答え
「――うん、そうだね。そもそも、なんで新里が蒼奈さんの好みを知りたいのか――まずは、そこを詳し〜く聞かせてほしいな?」
「……へっ? あ、いえその……」
翌日、放課後の空き教室にて。
例の件について尋ねる僕に、満面に笑みを湛え尋ね返す斎宮さん。なのに……心做しか、瞳の奥が全く笑っていない気がする。どころか、どこか冷え冷えとした雰囲気さえ纏って……あれ、何だか前にも似たようなこと……うん、気のせいかな?
【……あの、斎宮さん。その、つかぬことをお伺いするのですが……その、蒼奈さんの男性の好みをご存知だったりします?】
これが、今しがた彼女に示した文面なのだけど……どこか、まずいところでもあったかな?
「……なるほど、そういう事情か」
【……はい。それで、斎宮さんなら何かご存知かと思いまして】
ともあれ、求めに応じ理由――お客さんから、蒼奈さんの男性の好みを聞いてほしいとのご依頼があった旨を説明すると、軽く首を縦に振り納得を示す斎宮さん。幸いなことに、先ほどまでの冷え切った雰囲気は既になくなっていた。ただ、幸いではあるのだけど……どして?
「……でも、ごめんなんだけど、あたしも分からないかな。あたしも、蒼奈さんとはよく話すけど……そう言えば、蒼奈さんのそういう話は聞いたことなかったから」
【……なるほど。いえ、答えてくださりありがとうございます、斎宮さん】
そう、申し訳なさそうに話す斎宮さん。でも、言わずもがな彼女が謝る必要は何もない。そもそも、僕が承諾したご依頼だし。
……さて、となるとどうしようか。やっぱり、難度は高いものの蒼奈さんに直接尋ねるしか――
「……ところでさ、その、別に深い意味とかないんだけど、その……新里の好みの女の子って、どんな感じなのかな……なんて」
「……へ?」
今後の方針について思考を巡らせている最中、ふと掛けられた斎宮さんからの問い。……うん、何とも思い掛けない質問だ。果たして、どう答えるのが適切か――
……まあ、何も考えずただ本音を告げるだけなら答えは決まっている。決まっているの……だけども――
【……そう、ですね。味気のない返答で申し訳ないのですが……そのようなことは、今まであまり考えたことがなくて……】
「……そっか。うん、それなら仕方ないね」
そう伝えると、仄かな微小を浮かべ答える斎宮さん。その表情の意味するところは定かでない。ただ、いずれにせよ……まあ、言えるはずないよね。




