なんだったのかな?
「――ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております!」
それから、数日経て。
休日の穏やかな昼下がり――琴乃葉月にて、朗らかに響く斎宮さんの声。厨房から表情は見えないけど、きっと声音に違わぬ晴れやかな笑顔を浮かべていることだろう。……うん、僕も頑張らなくちゃ!
ところで、頑張るといえば……うん、流石にそろそろ接客もしなきゃだよね。うん、分かってはいるつもりなんだけど……その、まあ、近いうちに。
「お疲れさま、朝陽くん、夏乃ちゃん。二人とも、キリの良いところで上がってね」
「「はい、お疲れさまです蒼奈さん」」
「ふふっ、いつも息ぴったりね」
それから、数時間経て。
窓の外が朱を帯びる頃、いつもながらの快活な笑顔でそう口にする蒼奈さん。偶然にも声が重なったけど、今はさして驚きもない。蒼奈さんの言うように、僕らにはわりとよくあることなので。
まあ、それはともあれ……さて、キリの良いところまで終わったし、そろそろ――
「…………ん?」
ふと、ポツリと声が。と言うのも……どうしてか、先ほどまでホールにいたはずの蒼奈さんが、僕のすぐ近くまで来ていたから。……えっと、いったいどうし――
……あっ、やっぱり残った方が良いとか? まあ、この後これといって用事があるわけでもないし、僕としては何の問題もな――
「……ふふっ、なんだか大変そうだね朝陽くん」
「…………へっ?」
すると、不意に顔をそっと近づけそんなことを囁く蒼奈さん。そして、何とも愉しそうな笑顔で再びお疲れさまと告げ去って行き……えっと、なんだったのかな?




