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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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卒然の来訪者

「――なあ勇人はやと。お前何点だった?」

「72。正直、あんま自信なかったけど思ったよりは出来たわ。でも、あの計算ミスがなけりゃなぁ」

「ねえねえ、あたしにも聞いてよ勇人」

「あたしにもって、そもそも俺はまだ誰にも聞いてねえけど……まあいいや。お前はどうだった? 彩華さやか

「……え〜、どうしよっかなあ。言っちゃおうかな〜でもなあ〜」

「なあ春樹はるき。お前はどう――」

「ああごめんごめんちゃんと言うから! えっとね……78点!」

「……へぇ、凄えじゃん。頑張ったんだな」

「……へへ、まあね。ところで、夏乃かのはどう――」



 暑さもぐっと収まり、些か肌寒くもなってきた10月下旬の放課後にて。

 先週実施された中間試験の話で盛り上がるトップカーストのクラスメイト達。こういった光景にも、今や何だかほのぼのする自分がいたり。


 ……そう言えば、もう1ヶ月くらいなんだね。思い掛けず……本当に思い掛けず、琴乃葉月に彼女が現れて以来、もう一ヶ月くらい経過して――



「――ここに、新里にいざとって奴はいるか?」


「…………へっ?」



 追憶に浸っていた最中さなか、これまた思い掛けない呼び掛けにハッと現実へと引き戻される。……えっと、僕なんかに用事なんて、いったいどちら様だろう――そんな疑問を抱えつつ、声が届いた右の方へと顔を向ける。すると、開いた扉のところにいたのは……鮮やかな檜皮色のマッシュヘア、そして深い蒼の瞳を宿す、たいそう人目を惹く美少年だった。



 卒然の美少年の登場に、俄かに教室しつ内が騒めきに包まれる。そして、控えめながら黄色い声があちらこちらから耳に届いて……うん、願わくば僕も傍観そちらの立場でありたいです。


 ……ただ、残念ながらそうもいかないようで。何故なら、先ほど明確に告げていたように、かの美少年の用事は僕にあるみたいなので。


 ……だけど、ほんとに何だろう? 実は、顔見知り……でもないよね。さっきの彼の言葉からも、知人そうでないことは明白なわけだし。


 ともあれ、このまま突っ立っているのは大変よろしくない。何とも珍しいことに、この僕が目下数多の生徒から注目の的となっているし、それに……それなりの距離があるにも関わらず、かの美少年の瞳にはありありと敵意が見て取れるから。……僕、なにかしたかな?




 さて、マッシュヘアの美少年に連れられ到着した先は――なんと、聖香高校七不思議にも数えられる例の階段だった。そう言えば、あの張り込み以来一度も訪れてなかったけど……よもや、こういった形で再び足を踏み入れることになろうとは。何だか、ちょっと感慨ぶか……うん、言ってる場合じゃなかったね。……ところで、七不思議って誰が言ってたんだっけ?


「――こんなとこまで来てもらって悪かったな。俺は一年F組、日坂ひさか巧霧たくむだ。お前は、新里朝陽(あさひ)――でいいんだよな?」

「……へっ、あ、はい……」


 すると、不意にこちらに身体ごと振り返り自己紹介をしてくれる美少年。そっか、日坂くんというんだ。


 ……でも、結局どんな用事なんだろう? そもそも、今更ながら僕なんかを……それも、フルネームで知ってくれていたのが驚きなくらいで――



「それで、単刀直入に聞くが――お前は、夏乃の何なんだ?」





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