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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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それはなりません?

【……それにしても、本当に良いのでしょうか。女性でない僕が巫女さんを務めるなど、果たして神様がお許しになるかどうか……】

「まあ、それは大丈夫でしょ。だって、困ってる人を助けてくれるのが神様でしょ? だったら、今まさに困ってる人を助けてくれる新里にいざとを許さないわけないし」



 それから、数十分後。

 不安と緊張で震え上がりそうな僕に、なんともからっとした笑顔で答える斎宮さいみやさん。そんな僕らがいるのは、天船あまふねさんの家の大きな居間の中――まさしく、これぞ和といった具合の大変趣のある空間で……まあ、今はそれどころでなく。


 ところで、斎宮さんの勤務再開時間である14時はとうに回っているのだけど、事情が事情なので授与所は一時閉業――具体的には、巫女さんとしてのお作法を一通り僕に教え込むための時間を確保するためだ。……まあ、正直それ以前の問題だとは思うのだけども。



 ……そもそも、よく天船さんから許可が出たものだと未だに思う。



『――えっ、代わりに新里くんが出てくれるの? ありがとう、すっごく助かるわ! それに、貴方ならすっごく似合うと思うし!』



 ……うん、しかも結構ノリノリだったし。まあ、状況が状況だし猫の手も借りたい心境なのだろう。


 ともあれ、やると決まったからには全力でお役に立たねば。推薦してくれた斎宮さんのお顔を汚すわけにもいかないし。……まあ、元より僕の希望ではないんだけども。


 ……ところで、それはそれとして。


「……あのさ、新里。我慢しなくていいから、今からでも行ってきたら?」


 そう、気遣わしげに声を掛けてくれる斎宮さん。どこかそわそわしている僕の様子を気に掛けてくれているのだろう。もちろん、そのお気持ちは大変ありがたいのだけど――



【……いえ、それはなりません。巫女さんはお手洗いに行かないのです】

「アイドルかよ」




【……ところで、随分と今更ではあるのですが……本当に、バレないでしょうか?】

「大丈夫大丈夫。それに、万が一バレそうになってもあたしがフォローするし、何よりすっごく可愛いから自信持って、あさいーちゃん!」

【……どうしてでしょう。励まして頂いているのに、どうにも複雑な心境なのですが……】


 授与所へいざ出陣という間近、もう幾度目かの不安を洩らすと、やはり快活な笑顔で答えてくれる斎宮さん。もちろん彼女を疑いたいわけなどないのだけど、それでも不安は消えてくれないし……それに、全くバレないならそれはそれで少し複雑な気もしてきたりして。


 あっ、ちなみにお手洗いには行ってきました。まあ、アイドルだって本当はお手洗いくらい行くだろうし仕方ないよね! ……うん、ごめんなさい。



 さて、さっそくですが顚末を申しますと――大変忙しくはありましたが、とりわけ疑われる気配もなく無事任務を果たせました。……うん、やっぱりちょっと複雑。





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