』
そう、少し戸惑ったような声音で尋ねる氷兄。……うん、自分でも何を言ってるのやら。どうやら、思った以上に焦っちゃってるみたいで。
『……それにしても、そうかなとは思ったけど……やっぱり言ってなかったんだね、朝陽くんに』
「うっ……まあ、その……うん」
図星を突かれ、言葉に詰まるあたし。言ってなかったとは、氷兄とあたしの関係――即ち、兄弟の関係にあること……あるいは、あたしがもはや氷兄――郁島会長に対し恋愛感情を抱いていない、ということのいずれかだろう。……まあ、もはやも何も当然ながら初めからないんだけども、そんな感情。
……ただ、いずれにせよ……うん、どっちも言ってなかったんだよね。そして、それが定かでなかったからこそ、氷兄はあたしに話し掛けてこなかったのだろう。呼び方はもちろん、話し方などでも朝陽に違和感を抱かせる可能性があったから。……うん、なんかごめんね?
『……まあでも、これで朝陽くんの誤解も解けたはずだよね』
「……あ、うん、まあそうなんだけど……実は、強力な恋敵が現れたり――」
その後、ついつい零れたあたしの愚痴(?)に楽しそうな口調で受け答えする氷兄。いや楽しそうにしないでよ。まあ、聞いてくれるだけ嬉しいんだけども。




