表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/287

スリルがお好み?

(……あの、朝陽あさひ先輩)

【……はい、仰りたいことはおおよそ察せられますが……如何なさいましたか、織部おりべさん】

(……まあ、恐らくはその予想で正しいかと思われますが……今、相当に怪しいですよ? 私達)

(……はい、ご尤も……)



 それから、ほどなくのこと。

 声を潜め、そんなやり取りを交わす僕ら。そんな僕らがいるのは、劇場シアターへと続く通路みち――その入口の、大きく開いた扉の裏側で。……うん、ほんと何してるんだろうね……ほんとにごめんね、織部さん。



【……それにしても、僕としたことが迂闊なことこの上ないですね。お二人が来るのは分かっていたのですから、せめて変装の一つや二つしておくべきだったと今更ながら深く猛省しております】

(……いや猛省する点がおかしいですよ。もうそれだけで相当怪しいですし、そもそも変装してない私と二人でいる時点であっさりバレるでしょう)


 なおも、声を潜め会話を交わす僕ら。……まあ、それはそうかも。尤も、織部さんと二人でいるから、その相手が僕などという発想に至る人はまずいないだろう。……だけど、あのお二人――とりわけ、斎宮さいみやさんに至っては些か事情が異なるわけで。


 それに……織部さんと関係なく、斎宮さんには変装がバレる可能性が大いにあって。と言うのも、彼女は既に二回もあさいーちゃんをご覧に……いや、なんで変装=あさいーちゃん確定なのかという話ではあるけども。



(……ところで、朝陽先輩。先ほどは、随分と大胆でしたね。卒然、私の手をさっと取り……ふふっ)

(……っ!! あっ、その……申し訳ありません)

(いえいえ、決して責めているわけではありません。どころか、とても嬉しかったくらいですし。なので――)

(……っ!?)


 ――刹那、呼吸が止まる。と言うのも……卒然、彼女がぎゅっと僕の腕を自身の腕と絡めたから。……いや、何が『なので』なのかは皆目分からないけど、ともあれ――


(あの、織部さ……)

(おや、朝陽先輩。今、それほどに抵抗なさって良いのですか?)

(……っ!! ……いえ)


 そう、何とも不敵な笑みで告げる織部さん。……確かに、今はまずい。と言うのも……まさしく今、かのお二人――斎宮さんと日坂ひさかくんが、視線のすぐ先で入口を通過しようとしているから。……いや、どう見ても大胆なのは貴女の方ですよね?



 ともあれ、先ほど以上に息を潜める僕ら。……いや、僕だけかな? だって、彼女――未だに腕を絡めたままの織部さんはと言うと、この窮地にありながらクスクスと笑ってるし。……うん、聞こえてないよね。


 ……ただ、それにしても……うん、なんでここまでするのだろう? もしかすると、彼女にとってはスリルしかないこの状況が楽しいのかもしれない。かもしれないけど……それでも、僕なんかが相手で抵抗とかないのかな? それに……心做しか、ほんのり頰が染ま――



(……っ!?)


 ――再度、呼吸が止まる。……今、見られた? ……でも、だとしたら不審に思いこちらへ見に来る……と、思うし。……大丈夫、なのかな?


 ともあれ、更に高鳴る鼓動が届かないよう切に祈りつつ更に息を潜める。……いや、こんな表現があるのかどうか定かでないけど……まあ、気持ち的に。そして――



「…………ふぅ」

「……ふふっ、楽しかったですね先輩」


 その後、お二人の姿が見えなくなったのを確認しホッと息を洩らす。すると、やはりと言うか楽しそうに微笑みそう口にする織部さん。……その、どうかご勘弁頂けたらと。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ