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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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矛盾

「――はっ!」

「……くっ」

「……ふふん、これで四勝三敗。再びあたしのリードだね」

【……流石ですね、斎宮さいみやさん。それにしても、さっきのは……】

「うん、もちろん新技だよ? いや〜あれは習得に随分と時間が掛かったよ――三年くらい」

「満を持しての解禁!?」



 翌日、放課後にて。

 空き教室にて、少し息を整えつつそんなやり取りを交わす僕ら。さて、いったい何をしていたのかと言……いや、言うまでもないかな。はい、例によって卓球です。



「さあ、新里にいざと。ちょっと休憩したらさっそく次の――」


 ――ガラガラガラ。


 すると、斎宮さんの言葉を遮る形で徐に扉が開く。そして――



「……ほんと、いっつも遊んでんなお前ら」


 そう、少し呆れたような表情で口にするマッシュヘアの美少年。そんな彼に対し、さっとペンを走らせ――


【――こんにちは、日坂ひさかくん。良ければ、日坂くんも一緒にどうですか?】

「……まあ、別に良いけど」


 少し駆け足で近づきそう尋ねると、少し顔を逸らしつつも承諾してくれる日坂くん。そして、彼を招き入れるつつ室内へやに戻ると、心做しか何処か複雑そうな表情の斎宮さんが。……えっと、どうしたのだろ――



「――ご機嫌よう、先輩方。突然の来訪、どうぞお許しください」


 すると、ふと背中に届く凛とした声。一日に二人の来訪という、恐らくは初めての事態に少し驚きつつ振り返ると、そこには――


「……えっと、ご機嫌よう……織部おりべさん」


 ひとまず、挨拶を返す。……さて、ここからどうしよう。いや、聞くべきことは決まってるんだけ――


「――それで、何の用かな? 織部さん」

「……あっ」


 すると、単刀直入にそう問い掛ける斎宮さん。まあ、僕も聞こうと思ったことなので助かったのだけど……うん、なんか鋭くない? 口調も視線も。


 だけど、そんな斎宮さんに全く怯む様子もなく――むしろ、何処か不敵に微笑む織部さん。そして、



「ええ、そのことなのですが――少々、お時間頂けますか? 朝陽あさひ先輩」





【……えっと、どうなさいましたか? 織部さん】



 それから、数分経て。

 空き教室から最も近い階段の踊り場へ移動した後、戸惑いつつそう尋ねてみる。きっと、他の人のいるところでは話しづらいことなのだろうけど……でも、僕なんかにいったい何の――


「――とっても仲が良さそうですよね、あのお二人。聞くところによると、以前はお付き合いなさっていたとか」

「……へっ? あ、はい……」


 そんな疑問の最中なか、思いも寄らない言葉に呆然と答える僕。あのお二人というのは、斎宮さんと日坂くんのことで間違いないだろう。むしろ、この文脈で違うのならいったい誰のことなんだという話だし。……まあ、どこで聞いたのかに関しては疑問でしかないけれど。


 ……ただ、それはそうと……いったい、どうして今あのお二人のことを――



「――そこで、私からの提案です。あのお二人――斎宮先輩と日坂先輩を、私達により復縁させるというのは如何でしょう?」





「……えっと、復縁……ですか?」

「はい。是非、私達がその後押しをしようと」


 予想だにしない織部さんの提案に、ポカンと口を開き確認を取る僕。……えっと、どうして突然そんなことを――


「――まあ、理由など何でも良いではありませんか。それよりも、朝陽先輩のお気持ちが重要かと。と言うのも――あのお二人が再び結ばれることを誰より願っているのは、他ならぬ貴方ではないでしょうか?」

「……っ!?」


 すると、心中こころに浮かんだ僕の疑問に答えるようにそう口にする織部さん。そんな彼女の意図はまるで分からない。実は、旧知の仲……ではないか。少なくとも、斎宮さんは間違いなく知らなそうだったし。


 …………だけど――



【……了承しました、織部さん。是非、微力ながら協力させて頂けたらと】






「…………ふぅ」


 その日の、宵の頃。

 リビングにて、世界史の勉強を一通り終え背凭れに身体を預ける。うーん、やっぱり複雑だなぁ。19世紀のフランス史は。


「……これで、良かったのかな」


 ふと、ポツリと呟く。何のお話かと言うと……もちろん、今日のあの件で。


 協力する、なんて言ったけど……そもそも、斎宮さんが好きなのは郁島いくしま先輩。とは言え、もう彼は卒業してしまったし諦めてしまった可能性もなくはないけど……それでも、僕が勝手に決めて良いことじゃないのは確かで。


 ……いや、でもそれ以前に……うん、矛盾も甚だしいよね。斎宮さんの想いを――郁島先輩への恋心おもいを応援するなんて言いながら、一方では斎宮さんに対する日坂くんの恋心おもいを応援するなんて言ってるんだから。……ほんと、改めて自分という人間に嫌気が差す。


 ……だけど……うん、これで良い。あの二人なら、いつかきっと幸せに――





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