ご無沙汰です。
「――いやー、やっぱり疲れるねえ。入学式って」
【ははっ、そうですね斎宮さん】
「……でも、私達も去年、こうして高校生になったんだと思うと感慨もあったり」
【……そうですね。僕も、そう思います】
その日の、昼下がりのこと。
穏やかな陽光が射す空き教室にて、和やかな雰囲気でそんなやり取りを交わす僕ら。……うん、何だか懐かしいなぁ。
あの後――新入生のあいさつの後も、式は滞りなく進み閉会。その後、再びのホームルームを終え例のごとくこちらに移動してきたわけで……うん、いらないよねこの説明。
ともあれ、他愛もない話に花を咲かせたり将棋を指したりとまったりした時間を過ごす僕ら。改めて言うことでもないけど、斎宮さんとの時間はすごく楽しい。ほんと、こんな時間がずっと続――
「――ところで、新里。今日、新入生代表として挨拶してた子……すっごく、可愛かったね?」
「…………へっ?」
卒然、そんな言葉が届きポカンとする僕。いや、確かに可愛いけど……でも、どうして急に……いや、それよりも――
「――ほんと、すっごく可愛かったよねぇ~。だって新里、ずぅ~っと熱心にあの子のこと見てたもんねぇ~」
「……えっと、その……」
……うん、視線が痛い。それこそ、さっきまでの和やかな雰囲気が嘘のように。……いや、ちょっとだけ気付いてましたよ? なんか、遠くから馴染みのある視線を感じるなぁと。でも、じっと見てたのは容姿が理由ではなく――
「――すみません、失礼致します」
「「…………へっ?」」
ふと、声が重なる僕ら。突然届いた声の方――いつの間にか開いていた扉の方へ視線を向けると、そこには長い黒髪を纏う生徒――たった今、まさしく話題になっていた清麗な少女の姿が。卒然の思い掛けない展開に唖然とする僕らを他所に、彼女は再び口を開いて――
「――突然のご無礼、どうぞお許しください。先ほど壇上にて申し上げましたが、今一度――この度、当校に入学しました織部海紗凪と申します。是非、以後お見知りおきを。そして――ご無沙汰です、朝陽先輩?」




