神聖なお役目?
「――いやー、ほんと大変だったよ。昨日はそれほどでもなかったんだけど、今日は朝からほんと忙しくって。あっ、でも嫌ってわけじゃないけどね。琴乃葉月で働いてる時もそうだけど、お客さんに喜んでもらえるのは凄く嬉しいし」
【本当にお疲れさまです、斎宮さん。そうですね、お客さんに喜んで頂けるのは僕も大変嬉しいです】
それから、数十分経て。
ゆるりと腰掛け一息ついた後、疲れを見せながらも嬉しそうに話す斎宮さん。本当にお疲れさまです。
ところで、僕らが今いるのは縁側――この神社の主人たる天船さんのご自宅に設置されている、何とも風情ある桧木材の縁側です。
天船さん一家とは、以前から家同士、懇意の間柄であったそうな。そして、高校生になったことと人手が不足しているのを理由に、この度天船さんからアルバイトの依頼を受けた――これが、斎宮さんが巫女さんとして授与所に務めていた経緯とのことです。
……と言うことは、彼女も以前から時折こちらに参拝していたのだろうか。残念ながら、一度も会うことはなかっ……いや、単に気が付かなかっただけの可能性も捨て切れはしないけれど。ともあれ、新年早々彼女の新たな一面を見られたことは本当に喜ばしく――
「――ところでさ、新里。どう?」
すると、不意に立ち上がりそう問い掛ける斎宮さん。両手を後ろに回し、何処か悪戯っぽい微笑を浮かべながら。
どう――随分と漠然とした問いではあったが、流石にその意図は伝わった。なので――
【――はい、大変素敵でお美しく、思わず見蕩れてしまいます】
「…………へっ?」
すると、ポカンと口を開き呆然といった様子の斎宮さん。あれ、ご自身で尋ねたのにこの反応はどうしたことか。
「……えっ、あの、ほんとに? ほんとに、そんなに良いと思ってる?」
そして、何処か反応を窺うように再び問い掛ける斎宮さん。心做しか、雪のように白いその頰が朱に染まっているようにも見える。
……ひょっとして、僕の言葉がお世辞の類だと思われているのかな? だとしたら、僕としても甚だ不本意であるからして――
【もちろんです、斎宮さん。神聖な装束に身を纏い、人々の祈りを神様に届ける斎宮さんのお姿は何とも形容しがたいほどに尊く――】
「かつてないほどの絶賛だったよ!! というか巫女さん好き過ぎない!?」
【いやー、こうして新年早々、斎宮さんの新たな一面をお目にかかることができ大変喜ばしく――】
「こっちの台詞なんだけど!?」
すると、目を見開きつついつもながらの鋭いツッコミを入れる斎宮さん。うん、やっぱり彼女はこうでなくっちゃ。
「……ま、まあでも? もし、新里がこういう格好が好きだって言うなら……その、たまになら、してあげないこともないけど……」
そんないつもながらのやり取りに心地好さを覚えていると、ふと少し目を逸らしつつそう口にする斎宮さん。こちらがお願いすれば、今後も巫女さんの格好をしてくれるかもしれない、ということだろうか。そんな有り難い申し出に、僕はさっとペンを走らせ答える。
【――ありがとうございます、斎宮さん。ですが、先ほども申し上げたように、巫女さんとは人々の祈りを神様に届ける神聖な存在であり、そのお役目を一心に務めるその尊いお姿に強く心惹かれるわけなのです。であるからして、別段そういったコスプレに関心があるわけではなく――】
「意外と面倒くせえなぁ!!」




