朝陽先輩?
「…………あの、新里。ご無沙汰って……それに、あの子……」
「……えっと、そのですね……」
忽然と現れた女子生徒の発言に、唖然とした表情で呟くように言葉を紡ぐ斎宮さん。……まあ、それは驚くよね。コミュ障かつ陰キャラぼっちの僕に、よもや他学年の知り合いがいたなんて知ったら。
まあ、それはともあれ……うん、なんと説明すべきだろ……いや、悩むことでもないか。普通に、そのまま事実を伝えれば良――
「……そうですね、部外者の方には少々お話ししづらい関係と申しますか……ねぇ、朝陽先輩?」
「一切同意しかねますが!?」
そう、頬に手を添えどうしてか面映ゆそうに微笑み話す織部さん。いや、普通にお話しできる関係ですよ。あと、部外者とか言うのは控えて頂けると……。
ともあれ、その後も何処かちぐはぐなやり取りを交わす織部さんと僕。そして――
「――それでは、本日はこれにてお暇することと致しましょう。ご機嫌よう、朝陽先輩――そして、斎宮夏乃さん?」
そう、恭しく告げる織部さん。ところで、斎宮さんに向けた彼女の笑顔が何処か不敵な……うん、気のせいだよね。ともあれ、何とも優雅な所作でゆっくりと教室を後にして――
……うん、なんでだろうね。今日は、すっごく暖かいはずなんだけど……なんで、こんなにも背筋が凍――
「――うん、なんだかすっご〜く仲が良さそうだったけど……ちゃ〜んと詳しく説明してくれるんだよね、朝陽先輩?」
…………うん、僕も帰って良いですか?
「……ふうん、中学時代の後輩、ねぇ」
「……は、はい……」
それから、数十分経て。
僕の話を聞き終えた後、何とも鋭い視線で以てそう口にする斎宮さん。……いや、実際のところそこまで話す内容もなかったんだけど……その、どう説明すべきかと考え倦ねてたら随分と時間が掛かっちゃって。
ともあれ……今しがた彼女が口にしたように、織部さんは中学時代の後輩……とは言っても、それほど多くの接点があったかといえばきっとそうでもないんだけど。
――最初に彼女を目にしたのは、三年生の秋の頃。
ある放課後、校庭の中庭――その隅にひっそりと在する木組みのベンチにて、何処か憂愁な表情を浮かべる彼女を見かけたわけで。
……正直、かなり迷った。僕なんかに話し掛けられたところで、きっと迷惑以外の何物でもな……と言うか、普通に気持ち悪いだけだろうし。
……そう、分かっている。分かっているんだけど……どうしてか、放っておくわけにはいかない気がして――
「――それで、可愛いからちょっとナンパしてみようかなと」
「いや違いますよ!?」
いや違いますよ!? だいたい、僕ごときにそんな度胸がおありだと!? そもそも、ご存知の通りロクに声すら発せな――
「……それで、新里。その……じゃあ、織部さんとは何もないんだよね?」
「……へっ? あ、はい」
「……うん、それなら良い」
すると、僕の返事に少し顔を逸らしそう口にする斎宮さん。……えっと、よく分からないけど……ひとまず、許してもらえたのかな?




